表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
97/214

【文化祭編1】聞いてみると意外とあるものだと思う

今回からは文化祭編です

文化祭に行きたい葵衣と行きたくない光晃ですが、光晃が妥協するのか?それとも、葵衣が諦めるのか?

では、どうぞ

 文化祭準備期間中に僕は学校には行かずに家に引きこもっていた。その間に真理姉さんや秀義、理沙は何回か来たけど、優奈と葵衣が僕はいない事にして真理姉さん達を追い返した


「真理姉さん達をやり過ごしながらきて今日はいよいよ文化祭か……」


 僕は文化祭で女装させられるのが目に見えてるので絶対に学校には行かない。自分が災難に遭うってわかりきっているのに災難に飛び込むバカはいない


「光晃、学校に行った方がいいんじゃないかな?」

「葵衣、それは僕に女装して人前に出て恥ずかしい思いをしろって言ってるのかな?」

「違うよ!変装して文化祭を楽しもうって言ってるの!」


 平和な朝、マンションの一室に葵衣のスッとんきょんな意見が声と共に響く


「何を言い出すかと思えば……変装したってすぐにバレるに決まっているじゃないか」


 この中に変装の名人もしくは特殊メイクの名人がいるならともかく、そんな人間はこの中にはいない


「そ、それはそうかもしれないけど……」

「でしょ?じゃあ、僕は行かないよ。行きたければ1人か優奈と一緒に行くんだね」


 直接言われたってわけじゃないけど、葵衣が文化祭に行きたがっている理由は何となく予想がつく。教育実習の最中に生徒と約束でもしたんだろう


「そんな……光晃と文化祭を一緒に回りたかったのに……」


 僕だって女装する事にならなきゃ普通に参加した。


「僕だって女装する事になんてならなきゃ文化祭準備にだって文化祭にだって参加したよ。だけど、女装させられるのなら話は別だ。僕は変装したって文化祭に行くつもりはないよ」


 僕は普段の学校生活でクラスメートに興味すらない。それは学校行事があっても変わる事はない


「で、でもッ!」

「葵衣はどうして文化祭に行きたいの?」

「約束したから……」

「誰と?」

「生徒と」


 やっぱり葵衣は教育実習生だった頃に生徒と約束していたか……だけど、それなら僕を連れて行く意味はない


「そう。でも、生徒との約束なんて律儀に守る必要なんてないでしょ」


 教育実習でした約束を無理して守る必要はない。文化祭なんて大勢の人が来るんだから行っても行かなくても同じようなものだ


「で、でも、約束したし……」


 約束したから必ず守らないといけないなんて決まりはどこにもない


「そう。じゃあ、優奈と一緒に行って来たらいいでしょ」


 進級を盾に女装を強要するような学校に行きたいとは思わない。最悪転校する事も視野に……ん?転校?そうだ!文化祭が終わったら学校に行って退学届を出して転校しよう


「私は光晃と一緒に行きたいんだよ!」


 僕と一緒に文化祭に行きたいと言ってくれる葵衣。ま、僕としても北南高校最後の文化祭だから行ってもいいかなと思い始めるから不思議だ


「葵衣がそんなに僕と一緒に行きたいなら変装アリで一緒に行くよ」

「いいの!?」

「うん。どうせ最後だし」

「最後?」

「あ、いや、何でもない。それより行くなら準備しなきゃね」

「うん!」


 ウッカリ最後だなんて言ってしまったけど、誤魔化せたようで何よりだ。文化祭が終わったら学校を辞めて転校するだんなんて口が裂けても言えない


「何とか誤魔化せた……」


 教育実習生の頃からそうだったけど、葵衣は誤魔化されやすい。話題をすり替えると簡単にそっちに乗ってくる


「ねぇ、光晃」

「何かな?優奈」

「今回の文化祭が終わったら学校を辞めて転校しようだなんて考えてない?」


 葵衣もそうだけど、優奈はどうして僕の考えている事がわかるの?


「どうしてそう思うの?僕は何も言ってないのに」

「そりゃ光晃を見てるとわかるよ」

「え?どうして?」

「家に来た時からそうだけど、光晃って学校関係者に対してはものすごく冷たいし」


 まぁ、北南高校の連中は嫌いだから冷たいって言うのは間違ってないけど


「そりゃ嫌いだからね。北南高校の連中は特に」


 僕は教師・教育実習生全般が嫌いだけど、北南高校の連中は教師であろうと生徒であろうと嫌いだ。好奇心から僕の女装を勝手に決めるし


「そっか。でも、今の高校を辞めて他の高校に行っても結果は同じなんじゃないの?」


 優奈の言う通り転校したところで結果は同じだろうけど、それでも北南高校みたいに本人の意見そっちのけで物事を決めるような真似はしないと思う


「そうかもしれないけど、今の学校より学習環境や教師の質は違ってくると思う。少なくとも違う自分と違う考え方の生徒を力でねじ伏せようとはしないだろうし」


 そもそもが考えが違うから力でそれをねじ伏せるのは独裁者と変わらない。教師────いや、大人なら考え方が違う人間とどこで折り合いをつけるかを考えるのが普通なんだろうけど、北南高校の教師はそれをしない


「大人なら力でねじ伏せるんじゃなくて折り合いをつけた方がいいとは思うけど、それができないから光晃の通ってる高校の教師なんてしてるんじゃないのかな?」


 北南高校に行ったことがない優奈が遠回しに北南高校を問題教師の集まりと言っている。つまり、1度も北南高校の教師と接した事のない人間にさえこんな評価だ。いずれあの学校は廃校になるんじゃないかと不安になる


「さぁね。教師の移動に興味なんてないから僕にはよくわからない」


 教師がどこに移動しようと僕には関係ない。どんな人間が教師であろうとも腐ってるのは確かだし


「そっか。それより光晃」

「ん?何?」

「着替えて来なくてもいいの?」

「あ……忘れてた」


 葵衣が着替えに行っている間に優奈と話し込んでいて着替えるのを忘れていた。ダサくない程度で適当に選ぶか


「私も準備してくるから光晃も準備してきてね」

「わかった」


 僕は優奈と別れ一旦部屋に戻る。


「目立たない範囲でしかも僕だってバレない服装か……」


 今回の洋服選びは矛盾していると思うってか、完全に矛盾している。目立たない範囲で僕だってバレない服装だなんてあるわけ……あ、あった。あったけど、ウィッグがない


「顔さえ変えれば服装に気を使う必要なんてなかった」


 ウィッグで顔がバレないようにして、服を地味なものにすれば僕だってバレない


「よし、服装はこれでいいか」


 ジーパンにTシャツ、黒のジャケットを着て僕はリビングに戻る。ウィッグはダメ元で葵衣か優奈に聞いてみよう


「優奈が遅くなるのは仕方ないとして、葵衣は僕よりも早く着替えに行ったのにどうして遅くなるんだろう?」


 女性はメイクに時間が掛かるってのは知ってるけど、時間が掛かり過ぎる……


「お待たせ光晃!」

「うん、待ったよ。葵衣」


 着替え終わった葵衣が入ってきた。見たところ葵衣はナチュラルメイクでスッピンと言われても信用してしまうレベルだ


「もー!こういう時は待ってないって言うのがマナーでしょ!」


 プリプリと怒る葵衣は可愛いけど、それはデートの時に言う常套句だよ……


「はいはい、それはデートの待ち合わせに使う常套句であり、着替えを待っている時の常套句じゃないからね」

「むぅ~」

「剥れないの。僕は葵衣に聞きたい事があるんだからさ」

「え!?何!?聞きたい事!?」


 僕が聞きたい事があるって言っただけなのにどうして葵衣はハイテンションになる?酔っ払ってるの?


「うん。ウィッグを持ってないか聞きたかったんだけど」

「ウィッグ?」

「うん、コスプレの時に使うカツラなんだけど……持ってないかな?」


 ウィッグもそうだけど、葵衣が都合よくコスプレ衣装なんて持ってるとは思えない


「持ってるよ?」

「そう……持ってな────え?今なんて?」

「だから、持ってるって言ったんだけど」


 い、意外だ……葵衣がウィッグを持っているだなんて……葵衣にコスプレする趣味なんてあったの?


「本当に?」

「うん」

「どうして持ってるの?葵衣にコスプレの趣味なんてあったっけ?」

「ないよ?ここへ来た日に私の部屋を物色してたら見つけたってだけで」


 備え付けの家具があるのはいいとして、どうしてウィッグがあらかじめ用意されてるの?


「どうしてウィッグがあらかじめ用意されてるのかな?」

「友達の趣味!」


 本当なら今の答えで納得しちゃいけないんだろうけど、葵衣の友達って事を念頭に置いて考えると納得できてしまう。恐るべき葵衣パワー


「そ、そう。でも、助かった……」


 不幸中の幸いというのはこの事だ。ウィッグがないなら僕は絶対に文化祭に行かなかった。だけど、変装できるのなら話は別だ


「何が助かったかは知らないけど、必要なら持ってこようか?」

「うん、お願い」

「わかった」


 葵衣は再び自室に戻って行った。葵衣は準備万全だから後は優奈を待つだけか……


「お待たせ光晃」

「いいや、そんなに待ってないよ」

「そう。ところで水沢さんは?」

「葵衣は僕が使うウィッグを取りに行ったよ」


 葵衣に手間を掛けさせて申し訳ないけど、僕が北南高校の文化祭に客として行くなら変装する事は絶対条件になる


「水沢さんにコスプレの趣味でもあるの?」

「いや、葵衣本人にはないけど、友達にはあるんだとさ」

「そ、そうなんだ……」


 優奈の顔は若干引きつっていたけど、思っている事はおそらく僕と一緒だろう。葵衣の友達って言われたら納得してしまう


「うん。元々はダメ元で聞いてみたんだけど、まさか本当にあるとは思わなかったよ」


 飲食店では頼んでみると意外とあるなんて話を聞いた事があるけど、まさか、飲食店でもないのに聞いてみてあったなんて話を僕自身が体験するとは思いもしなかった


「世の中聞いてみるものだね」

「そうだね」


 優奈の言う通り世の中聞いてみると意外とあるものだ。だけど、何でもかんでも聞いてみるわけにはいかない。だからタイミングは限られてくるけどね


「さて、ウィッグが来るまでまったりしてよっか?」

「うん」


 僕と優奈はウィッグが届くまでまったりしながら待った。


今回からは文化祭編です

文化祭に行きたい葵衣と行きたくない光晃ですが、光晃が変装する事で話しはまとまりました

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ