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【文化祭準備編5】僕は優奈さんの両親と対面する

今回は優奈の両親と対面する話です

同じ質問を何回もされると何となくわかるはず

では、どうぞ

「光晃君、緊張してる?」


 優奈さんのご両親の元へ向かう途中、ふと優奈さんが尋ねてきた。そりゃ緊張してないわけがない


「そりゃ緊張してますよ。っていうか、母親はともかく、父親の方は娘がいきなり知らない男を連れて帰って来たらキレること間違いなしだっていう人結構多いですし」


 僕は世間の親をあんまり知らないし、ドラマで見ただけだけど、父親というのは娘に甘い人が多く、娘が連れてくる男は厳正に品定めされる運命にあるらしい


「私のお父さんはそんな事しないよ!むしろ私の方がいろいろ言われるんじゃないかってビクビクしてるんだから!」


 どうして娘である優奈さんが父親に男を紹介するのにビクビクするの?ひょっとして優奈さんの父親って娘に厳しい人?


「はあ……その理由を聞いてもよろしいでしょうか?」


 優奈さんの父親が娘に対して厳しい人だからビクビクしてるのかな?


「私のお父さんはいつも私に『早く結婚しなさい、お前もいい歳なんだから』って口癖の様に言ってくるし、二言目には『誰かいい人いないのか?』って言うんだよ……私が少しの間でも男と一緒にいるところを見られたら『優奈、さっきの男は彼氏か?』って聞いてくる始末なんだよ。だから私は男の人に極力近づかないようにしてるんだけど、私が光晃君を紹介した時にはどうなる事やら……」


 優奈さんの父親は何て言うか、お節介なおばさんみたいな父親だなぁ……


「理由を聞いといてアレですけど……こんな時、僕はどんなリアクションをしたらいいですか?」


 僕は優奈さんの年齢を知らないから何とも言えないし、見た目からして結婚を焦るような年齢じゃないでしょ……


「何もリアクションしなくてもいいよ……私もいい歳だし、そろそろ結婚しなきゃなとは思ってたところだし」


 この場合は優奈さんの年齢を聞いた方がいいのかな?それとも、スルーした方がいいのかな?


「いい歳と言われましても……結婚って誰かに強制されてするものでも意識してするものでもないでしょうに……」


 僕は優奈さんの年齢を知らないから結婚しろとも結婚はまだ早いなんて意見を出せないし、大体、僕と優奈さんは今日初めて会ったばかりだから気軽に意見を言い合える間柄じゃない


「そうなんだけどね……家って旅館じゃん?その関係もあって私に早く跡継ぎを作ってほしいみたい」


 親の代から続く仕事というのは大変らしい。だけど、子供が生まれたとしても親の跡を継ぐとは限らない


「それはあくまでも優奈さんのお父さんの意見で生まれてきた子供が跡継ぎを拒否したらどうするんですか?」

「それは……多分、考えてないと思う」

「はぁ……これ以上言うと大きなお節介になりそうですから僕は何も言いませんよ」

「だよね……」


 できる事なら何とかしてあげたいような気もしなくはないけど、この旅館の跡を継ぐということは優奈さんと結婚しなきゃいけないということ。僕はこの町に長居するつもりはない


「今は跡継ぎとかそんなの忘れた方がいいと思いますよ?」


 感情が絡んでくる問題を今すぐどうにかしようなんて無理ゲーにもほどがある。だったら、優奈さんが本当に好きになった相手と愛を育み結婚して子を成してもらおう。誰が相手になるかは知らないけど


「そうだね、今は跡継ぎとか考えないようにするよ」


 人の感情が絡んでくる以上、優奈さんだけの想いでも相手だけの想いでもダメだ。ちゃんと互いに想い合ってないとね


「そうですね、考えても仕方ない事は考えないようにしましょう」

「うん!」


 さっきから長い廊下を歩いているけど、いつになったら優奈さんのご両親がいる部屋に着くんだろう?


「ところで優奈さん」

「ん?何?」

「この廊下長いですけど、いつになったらご両親がいる部屋に着くんですか?」


 外から見た時にも思ったけど、この旅館は大きい。建物の大きさ=広さとは言い切れないけど、でも、大体は建物の大きさ=広さと言っても過言ではない


「もうすぐだよ?」

「そうですか……」

「どうしたの?」

「何でもありません」


 優奈さんは日頃からこの旅館で生活しているから違和感がないんだろうけど、僕からしてみれば違和感しかない。田舎で土地が広いから大きな家が建てられるけど、それはお金があればの話でまぁ、ただ家を建てただけじゃ味気ないと思う人は建てる家を大きくしてそこで旅館をするだろうとは思う


「あ、ひょっとして、家が広いから疲れたとか?」


 僕は何も言ってないのにどうしてわかるんだろう?


「あ、いや、そういうわけじゃないんですけど……」


 僕は素直に疲れたと言えるほど図太い神経を持ってない。ここは誤魔化しておこう


「いいんだよ。家って広いから初めての人が疲れちゃうのも無理はないし」

「…………………すみません」


 言い訳をしたりすると見苦しくなるからしないけど、広い家っていうのは幼少期には憧れを抱くものだけど、大人になると掃除する時とかは家だと手間が掛かるから広すぎるのも問題だよなぁ……


「いいよ別に。私も掃除する時に大変だと思っていたし。あ、ここが私の両親の部屋ね」


 ふと横を見ると大きな襖があった。泊めてもらう立場だから文句は言いたくないけど、わかりづらい……


「はぁ……長かった……」

「あ、あはは……」


 僕の発言に苦笑いの優奈さん。優奈さんや優奈さんの友達は違和感がないだろうけど、僕にとっては違和感しかない。自分が普段住んでる家はそんなに広くないから広い家はどことなく変な感じがする


「ここで2人して立ってても仕方ないので入りませんか?」

「そうだね」

「じゃあ、僕はここで待ってますので」


 優奈さんと僕が同時に入っていくのはマズイと思い、優奈さんが話をしている間、僕は待っている。


「え?どうして?」


 キョトンとする優奈さん。優奈さんは僕と同時に部屋に入るのがマズイってわかってないのかな?


「どうしてって、娘が男と2人で入ると彼氏と勘違いされるからですよ。優奈さんだって男を連れてくる度に結婚を催促されたりするのは嫌でしょ?」

「うん」

「じゃあ、優奈さんが先に入ってご両親に僕の話をある程度しておいてください」


 どんな内容で僕の事を紹介するかは優奈さんに任せるけど、できれば拗れないようにお願いしたい


「わかったよ」


 優奈さんは襖を開けて部屋に入る。その間、僕はここで待機だけど、正直、暇だなぁ……女装が嫌で逃げ出して来たけど、葵衣達は今頃どうしているかな?


「はぁ……」


 葵衣と付き合ってから僕を取り巻く環境は変化した。大した変化じゃないけど、それでも少しは変化した。僕の家には水沢姉妹が住むようになり、真理姉さんと2人だけの生活じゃなくなった程度ってだけだけど


「葵衣と付き合っても教師や教育実習生に対する印象には変化なしか……」


 当たり前だけど、葵衣と付き合った。順当にいけば教員になる人間と付き合ったということになるけど、だからと言って僕の教師、教育実習生が嫌いな事には変わりない。自分の彼女が教師だろうと教育実習生だろうと嫌いなものは嫌いだから


「優奈さんは中で何を話してるんだろう?」


 葵衣の事も気になるけど、今は葵衣より優奈さんだ。優奈さんが僕の事をどんな風に話しているか……


『じゃあ、呼んでくるね!』


 部屋の中から優奈さんの声が聞こえた。どうやら僕を呼ぶみたい。文化祭でやる出店と劇を決める時みたいに僕の本意じゃない形での紹介なら僕はここから出て行こう


「光晃君!お待たせ!お父さん達が呼んでるよ!」

「わかりました」


 僕は優奈さんに続いて部屋に入る。僕は優奈さんと結婚させてくださいって言うわけじゃないから緊張はしなけど、どんな風に話されたかは気になる


「お父さん、連れてきたよ」

「ああ」


 僕が部屋に入ると見た感じ50代くらいで厳しそうな男性と見た感じ30代後半くらいの穏やかな女性がいた


「優奈、この子が光晃君?」

「そうだよ、お母さん」


 穏やかな女性は優奈さんのお母さんか……と、いうことは、こっちの厳しそうなのはお父さんで間違いなさそう


「君が岩崎光晃君か……」

「そうですけど……?」


 優奈さんのお父さんが静かに口を開く。優奈さんは明るい感じだけど、お父さんは厳しそう、お母さんは穏やかだし……優奈さんはどっちに似たんだろう?


「鬼ごっこの勝負で意地を見せる為にここまで逃げてきた岩崎光晃君かね?」


 何の確認かはしらないけど、僕が岩崎光晃である事に間違いはないんだけど?


「そうですけど……?これって何の確認ですか?」


 厳しそうな雰囲気の人間は何を考えているか、何を言い出すかが予想できない。狂った人間と厳しそうな雰囲気を醸し出す人間は冷静だけど、何を言い出すかわからない。まぁ、トチ狂った人間は言葉に出す事はあまりないけど、その分、何をしでかすか……


「優奈から話は聞いていたのだが、見た感じそんな大胆な事をするようには見えなくてね。まぁ、立ったままでもなんだ、座りなさい」

「はい」


 僕は優奈さんのお父さんに言われた通りに座るけど、胡坐で座る気にはなれない。雰囲気から正座しろと言わんばかりの雰囲気だし


「別に正座じゃなくてもいいんだよ?」

「は、はあ……」


 優奈さんのお父さんは正座じゃなくていいと言ったけど、アンタの雰囲気が正座しろって言ってんだから正座になるのは仕方ないでしょ


「それで、君は何日くらいここにいる予定だね?」

「はい?」


 僕は優奈さんのお父さんが何を言いたいかサッパリわからない。優奈さんから聞いてた話とは違うからだ。てっきり僕は結婚するのかくらいは言われると思った


「いや、何日くらいいる予定かを聞いたんだが……」

「そうですね、2~3日くらいお世話になろうかとは思いますが……」


 少なくとも僕は文化祭準備期間が終わるまでは優奈さんの家であるこの旅館にお世話になるつもりでいるけど……


「そうか……ところで君は料理はできるかね?」


 またか……優奈さんにも陽菜さんにも聞かれたけど、どうして料理?別に家事が得意か?とか聞き方はたくさんあるだろうに


「人並みにはできますけど……」

「生きた魚には触れるかね?」


 本格的に何を言っているかわからない。料理ができるかどうかの質問の次は生きた魚に触れるかの質問だ。ここから導き出されるであろう答えは─────アレか


「触れますよ。この旅館で出す料理のレシピとか見てないんでなんとも言えませんし、この旅館の料理人が何人足りなくて何日で戻ってくるかは知りませんが」

「「「─────!?」」」


 優奈さんが驚いたような顔で僕を見る。まるでどうして知っていると言いたげな顔だけど、料理はできるかって質問、そこから少し話が膨らんで生きた魚に触れられるかって質問をされたら何となくわかる


「光晃君、料理人が足りないっていつわかったの?」


 優奈さんはビックリしたような顔で尋ねてきた


「最初に優奈さんに聞かれた時と陽菜さんや優奈さんのお父さんに料理の事を聞かれた時には何とも思いませんでした。が、優奈さんのお父さんが生きた魚に触れるかって聞かれた時に確信しました。この旅館には料理人が足りないんだなとね」


 旅館の従業員が足りないのであれば家事が得意か?って聞けばいい。だけど、優奈さん達は料理ができるか?って聞いてきた。つまり、この旅館は料理人が不足しているということになる。絡んでくる教師と対峙する時に相手の言ったことから何が弱点かを探るけど、まさか、こんなところで役に立つとは……


「す、すごいな!君は!」


 優奈さんのお父さんがすっごいキラキラした目で僕を見てくるけど、別に褒められた事じゃないんだよなぁ……




今回は優奈の両親と対面する話でした

光晃は文化祭当日まで優奈の家を手伝うのか?それとも、葵衣に連れ戻されるのか?

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました

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