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僕は水沢先生と秘密を作る

今回は光晃が葵衣と秘密を作る話です

秘密ってなんでしょうね~

では、どうぞ

 昼休み。僕は1人昼食を食べていた。場所はもちろん、いつものサボりスポット。昼休みをどうにかやり過ごし次の時間の授業はそのままサボる!これこそ僕の完全なる計画だ


「今日は2時間目にらしくない事をしたから疲れた」


 2時間目の授業終了前、10分間で水沢先生のミニ授業があった。僕にしては珍しく授業で挙手して発表したため、他人からしてみればそれだけの事と思われるかもしれないけど、僕にとっては十分な労働だった


「授業で挙手なんてするものじゃないな。まして、僕のような教師と教育実習生が嫌いな人間がする事じゃない」


 北南高校に入学してからの話に限定するけど、僕は教育実習生の研究授業でもミニ授業でも挙手をした事なんて一度たりともない


「やっぱり水沢先生は僕にとって特別な存在みたいだね」


 慣れない事をして改めて実感する。水沢葵衣という女性は僕にとって特別な存在だと。だけど、それと同時に教育実習中は水沢先生の想いに答える事も伝える事もしてはいけない事だっていう事を再認識する


「今年はいいとして、来年の教育実習生はどうしてやろうか……?」


 今年の教育実習生は水沢先生と羽山先生。あとは打ち切りになったけど、1人いた。家きりになったバカはいいとして、水沢先生と羽山先生の指導案を手伝う事になるとは実習生が来る前までは思わなかった


「来年は絶対に教育実習生とも教師とも関わらない」


 昼食を食べながら心に誓う。来年の教育実習生とは絶対に関わらない。そもそもが、今、教育実習生と関わっているのも間違っているんだ。来年の実習生と関わらないのは僕本来の姿で何もおかしい事なんてない


「そうと決まれば昼寝でもしよう。午後の授業の事なんて知った事ではない」


 今日は朝の3時間頑張ったし、午後はサボってもいいよね?まぁ、今年に限って言えば教師に僕を咎める資格はない。咎めたければ教師の仕事をしてからにしてほしいよ……


「岩崎、授業をサボるのは感心しないな」


 昼寝をしようと目を閉じ意識を寝る事に集中していたら真理姉さんに咎められた。この人は自分が今までしてきた事や僕にさせた事を覚えていてサボるなと言っているのかな?


「小谷先生、僕はこの学校の職務怠慢な教師の代わりに2人の教育実習生の面倒を見てきたんですよ?そんな職務怠慢な教師に授業をサボるなって言う資格があると思いますか?」


 ちゃんと仕事をしているならともかく、仕事もしてない教師にサボるなと言う資格なんてない


「ぐっ……!そ、それはないが、教師としては授業をサボっている生徒を指導しないわけにはいかない」


 教師としてね……一応は教師であるという自覚はあるのか。でも、口で教師というだけならどんな無能教師でもできる


「生徒に教育実習生を押し付けて碌に指導もせずに職員室で何しているかわからない教師に言われたくありませんよ。僕は昼寝をするんですから邪魔しないでください。もっとも、文句を言いたければちゃんと教師として実習生を指導するくらいはしてからにしてください」


 文句を言ってくる真理姉さんだけど、この人の収入で生活できているようなものだから強くは言わないけど


「す、すまない……」


 自分のしてきた事やさせてきた事を指摘されて謝るところは素直に評価するに値するけど、仕事をしていないんじゃなぁ……


「小谷先生は次の授業に向かわなくてよろしいんですか?」


 僕はサボるからいいけど、真理姉さんはそうじゃない。次の時間がある。早めに職員室に戻るなり教室に向かうなりしてほしい


「くっ、今日のところは引き下がるけど、次はこうはいかないからな!」


 去り際に捨て台詞を残して行こうとするけど、そんな戯言は通用しない。僕にはいざという時の作戦がある


「別にいいですよ。北南高校の教育方針や教育に息苦しさを感じたら僕は学校を辞めて海外か他行に転入するだけですから」


 真理姉さんにとって1番言ってはいけない事。つまり、僕が家を出て行く発言か僕がこの学校から出て行く発言をして真理姉さんの動きを封じる


「…………なるべく授業をサボらないように」


 思うところがあったのか、真理姉さんはあまり多くを語らずに出て行ってしまった。


「僕の気分によりますね」


 授業に出るかどうかは僕の気分による。いつまでも退屈な授業をしているようなら僕はサボり続けるし、少しでも変化しているのなら出てもいいと思う


「やっとうるさいのがいなくなった……」


 うるさい教師がいなくなってホッとする。職務怠慢な教師の分際で僕に意見するとは……人のふり見て我がふりを直さないのか?この学校の教師は


「午後の授業時間全部使って寝よう」


 午後の授業は何だったかな?まぁ、別に何でもいいか。これから寝るんだし


「ん~!よく寝た~」


 気が付けば夕暮れになっており、時間を確認しなくても今日の授業が全て終わっている事は理解できる


「さて、面倒な教師に絡まれる前に帰るかな」


 授業が終わっているのであれば僕が学校にいる理由はない。特に用事もないし、帰ろう


「ん?手紙?」


 僕の下駄箱に1通の手紙が入っていた。“岩崎君へ”と書いてあるって事は僕に宛てた手紙なんだろうけど、一体誰が?どうして?ドッキリかな?まぁ、いいや、教室に戻りながら読んでも僕以外誰も見ないだろうし


 “放課後教室で待ってます”


 手紙には一言だけ教室で待っていると書いてあった。これじゃ僕が授業をサボって寝る事を計算に入れてるみたいじゃないか


「手紙の主が誰であろうともカバンを取りに行かないと帰れないから教室には行くんだけどね」


 手紙の主はドジなんじゃないかな?と思う。僕のカバンがあって僕がいない。考えられるのは保健室に行っているかサボっているかの二択でカバンを置いて帰るだなんて事はありえない


「さて、手紙の主は誰かな?」


 自分の教室の周辺で手紙の主について考えてみる。文字の感じからして女性である事は確かだけど、待っている人が女性とは限らない。女子に頼んで男子が書かせたのかもしれないし、僕の周りに女性は真理姉さんと水沢先生と理沙と羽山先生しかいない。そこから下駄箱に手紙を入れる人の心当たりはない


「ついに来てしまったか……」


 教室のドアの前で一呼吸おく。カバンを取りに行くだけだったら何も考える事ことなくドアを開けるけど。今回は待っている旨の手紙が入っていた。手紙の主を意識はしていないけど、それでも緊張する


「待っていたよ。光晃君」


 教室のドアを開け、出迎えてくれたのは水沢先生だった。と、いう事は手紙の主は水沢先生?


「待っていた?水沢先生が?」

「うん。手紙読んでくれたよね?」

「手紙って下駄箱に入っていたやつですか?」

「うん!」


 手紙の主は水沢先生で確定。でも、僕に何の用だろう?教育実習生のクセして授業をサボった僕に説教でもするのかな?


「今更手紙を出してまで教室で待ってなくてもいいでしょ。僕のカバンがある時点で僕が下校する時は教室に戻ってくるんですから、そのタイミングを見計らって教室に入ってくればいいだけの話でしょ?」


 わざわざ僕に手紙なんて出さなくてもタイミングを見て入ってくればいいのに、どうして手紙なんか出したんだろう?


「私、男の子に手紙なんて出した事なかったから1回やってみたかったんだよ」

「そうですか……」


 僕に手紙を出したのは長年の夢を叶えたかったという水沢先生の自己満足だった。誰に迷惑を掛けるわけじゃないから別にいいんだけどさ


「うん!光晃君のおかけで夢が叶ったよ!」

「それはよかったですね」


 頑張って教師になれたとかだったらおめでとうの1つでも言ってあげられるけど、下駄箱に手紙を入れる夢が叶ったって言われても返す言葉に困る。


「うん!それでね?光晃君にお話しがあるの」


 笑顔から真顔に変わる水沢先生。話?何だろう?今日の授業の事かな?


「何ですか?」


 結論を急ぐのはよくない。まずは水沢先生の話を聞いてからどう返すかを考える。


「岩崎光晃君!好きです!私と付き合ってください!」


 授業の話じゃなくて告白だとは思わなかったよ……その話は実習終了後にするって約束じゃなかったっけ?


「お断りします」


 考えるまでもない。教育実習生に告白されても僕は受け入れる気はない


「えっ……?ど、どうして?」


 動揺し、泣きそうになりつつも持ちこたえた水沢先生が尋ねてくる。どうして?そんなの決まっているじゃないか


「どうして?学校にバレたらなんて言い訳するんですか?」

「そ、それは……考えてない」


 水沢先生が同級生、後輩、先輩だったら付き合っていたのかもしれないけど、この人は教育実習生で資格はないけど、扱いとしては教師だ。そんな人と付き合ったらバレた時に困る


「僕は水沢先生の実習が終わった時に答えを出すって言いましたよね?約束忘れたわけじゃないでしょ?」


 水沢先生が約束を忘れるとは思えない。生徒とゲームでもして負けたから罰ゲームとか?


「うん……でも……」

「でも何ですか?」

「でも……我慢できなかったんだもん!!」

「何をですか?」

「光晃君を好きな気持ちだよ!!」


 我慢できないから手紙まで出し、教室で待ち伏せして告白って……女性の考える事はよくわからない。


「まぁ、今の水沢先生は目の前にエサがあってお預け状態の犬と同じような感じですからわからなくもないですが……」


 それにしたって、20歳過ぎた大人が実習終わりまで我慢できないだなんて精神的に幼すぎじゃないかな?


「で、でしょ?もう約束とかいいから私と付き合ってよ!」


 約束の事はもういいから付き合ってほしいという水沢先生。僕だってできる事ならそうしたいけど、水沢先生の実習を何事もなく終わらせる為にここは心を鬼にして言う


「嫌ですよ。僕だってできる事ならそうしたいですけどね」

「お互いに好き同士ならいいじゃん!お願いだから私の想いに答えてよぉ……」


 ついに本気で泣き出してしまった水沢先生。だけど、どんなに泣かれても僕は教育実習生と付き合う気はない


「今、付き合いだしたとして問題が起こらないとも限りません。本来ならいけない事ではありますが、水沢先生が誰にも言わないって約束できるなら特別にあるものを渡したいと思います」


 本当ならいけない事だし、それこそ学校にバレたら何を言われるかわかったものじゃない。だけど、水沢先生の想いに答えられない代わりに何かを渡す事くらいは許されるはず


「あるもの?」

「ええ、水沢先生にとってはとってもいいものです。ですが、誰にも言わない事が条件です」

「言わない!誰にも言わないよ!」


 渡すものを言う前に水沢先生は誰にも言わないと言った。この人の場合は何を渡されたとしても好きな人に貰ったものならゴミでも大事にしそうで怖い


「わかりました」


 僕は手帳から白紙のページを切り取りメールアドレスと番号を書いた紙を渡す。


「なにこれ?」

「僕の携帯番号とメールアドレスです。今は付き合えませんし、これだって学校にバレたら教師と生徒がそんな関係になっていいと思っているのか!って言われるかもしれません。ですので、これは僕と水沢先生。あなただけの秘密です」

「うん!あ、そうだ!」


 水沢先生は僕と同じように手帳を取り出し、白紙のページを切り取り何かを書き込んだ紙を僕に渡す


「何ですか?これは」

「私の携帯番号とメールアドレスだよ!」


 夕暮れ時の教室で初めて僕は水沢葵衣と共通の秘密を作った。学校にバレてはいけない秘密。教育実習初日の僕がこの事を知ったらなんて言うだろう?ひょっとしたら鼻で笑われるかもしれない。罵倒されるかもしれない。でも、今ならハッキリ言える。教育実習生は大嫌いだけど、水沢葵衣という1人の女性は好きだと

今回は光晃と葵衣が秘密を作る話でした

葵衣の告白には答えられませんし、その時ではありませんが、光晃は葵衣と連絡先を交換してしまいました・・・・

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました

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