Vanillaー罰ゲーム
数日後―
バニラにはいつもの4人とハチベーが居た。
ハチベーはナツだけでも萎縮するのにサリーまでいる為気が気でない。
「今日集まったのは他でもない。このハチベーの罰ゲーム大会です!おぃ、ハチベーattic行ってきなっ。行けば万事オッケーだから」
ハチベーに口ごたえ出来る訳もなく渋々出掛けて行った。
「ちゃんと帰って来いよぉ」
皆で手を振って見送る。
6時間後―
バニラの扉が開き、ハチベーが暗い面持ちで帰って来た。
皆それを見て
「男らしい」
「素敵だ」
「ナウい」
それぞれの感想を洩らす。
「鬼ゾリのパンチって俺らの時代たぞ。お前、生きた化石だなぁ」
とトムが憐憫の情を込めて言うとサリーが
「格好が合ってネェ」と一蹴した。
するとナツが
「細工は流々。仕上げはコレで」
そう言って紙袋を取り出した。
「ジャーン!これぜってぇ渋いべ!?ほらハチベーコレに着替えろっ」
ハチベーに服を手渡し奥の部屋に連れて行く。
奥からナツの笑い声がする。
少しして、奥の部屋からナツが出て来てマイクを持った真似をする。
「皆様ぁ、大変長らくお待たせ致しました〜。Mr.ヤンキィの登場ですぅ」
プロレスの入場ばりのナツの紹介でハチベーが小さくなって出て来た。
サンタフェのセーター
黒のスリータックスラックス
MCMのセカンドバッグ
ヤンキーグラス
紫の靴下
パーマーのサンダル
オマケの香水はタクティクス
誰が見ても時代遅れの田舎小僧。
「お前、人生で一番輝いてるぜ」
サリーが茶化す。
ナツが
「キメの一言」と言うと
「ねぇちゃーん、茶ぁでもシバきに行くべぇよ」
まるで売れない漫才師の面白くない方のコントのセリフ並みに棒読みで喋った。
ナツがハチベーの額を叩く。
「痛っ、痛っ、痛ぁー」
先日スケボーでやられた所だ。
「お前、劇団ひまわりか?袈裟なんだよ。もっとビシッとセリフ言えねーのかよ。これじゃナンパは無理だな。仕方ない、作戦Bだ」
そうして、皆で外に出て行った。
街にはまだ正月気分が残っており、それなりに賑わっている。
ナツは、予め用意していた自転車を持ってきた。
ハンドルは絞った鬼ハンで、丁寧にラッパまで付いている。
「いいか、ハチベー。お前はこれから、あのガソリンスタンドに行く訳だ。ただ行く訳じゃねぇぞ、罰ゲームだからな。コレをやりきったら許してやるよ」
それからハチベーはナツに説明を受け、自転車でスタンドに向かった。
ガソリンスタンドの店員は遠目から(何か来たよぉ。)と思った。
その変な生き物は真っ直ぐこっちに向かって来る。
「ボーボボ、ボーボボ」
店員は暴走族の真似をしてるらしい生き物を見て吹き出しそうになる。
(一応、お客かもしれない)と思い、声を掛けてみた。
「イラッシャイマセー。どういったご用件でしょうかぁ?」
女の店員は(どういったご用件もクソもコイツには見るからに燃料など無用じゃないか)と思いながらスマイルで訊ねた。
チャンネェのパイオツ満タン」
「ハァ?独り言は1人の時言えっ!営業の邪魔すんなよ!!スマイル返せアホっ」
ハチベーは女の店員に蹴られながら追い出された。
それを見ていた4人はハチベーを許してやることにした。