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【文化祭準備編6】僕は優奈さんの部屋へ行く

今回は優奈の両親の自己紹介からのスタートです

優奈の両親は優奈の結婚については触れない模様

では、どうぞ

「あの……とりあえず自己紹介しませんか?」


 先程までキラキラした目で僕を見ていた優奈さんのお父さんとそれを遠目で眺めていた優奈さんのお母さん。だけど、いつまでも優奈さんのお父さん、優奈さんのお母さんなんて呼び方は面倒だし、よそよそしい。お世話になるんだからせめて名前だけでも知りたい


「うむ、そうだな。私達だけ君の名前を知っていて君は私達の名前を知らないというのはフェアじゃないな」


 別にフェアだとかそういうことを言っているんじゃない。ただ、呼びづらいってだけで


「別にフェアとかじゃなくて、呼びづらいでしょ?いつまでも優奈さんのお父さん、優奈さんのお母さんなんて呼び方は」

「そうかね?気軽にお義父さんと呼んでくれてもいいんだよ?」


 今、お父さんの字が違ったような気がしたのは気のせいかな?


「どんな呼び方だろうと名前を知らない事には始まりません」


 この際だから字が違っているのは気にしないでおこう。うん、気にしたら負けだね


「ふむ、そうかね?まぁ、名前を知らない事には始まらないし、自己紹介といこうかね」


 自分の名前を言うだけなのにどうしてこんなに時間が掛かるのやら……まぁ、名前を言った後でダラダラと話をする校長や教師よりかはマシだと思うけど


「そうしてください……」


 厳しそうな雰囲気とは違い、意外とひょうきんな性格である優奈さんのお父さん、それを黙って見守る優奈さんのお母さん。そして、そんな両親に頭を悩ませている優奈さん。こういうのが普通の家族ってものなのかな?


「では、家長の私から。私は宮下丈一郎(じょういちろう)。知っているとは思うが、優奈の父親だ」

「次は私ね。私は宮下亜優美(あゆみ)。優奈の母です」

「優奈さんから聞いて知っているとは思いますが、岩崎光晃です。2~3日お世話になります」


 いつ出て行くかが決まってないけど、2~3日はいる予定ではいる。それに、今の季節だと登山客で賑わいそうだからタダで泊めてもらうってわけにもいかない


「えーっと、私は道中で自己紹介したからいいよね?」


 優奈さんはここへ来る途中で互いに自己紹介したから優奈さんの自己紹介は省く


「はい、道中で互いに自己紹介しましたし、今更しなくてもいいでしょう」

「そうだよね……それに、いろいろ聞かれても困るし」


 聞かれて困る事?何だろう?スリーサイズとか?


「いろいろの部分が気にならなくはないですが、僕は女性が聞かれて困ることを聞く趣味はありませんよ」

「そ、そっか……」


 少し残念がっている様子の優奈さん。


「優奈さんが話したいと思った時に話してくれればいいです。僕からは何も聞きません」


 教師や教育実習生に絡まれた時、僕は必要最低限の情報しか出さないようにしているし、余計なことは聞かないと決めている


「光晃君って女の人の扱いに慣れているけど、ひょっとしてチャラ男?」

「いや、そうじゃありませんけど、ちょっとした事情で女性の扱いには慣れているんですよ」

「そうなんだ」

「はい」


 葵衣と付き合っていることが恥ずかしいわけじゃない。だけど、それ以前に彼女と同棲している上に他に2人の女性と一緒に暮らしているだなんて口が裂けても言えない


「そんな話はいいとして、優奈、光晃君を部屋へ案内してあげなさい」

「わかった。光晃君、お部屋に案内するから来て」


 丈一郎さんのおかげで話を掘り下げられなくて助かった……


「わかりました。丈一郎さん、亜優美さん、失礼します」


 僕と優奈さんは部屋を出た。


「…………」

「…………」


 僕と優奈さんの関係を冷やかされたわけじゃないのに2人とも無言になってしまう。


「びっくりした?」

「え?」


 優奈さんから突然こんな言葉が出てきて思わず間抜けな声が出た


「家のお父さんって見た目は厳しそうだけど、ひょうきんな性格だからさ……なんて言うのかな?ギャップが激しいって言うのかな」

「はあ……そうですね。確かに見た目とは違ってひょうきんな性格ですね」

「否定しないんだね」

「優奈さんの意見を否定できるほど優奈さんのお父さんを知っているわけじゃありませんから」


 廊下を歩きながら優奈さんのお父さんについて話し合う。だけど、話し合えるほど僕は優奈さんのお父さんの事について知っているわけじゃない。見た目と性格が違うでしょ?なんて言われても僕にはそうですねくらいしか言えない


「光晃君って正直なんだね」

「正直ですか……」

「言われない?」

「いえ、言われませんけど……」


 真理姉さんにも葵衣にも正直だって言われた事はないし、今まで対峙してきた教師、教育実習生にも言われた事はない


「そうなの?私は光晃君って正直だと思うんだけど?」

「そうですか?正直だなんて僕は今まで言われた事はありません」


 僕の今までの人生を振り返ってみると、同級生はともかくとして、年上────特に教師や教育実習生とはぶつかってばかりだった。そんな僕は人に正直だなんて言われた事はない


「光晃君って今までどんな人生を送ってきたのかな?」

「それを知りたいのであれば部屋でお話しますよ」


 僕の人生───いや、人の人生なんて廊下で歩きながらする話じゃないと思う。それに、どんな人生を歩んできたとしても話が短くなるなんて事はない


「そうだね。私もお部屋でじっくり聞きたいな」


 僕と優奈さんの間に再び沈黙が流れた


「着いたよ」

「え?で、でも、ここは……」


 優奈さんに案内されたのは客間じゃなく、優奈さんの部屋。襖に『ゆなのへや』って札がぶら下げてあっるし、ここが優奈さんの部屋じゃなく客間だんて無理があるし、ご両親の寝室って言われても信憑性に欠ける


「私の部屋だけど?」

「それは見ればわかりますよ。じゃなくて、僕の泊まる部屋って……」

「そう。私の部屋だけど?嫌…………?」


 嫌か嫌じゃないかの問題じゃない。付き合ってもいない男女が同じ部屋で2人きりなのが問題なんだよ


「嫌とかそういう問題じゃなくて、男女が同じ部屋で生活するのは問題あるんじゃないかと」

「そう?私は別に嫌じゃないけど?」


 優奈さんの周囲には丈一郎さん以外の男はいないのかな?男子に対して無防備過ぎじゃないかな?


「優奈さんが嫌じゃなければ僕はいいんですけど……」

「嫌じゃないよ……光晃君なら」


 そういう言い方はなしだと思う。その言い方じゃまるで僕以外の男子は嫌だけど、僕ならいい。そう言っているようにも聞こえる


「そういう言い方は好きな男子に言ってあげてください」

「むぅ……」


 なぜか頬をリスみたいに膨らませている優奈さん。どことなく葵衣に似ているけど、僕はこういう精神年齢が子供に近しい女性が近寄って来やすい体質なのかな?


「どうしました?リスみたいな顔して」

「何でもないよ!!」


 リスみたいに頬を膨らませたかと思ったら今度は急に怒り出した。女心と秋の空って言うけど、アレって本当だったんだ……


「そ、そうですか……」

「細かい話はいいから入って!」

「は、はい、お邪魔します」

「うん!」


 ひとまず僕は部屋の中へ入り、優奈さんは襖を閉める


「適当に座ってくれていいよ」

「わかりました」


 優奈さんに言われた通りに僕は適当に座り、周囲を見回す。


「あ、あんまり見られると恥ずかしいよ……」

「ご、ごめんなさい、女の人の部屋ってあんまり入る事ないんで……」


 優奈さんの部屋は真理姉さんの部屋や前に見た葵衣の部屋とは違い、ぬいぐるみの類がほとんどない。あってポスターくらいだ


「光晃君の周りには女の人いないの?」

「全くいないわけじゃありませんが、数は多くないですね」


 僕の周囲に女性がゼロってわけじゃないけど、人数が多いという事でもない


「光晃君って男子校に行ってるの?」


 唐突に何?どうして学校の話になるの?


「突然何ですか?」

「だって、光晃君は女装が嫌で逃げてきたんでしょ?だから、光晃君は男子校に通っていて罰ゲームで女装させられるのかな?って思って」


 女装が嫌なのも逃げてきたのも揺るぎない事実だし、罰ゲームで女装ってのも半分正解で半分ハズレ


「確かに女装が嫌で逃げてきたって部分と罰ゲームで女装って言うのは半分当たってますけど、僕の学校は男女共学ですよ」

「そうなんだ。だったらどうして女装をする事になったの?」

「言ってませんでしたか?」

「聞いてないよ」


 そう言えば僕が大海町に来た経緯は話したけど、どうして女装する事になったか話してなかったっけ?


「最初に言っておきますけど、優奈さんがバカだとかそういう事を言うつもりはありません」

「突然なに?」

「僕が女装する事になった経緯を話すのに必要な事なんです」

「そっか。必要な事なら仕方ないね」

「ええ、で、僕が女装する事になった経緯なんですけど────────」


 僕は学校であった事を全て話した。授業をサボり過ぎて単位が危なくなっていること、日頃の恨みを晴らす為なのかは知らないけど担任から女装するように言われたことを話した


「そっか、でも、単位が足りないなら補習授業をするとか他に方法はあったんじゃないかな?」

「僕もそう思います」


 優奈さんの意見は北南高校の教師よりも教師らしい意見を言ってきた。そう、授業の単位が足りないなら補習授業をすればいい。教師の使う忙しいは免罪符にしかならない。大方、忙しいって言っている俺カッコいいとか思っているから女装で補習授業をサボろうとしてたってところかな


「光晃君」

「はい」

「私もお父さんもお母さんも光晃君がここにいたいならいてもらって構わないんだよ?それこそ、ずっといてもね」

「はい」


 今の僕には葵衣や真理姉さんより優奈さんの方が僕の事を思ってくれている。そんな気がした

今回は優奈の両親の自己紹介からのスタートでした

優奈の両親は優奈の結婚には触れませんでした。が、しかし、徐々に修羅場に近づいています

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました

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