四章 壊力
フランは荷車に樽を4つ積んで戻ってきた。
「お待たせしました!皆さん、樽の中に隠れてください!私がお家まで運びます!」
「いやいや!流石に無理でしょ!?」
フランの提案に思わずバルトがツッコミをいれる。
「大丈夫です!4人ならいつも運んでる魔法石より軽いですから!」
「魔法石!?フランちゃんはいつもその樽に魔法石詰めて4つも運んでるの?」
クリスが驚き、樽に近づく。
「これ空の樽でも10キロはあるよ……それに荷車だってそれなりに重いし……」
「あまり重さは気にしたことはなかったです!父が武器を作るのに使うので、毎週の事ですから!」
「あっ!フランちゃんは効果魔法を使えるんですね?それなら納得ですわ」
「え?使えませんよ?私が使えるのは、基本的に感知系の魔法です。そのお陰で魔法石も見つけるのが楽で助かってます」
「はは……まじか……」
バルト達はフランの能力に驚いた。怪力を通り越してもはや、壊力である。
「そういう事なので安心して任せてください!お夕飯も是非ご馳走したいので、早く行きましょう」
フランはバルトの背中を押し、樽の中へ誘導する。
「本当に無理だけはしないでね?」
「いつもの半分以下の重さだから、全然平気です!」
バルト達は樽の中に入り、フランはバルト達を運び出した。
「確かに目立ちませんが、本当に大丈夫でしょうか?」
ハンナは樽の中からバルトに小声で聞いてきた。
「どうだろうな……荷物の検査があってもおかしくはないから油断は出来ないと思う」
バルトは外の状況に耳を澄ませると、フランが鼻歌まじりで、どんどん街中を進んでいくのが分かった。
今のところ大丈……
「あれ?ミルコさん家の嬢ちゃんじゃないか?」
「ノアさん!こんにちわ!」
「はい、こんにちわ!今日も魔法石集めかい?本当に働き者で感心だね」
「ありがとうございます!ノアさんはお仕事ですか?」
「あぁ、例の指名手配の巡回だよ。まったく、とんでもないやつらがいるもんだ」
ヤバい!内容から判断するに、このノアって男は騎士団だ。
フランとは知り合いらしく、今のところは大丈夫そうだけど……
「それはお仕事ご苦労様です!ではこれで私は失礼しますね」
「おっと、その前に一応樽の中身を見せてくれないか?フランちゃんを疑うわけじゃないけど、今は隠れられそうなものを見つけたら必ず確認する決まりなんだ」
「それは大変ですね。でもお断りします!先程言い忘れましたが、今日の魔法石は日光に当たると使い物にならなくなる種類なんです」
「それは困ったな。確認しないと俺も困るし……」
「そうですねぇ……」
フランは少し考えて、ぽんっと手を叩いた。
「ではこうしましょう!」
そういうとフランはバルト以外の樽を3つ地面に下ろした。
「今からこの樽を上に投げて地面に落とします!もし、人なんか入ってたら声が出ちゃうでしょ?」
「おっ!それは名案だね!早速頼むよ」
「はい!ではいきますね!……………………身体強化魔法かけてください……」
フランがハンナ達にしか聞こえない声で忠告する。
次の瞬間3つの樽が5m程上がって、一斉に鈍い音を立てて地面に落ちた。
「凄い音だねー!人が入ってたら怪我じゃ済まないよ。協力ありがとうね」
「どういたしまして!では失礼しますね!」
「おう!気を付けて帰るんだよ」
フランはノアにお辞儀をすると、落ちた樽を荷車に戻し、再び進み始めた。
バルトは何度か小声でハンナ達に話しかけたが反応がなかった。
「御愁傷様です……」
バルトは樽の中でハンナ達に手を合わせた。
そこからは何も問題はなく、フランの自宅に無事つくことが出来た。
「バルトさん、大丈夫でしたか?もう出ても大丈夫ですよ」
樽を家の中に移動させると、フランは急いでバルトが入ってる樽を開けて引き上げた。
「大丈夫、大丈夫。フランちゃんのお陰で無事着いて助かったよ」
バルトは軽く伸びをすると、フランの頭を撫でてあげた。フランは嬉しそうにニコニコしている。
「お楽しみ中悪いんだけど、僕たちもそろそろ出してもらっていいかな?」
樽の中から今にも死にそうな声でクリスが呼び掛けた。
「あ!すみません!今開けますね」
そういうとフランはその場で、指で樽を軽く弾く仕草をした。
すると蓋が順番に飛び上がり、中からかなり疲れた顔で3人がてでくる。
「フランちゃん?なんで樽を3個も投げる必要があったのかな?」
笑顔だが、額に血管を浮きだたせながらクリスが聞いてきた。
「それは1つだけだと怪しまれるからです。逆に1つ位なら残しても怪しまれませんから」
フランは笑顔で答える。
「そ、それを言われると……」
クリスは反論出来ず、項垂れた。
「父さんは納品に行ってるので、少し待っててください。今お茶を入れますから!」
そういうとフランはキッチンに向かっていった。
「フランちゃんは本当に良い子だなぁ……」
バルトは感心しながら、フランがお茶を入れるのを見ていた。
「確かに良い子ですが、本当にバルトさんの奥さんになりそうな勢いを感じます……」
ハンナがフランを怯える表情で見つめている。
「バルト君のお嫁さん候補なら現状ダントツ1位だね……」
「とにかく怖いわ……」
クリスとリリィまでそんな事を言い始めた。
「子供相手に何言ってるんだ?小さい頃によくある、親戚のお兄ちゃんに憧れてるみたいなもんだろ」
バルトは笑いながらハンナ達へないないと手を振った。
3人はバルトをバカを見るような目で見つめ、深くため息をついた。
「え……何そのバカ世界代表を見てるような反応……」
「お待たせしましたー!……何かありました?」
フランがお茶を入れて戻って来ると、微妙な空気に気付いてバルト達の顔見た。
「バルトがたまにバカになるって話をしてただけだから、フランちゃんは気にしないで」
「あぁ……そういうことなら納得です!」
リリィの答えに、フランはすっきりした顔でお茶を入れ始めると、玄関のドアが開く音がした。
「ただいまー!おっ、バルト君じゃないか!迎えに行く手間が省けて良かったよ」
バルトは納得出来なかったが、ミルコへの挨拶を優先することにした。




