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僕は水沢先生と離れたくないと思う

今回は家に帰ってからのスタートです

家に帰ってからの光晃は葵衣に対して何を思う?

では、どうぞ

「やってしまった……」


 帰宅してすぐに部屋に戻った僕は自己嫌悪に陥っていた。水沢先生の教育実習が終わるまでは告白もだけど連絡先を交換する気もなかった。しかし、今日、我慢できなくなった水沢先生が僕に告白してきてそれを断った。泣き出した彼女をどうにかして泣き止ませようと思ってつい連絡先を交換してしまった……


「水沢先生が浮かれて他の生徒や教師に話さなければいいけど……」


 本来ならば連絡先を交換してしまう事だってアウトなのに僕はそれをしてしまった。はぁ……見つからないようにきをつけなきゃ


「水沢先生は実習初日の質問をどう対処したんだろ?」


 僕の記憶が正しければ水沢先生は初恋と言っていた。だけど、身体に関して出るところは出て引き締まるところは引き締まっている。そして、幼さが少し残る顔。そんな容姿を持つ水沢先生の事だから実習初日に彼氏はいますか?くらい聞かれてもおかしくない。ドジなところを除けば恋愛対象として見るなら魅力的な女性だと思うし


「担任が一緒にいたんだからクラスの連中だって深くはツッコまないとは思うけど……」


 今更になって水沢先生のこれからが本格的に心配になってきた。大学で教育実習に行ったらこういう質問が出るよ。どう対処する?みたいな講義は受けているはずだけど……


「生徒と教師という事がわからない年齢じゃないんだし告白する暴挙に出る生徒は多分いないだろうけど」


 水沢先生や僕の両親みたいなタイプの人間が特殊なだけで世の中の高校生や教育実習生は物の分別くらいつくはずだと思う


「バレる前に学校辞めよっかな」


 今、僕が学校を辞めれば水沢先生と付き合っても学校側からしてみれば何の問題もない。17歳の少年と22歳の女子大生が付き合っている程度にしか捉えられないし、不健全な関係でなければ警察が絡んでくる事もない


「さて、バレた時の対処法も決まった事だし、夕飯の準備しよう」


 バレた時の対処法が決まったところで夕飯の準備をする為に部屋を出る。そもそも、教育実習生の指導をサボっている北南高校の教師が生徒の恋愛事情に首を突っ込む資格なんてないと僕個人は思うけどね


「今日は何にしようかな?」


 今日の夕飯は何にするかが決まっていない状態で冷蔵庫の確認もせずにキッチンに立つ。夕飯の献立を決める前に冷蔵庫の中身をチェックするのが先か


「献立を考える前に冷蔵庫の中身を確認しないとね」


 冷蔵庫の中には何があるのかな?真理姉さんが夜な夜なつまみ食いをしていなければ食材はそれなりにあったはずだけど


「今日は焼肉にしよう」


 食材は大量にあっても僕の気持ちの問題でどうしてもまともに夕飯を作る気になれない。なので野菜を切って肉を焼くだけの焼肉が1番楽だという理由で今夜は焼肉にする事にした。


「ただいま~」


 どうやら真理姉さんが帰ってきたみたいだ。って、まだ夕飯の準備ができてないんだけど


「おかえり真理姉さん」

「うん、ただいま。ところで今日の夕飯は何?」

「焼肉」


 真理姉さんからしてみれば本当は別のものがよかったかもしれないけど、今日は僕の方に作る気力がないんだ。その辺りは勘弁してほしい


「光晃、何かあった?」


 夕飯の献立を焼肉と答えただけなのにどうして僕に何かあった前提で聞くんだ?真理姉さん


「どうしてそんな事を聞くの?」

「いや、帰り際の水沢先生がスキップして帰ったから光晃と何かいい事でもあったのかな?と思ってね。それで、家に帰って来たら光晃がぼけ~っとしてたから」


 水沢先生は口に出さずとも態度に出るタイプの人間だったらしい。それにしても何かあったとしてそれがどうして僕に関する事って考えになるんだか……でも、真理姉さんは身内だし、誰かにバラすような真似したら水沢先生を連れて海外の両親のところにでも行けばいいし、話しておいてもいいかな


「そう。僕の方は何もなかったよ?水沢先生と連絡先を交換した以外の事はね」


 人間は嘘を吐く時に露骨な嘘だとすぐに見破られるけど、嘘を吐く時に本当の事も織り交ぜて話せばいいって偉い人も言ってたし、僕もそれに倣って嘘を吐く


「そう、水沢先生と連絡先を交換した以外には何もなかったのか~って、えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

「真理姉さんうるさいよ」

「い、いや、で、でも!ええ!?」


 真理姉さんが驚く気持ちも理解できなくはないけど、それでも声のボリュームくらい落としてほしい。僕だってどうかしているとは思っているんだから


「驚くのはわかるけど声が大きいし、近所迷惑だよ」

「あ、ごめん。でも、水沢先生の実習が終わるまで告白の答えを保留にしていた光晃がまさか水沢先生と連絡先を交換するなんて思わなかった」


 真理姉さんに言われて改めて僕はらしくない事をしたんだと実感させられる。水沢先生の教育実習が終わるまで告白の答えは保留にしておくつもりだったし、恋愛に関する話どころか互いのプライベートな話を必要以上にするつもりもなかった


「自分でもらしくないとは思っているけど、我慢できなくなった水沢先生が告白してくるし、断わったら断ったで泣き出すしで大変だったんだよ。それで、僕は妥協点として僕の連絡先を教えたんだけど水沢先生も連絡先を教えてくれたから結果的には連絡先を交換する事になった」


 身内である真理姉さんには事の顛末を話しても学校側にバラさないと思い、全てを話す。最悪の場合、僕は学校を辞めて水沢先生と海外の両親の元へ行く事以外は


「そ、そうなんだ。教師としては咎めなきゃいけないんだろうけど、従姉としては祝福するべきなのかな?」


 真理姉さんの立場的には難しいところだと思う。教師としては生徒である僕も教育実習生である水沢先生も指導しなきゃいけない。だけど、従姉としては僕が水沢先生と進展した事を祝福したい気持ちがあるらしいし


「別に指導も祝福もいらないよ。僕の両親だって付き合いたての頃は生徒と教育実習生だったみたいだし、大体が真理姉さんを含む北南高校の教師が口で僕を言い負かす事なんてできるの?口がダメなら暴力や権力を使ってでも服従させようって根性の腐りきった連中にさ」

「それは……無理かもしれない」


 真理姉さんは無理かもしれないと言ったけど、正確には無理だの間違いじゃないかな?


「でしょ?それに、生徒である僕に教育実習生の面倒を押し付けた時点で北南高校の教師は僕に物申せる立場じゃないと思うよ?最近はネットの掲示板に書き込んだだけでも大変な事になるのに」

「そ、そうだね。私から光晃と水沢先生の関係については健全な付き合いをするようにと一言言うだけに留めておくよ」


 真理姉さんの選択は賢い。ここで僕にあれこれ言うと僕はついうっかり北南高校の現状をネットに書き込むところだった。別に悪意を持って書き込むわけじゃないよ?ただ、ネットの掲示板を覗いていて何かを書き込みたくなって書き込んだらたまたま北南高校の教師がしている事を書いちゃっただけで


「話のわかる真理姉さんが僕は大好きだよ」

「なっ!?」


 僕の不意打ちに顔を赤くする真理姉さん。何でこんな事で顔を赤くするかな?従姉に対する社交辞令なのに


「顔が赤いところ悪いけど、僕これから買い出しに行ってくるから留守番よろしく」

「あ、うん」

「買ってきてほしいものある?」


 切らしているものやデザートがあれば買ってくるけど、切らしている日用品や調味料は特にない。となるとデザートしかない。


「いや、特にないよ」

「そう。じゃあ、行ってきます」

「行ってらっしゃい」


 僕は財布とバックを持って家を出た。真理姉さんは買ってくるものはないと言ってたけど、デザートにプリンぐらいなら買って帰ろうかな


「「あ……」」


 スーパーの前で水沢先生と出くわした。学校での告白があって何となく顔を合わせづらいけど、上手く話せるかな?


「光晃君、買い物か何か?」

「あ、はい。夕飯の買い出しに」

「そっか」

「そうです」


 ここで会話が途切れてしまった。喧嘩もしてないのに気まずい空気になるドラマのワンシーンを見てくだらないと思った事があるけど、いざ自分がその立場になってようやくわかった。何を話していいかわからないんだと


「水沢先生も買い物ですか?」

「うん、私は今1人暮らしだから夕飯の買い出しに」

「そうですか」

「うん」


 またも会話が途切れた。こういう時って何を話したらいいかわからない。だって、女性と気まずくなった事なんてないし


「よかったら家で食べますか?」

「え?」


 僕はなぜか水沢先生に家で食べないかと提案してしまった。自分でもどうしてこんな事を言ったかはわからない


「あ、嫌ならいいんですよ?無理強いはしませんし」

「行く……」

「そうですか」


 水沢先生と夕飯を一緒に食べる事が決定し、人数分の食材を買ってスーパーを出る。告白を断った挙句、泣かせてしまったからなのかな?僕が今日はこの人と離れたくないと思うのは


「水沢先生」

「ん?なあに?」

「今日は家に泊まって行きませんか?」

「え……?」


 僕の言った事に対し目を丸くする水沢先生。自分でもおかしい事を言っているのは自覚しているつもりだけど、今日はこの人と離れたくないと思っている自分もいる事は否定できない


「今日は離れたくないんです」

「こ、光晃君と小谷先生がいいなら私は構わないけど……」


 言い出したのは僕だからいいし、真理姉さんだって事情を話せばわかってくれるけど、念のために連絡だけしておこう


「わかりました。少し待っててください」

「うん」


 僕は水沢先生から一旦離れて真理姉さんに電話を掛ける


「もしもし真理姉さん?」

『どうしたの光晃?』

「スーパーで水沢先生にあったんだけど、今日家に泊めていい?」

『どうして?』


 そりゃいきなり他人を泊めていいだなんて言われたらどうしてって言いたくなる。しかも、泊める相手が教育実習生なら尚更


「今日は水沢先生と離れたくないんだよ」

『そう。夕飯を作るのは光晃なんだしいいんじゃない?』

「深くは聞かないの?」

『深く聞いてほしいの?』

「いや、そういうわけじゃないけど」

『なら深くは聞かないよ』

「そう」


 真理姉さんとの電話を済ませ、水沢先生の元へ戻る。詳しい理由を聞かずに離れたくないからって理由だけで教育実習生を泊める事を許可するあたり真理姉さんも相当の変わり者かお人好しだと思う


「小谷先生から泊めていいって許可が出ました」

「じゃあ、一旦私の家に行って荷物取って来なきゃね」

「ですね」


 僕達は水沢先生の荷物を取りに水沢先生の家へと向かった。今日の僕は水沢先生と離れたくない日らしい。教育実習生と離れたくないと思うようになるとは……水沢先生の実習が終わり、学校で顔を合わせなくなったら僕達はどうなるんだろう?

今回は家に帰ってからのスタートでした

家に帰ってから買い出しに行き、そこで葵衣と鉢合わせた光晃。家に葵衣を泊めて何を思うのか

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました

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