Vanillaートラウマボーイ
「ねぇ、車貸してくんない?俺さぁ、困ってしまってワンワンワンな訳よ」
「はっ!?」
ナツは運転手が言い終わらないうちに運転席のドアを開け、中から運転手を引きずり降ろし、自分が運転席に乗り込んだ。
しかし、皆が車に乗り込んだが車は一向に動かない。
「おぃ!オッサン何でオートマじゃねぇんだよ!?調子に乗ってミッションなんて乗ってんじゃねぇよ。お前運転しろっ!」
こうして、ようやくナツ達はPCPのテリトリーに到着した。
到着して間もなく、近くの公園で集団のケンカを発見した。
「おぃ、あれコヤジじゃね!?」
どうやら向こうの方が人数が多い為、やられてるらしい。
「コヤジっ!!」
ナツは駆けつけコヤジにワンカップを投げ、自分もビールを一気に呑んだ。
「ビールがあれば何でも出来るっ!」
「おめぇらマジ面倒くせぇ!」
2人のテンションが急にあがる。
ナツは向こうで南を囲んでる奴等を殴りつけていく。
「お前らの相手は俺様だっ。オラッ!次いってみよぉー」
アッという間にナツは3人を片付けてしまった。
「遅ぇよ、チョーさぁん」
「やられてんじゃねーよ、ダセェ」
「うるさいよ!つーか、アレ見てみ」
「ん!?ん"ん"〜!??ウッソ!!あれハチベーじゃん」
「だろっ!アイツPCP入ってるみたいだせ」
「アイツ知ってんの?」
コヤジが訊いてきた。
「あぁ、アイツ中学ん時のコンビニ君」
「コンビニ!?」
「うん、便利君って事。俺らん事嫌ってたもんなぁ」
そう言うとナツが叫んだ。
「こぉーらー!ハチベー!!こんな時にママのお使いかぁ!?」
ハチベーの顔に緊張が走った。
ナツに気付いて中学時代の思い出がトラウマになって蘇る。
「お前、ついうっかりそこに居んだろ?なぁ、うっかりハチベー。今なら許してやっからこちにおいで」
ハチベーは黙ってナツに従った。
「よーし、よし。よく出来ました。お前、別の日にサリーとお仕置きな。てかPCPの頭は誰よ?」
「アユム君とマーサ君です」
「呼べよ」
ハチベーはどちらかに電話を掛け呼び出した。
「今から来るそうです」
暫くすると静まり返った明け方の街に単気筒のエンジン音が響いてきた。
ロンスイのトラッカー仕様のSRから如何にも軽そうな二人組がダルそうに近づいてくる。
「ようやくお出ましか」
ナツは呟いた。