四章 隠れダンジョン
「どの料理を食べても旨いよ!フランちゃんは料理の才能があるんだね」
バルトはフランの作った料理を食べて感心した。
「本当に美味しいですわ!フランちゃんは良いお嫁さんになりますわね」
「ちょっと!ハンナ、それは地雷を……」
「ハンナさんって冗談がお好きなんですね!お嫁さんになるんじゃなくて、私はバルトさんと婚約してますからもうすでにお嫁さんですよ?
ハンナさんの冗談は、不快でつまらないですからやめられた方が良いと思います」
クリスがハンナを止めたときには、すでに遅かった。
「と、とりあえず今日は疲れたろうし、ここに泊まっていくと良いよ」
ミルコがこれ以上被害者を出さないよう、話題を変える。
「本当に申し訳ないですが、今の状況だと動きようがないのでお言葉に甘えさせて頂きます。それに気持ちですが、宿泊費は払わせてください」
「それは受け取れない……って言っても君の事だから、納得しないだろうね。なら私からお願いがあるんだけど、聞いてくれないかな?」
「俺達に出来る事なら、何でもやりますから是非聞かせてください」
ミルコのお願いに、バルトは二つ返事で答えた。
「バルト君達は明日から当分冒険者としての仕事はできないだろ?だったら私の店でしばらく働いてくれないかな?
ご飯、寝床、風呂付きで、報酬は歩合制だ」
「報酬は受け取れない……って言ってもミルコさんの事だから納得しないですよね?是非やらせてください」
バルトはミルコに感謝して頭を下げる。
「明日からバルトさん達のお弁当作りますね!」
フランが嬉しそうに、腕を回しながら気合いをいれていた。
「とりあえず料理が、冷めないうちに食べてしまおう!まだまだあるから、思う存分食べてくれ」
バルト達はミルコの好意に感謝し、楽しい夕食の時間を過ごした。
あらかた食べ終え、バルト達がデザートを食べていると、ミルコが一枚の地図を持ってきた。
「朝は時間がないから、早速で悪いが仕事の話をしても大丈夫かな?」
ミルコは地図を広げながら説明を始めた。
「この地図は所謂隠れダンジョンの印が付けてある地図なんだ。隠れダンジョンって聞いたことあるかな?」
「名前は聞いたことありますが、実際に見たことはないですね。そんなに簡単に見つかるものじゃなかった気がするんですが……」
バルトは地図を見ながら答える。
「本来は数年に一度見つかるか、見つからないかだからね。だけど見つかってないだけで、実際はそこそこあるんだよ。
実はフランが感知魔法が得意で、近くの隠れダンジョンは全て把握しているんだ」
「あら、それって上級の感知を通り越してないかしら?」
リリィが驚いた顔でフランを見る。
「神級らしいですね。学校の卒業試験の時に認められました!」
「卒業?フランちゃん今何歳なの?」
「8歳です!6歳で卒業して、今はお店の経営をしてます。お父さんはだらしないから、経営には向いてないので!」
「フ、フランちゃんって本当に何者なんですの……」
リリィの質問にフランは当たり前の事のように答えたが、ハンナ達の顔はひきつっていた。
「そして隠れダンジョンに✕印を付けたのが、この地図なんだ。君達には隠れダンジョンで武器加工に使う材料を取ってきて欲しい」
「隠れダンジョンは荒らされてないので魔法石や、なかなか取れない魔獣の素材が沢山取れるんです!原価率が下げられて助かるんですよ!」
「それに隠れダンジョンだから、人と会うこともない。今の君たちはぴったりの任務じゃないかな?」
フランとミルコはいきなりテンポ良く交互に話すと、ミルコが一つの✕印を指を差す。
「「ここに行って素材を探して欲しい、欲しいです!」」
2人はハモりながらバルトに笑顔でお願いした。
怪しい……怪しすぎる。
ここは冷静にミルコさんの意思を探っておきたい。
バルトはいくつか質問をしようとした。
「この隠れダンジョンって……」
「いいよ!隠れダンジョンなんて滅多に入れる場所じゃないからね」
「私も賛成ですわ!個人的に探している素材がありますし」
「私も賛成よ、面白そう」
バルトが質問をする前に3人が依頼を引き受けてしまった。この感じからすると絶対に裏があるのに、こいつらは……
まぁ、ミルコさん達にはこれからお世話になるし、細かい事は気にしないでおくか……
バルトはデザートを食べ終え、楽しそうに話すフランを見てあくびをした。
「やっぱり、全然良くねぇぇぇぇぇ!」
バルトは全力で狼型の魔獣から逃げていた。
隠れダンジョンに入るなり、バルト達はトラップにかかり4人バラバラになってしまったのだ。
「ミルコさん達絶対に分かってたな!なんでこんなめんどくさいダンジョン勧めてきたんだよ!」
バルトは叫びながら何とか魔法を駆使して、魔獣を足止めさせ物陰に隠れる。
魔獣は中級ダンジョンレベルの魔獣で、まともに闘ってはバルト1人では倒しきれるレベルではなかった。
何か考えないと……
バルトは焦る気持ちをおさえ、冷静に思考しようとする。何故こんなダンジョンをミルコさん達は勧めてきたんだ?
彼らは、俺達が本当に困るような事をする人ではない。
だとしたら何か狙いがあるはずだ……それが分かればこの状況を打開出来る気がする……バルトは深く深呼吸をして、状況整理から始めた。
「ただいまー!送ってきましたけど……バルトさん達は本当に大丈夫でしょうか?」
バルト達を樽に隠してダンジョンまで送り、帰って来たフランが心配そうにミルコに聞いた。
「お帰り。バルト君達なら大丈夫だよ。彼なら私の狙いにもすぐに気づくだろうし。気付けばそんなに難しいダンジョンじゃないからね」
ミルコは魔法石を溶かして金属と混ぜた塊を、ハンマーで叩き伸ばしながら答える。
「ですよね、私の旦那様ですもん!美味しいお夕飯を作って待っててあげなくちゃ!」
フランは軽く自分の頬を両手で叩くと、キッチンに向かった。
「バルト君、フランの旦那様ならこれくらい楽勝でクリアしてくれよ」
ミルコは笑いながら塊を強く叩いた。




