四章 正解と再会
『このダンジョンのクリア条件は隠されたマジックアイテムの回収です!制限時間は120分、その時間を過ぎたら入り口へ強制転移させられます』
バルトは最初にフランから受けた説明を思い返していた。
わざとトラップを教えず、4人バラバラにしたのは個々のスキルアップを目的としてだろう。……けれどそれだけが目的なら最初から隠さずに目的を伝えても問題ないはずだ。
本当の目的は違うところにあるな。しかも自分達で気付かなければならない何か……
「うーん、さっぱりわからん……」
バルトは魔獣の動きを気にしつつ、床に座り込んだ。恐らく制限時間も半分は過ぎた。
このままじゃタイムアップになるし、多少無理をしてでも……
ん?無理をしてでも?
バルトは違和感を感じた
ミルコさんが本当に無理をさせるようなダンジョンに俺達を入れるだろうか?
「……そう言うことか」
バルトは土魔法で土人形の分身を作り、適当にダンジョンを走らせるようにして送り出した。これで魔獣は人形の方を追いかけて行くだろう。
バルトはダンジョンの床に寝転び、制限時間まで使えそうな魔法の組み合わせを考える事にした。
制限時間を迎え、4人は入り口に強制的に戻された。
「お疲れー。バラバラになると、やっぱり厳しいね。とりあえず集められそうな素材だけ集めてきたよ」
「思ってたよりトラップが多くて動きにくかったわ。魔法石取れるだけは取ってきたけど」
クリスとリリィはミルコさんに頼まれた素材をそれなりに集めてきている。
「俺は悪いが、今後実戦で使えそうな魔法の組み合わせを練習させてもらったよ」
「良いんじゃない?それがミルコさんの目的なんだし。それより……ハンナ大丈夫?」
クリスは服に少し着いた汚れを落としながら、ハンナをクスクス笑った。
ハンナは泥だらけで、服も所々破れ今にも泣きそうな顔をして3人を睨んでいる。
「ど、どういうことですの!?皆さん何故そんなに綺麗なままなんです!?」
「それは無理をしないで制限時間まで、上手く立ち回っていたからよ?もしかしてハンナはダンジョンクリアをしようとしたの?」
リリィが不思議そうな顔でハンナを見つめた。
「だって、だって皆さんの事が心配で、無理をしてでも探しながらクリアしないといけないって思って……うわぁぁぁん!」
ハンナは我慢の限界だったのか、子供のように泣き始めた。
「それがミルコさんの狙いだよ。戦いの中で無理をするより、上手く立ち回ってチャンスを待つ事を覚えて欲しかったんだ。
俺達はパーティーで闘えば強いが、今みたいに個々になるとパーティーに執着して実力以下の闘い方をしてしまう可能性が高い。
そういう時に、焦らず自分達の力を発揮できるタイミングまで、乗り切る力をつけさせたかったんだと思う」
「確かに……私かなり無理をして、失敗ばかりでしたわ」
ハンナは鼻を啜りながら、下を向いて落ち込んだ。
「でも、ハンナが俺達をすごく心配したのは伝わってきたよ。俺は人を一番に想える人は好きだし、尊敬する。だから、ハンナの行動も俺は別の正解だと思うよ」
「バ、バ、バルトさん!?今なんて!?」
ハンナは一瞬で元気になり、バルトに詰め寄ってくる。
「お、落ち着けって!別の正解って言ったんだよ!あんまり近付くな!」
「その前!その前を聞きたいんです!」
「と、とにかく離れてくれ!」
服が色々破けて個人的には嬉しいのだが、クリスとリリィの悪魔のような冷たい視線に、バルトは負けた。
それからバルト達は指定された隠れダンジョンをいくつかこなし、様々な状況に少しずつ対応出来るようになっていった。
しかし5つ目の隠れダンジョンで、運が悪いことに最悪なやつに絡まれてしまう。
「ミルコさんのお陰で、だいぶ俺達も冒険者らしくなってきたな。ようやく初心者マークがとれた気分だよ」
バルト達はいつものように隠れダンジョンの中を進んでいた。
「経験は一番早い練習方法だからね。効率が良くて僕は好きだな」
クリスがキャスに的確な指示を出して魔獣を倒しながら答える。
「私の魔法は実戦でこそ輝きますから、楽しいですわ!」
ハンナも防御魔法を前より的確に張れるようになり、かなりのレベルアップがうかがえる。
ミルコの依頼のお陰で、バルト達は少しずつだが成長することが出来ていた。
「お話し中悪いのだけど、すぐ先に別のパーティーがいるわよ。しかもこっちに向かってきてるわ」
リリィがバルト達の会話を遮って報告する。
隠れダンジョンなのにどういう事だ?
バルトはあり得ない事態に警戒をした。
「なんで人がいるんだよ!隠れダンジョンじゃなかったのか?」
「迷っただけのゴミ冒険者でしょ?最悪殺してしまえばいいよ」
ダンジョンの奥から聞き覚えのある声がしてきた事に、バルトは驚く。
「まぁ、俺のスキルなら余裕でぶち殺……あれ?この前のクズじゃん!お前こんなところで何してんの?」
ダンジョンの奥から現れたのは、バルトが世界一関わりたくない人物である勇者パーティーだった。




