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【過去編6】僕は初めて学校をサボる

今回は光晃が初めて学校をサボる話です

今回も前回に引き続きテーマは『たかが一回、されど一回』です

では、どうぞ

「行ってきます」


 僕はこの日、教育実習生に絡まれるのと担任に“忙しい”の一言で追い返された事に嫌気が差しある事を決断した。


「はい、行ってらっしゃい」


 家を出る僕を何の違和感もなく送り出す母は僕がする事を全く知らない。母どころか父も真理姉さんもこの時はまだ知らなかったと思う。そりゃ誰にも言ってないし、学校であった事なんて誰にも言ってないから当たり前と言ったら当たり前の事ではあるんだけどね


「お父さんたちにバレたら叱られるだろうけど、なんかこういう事ってワクワクする」


 僕は学校とは逆の道を歩いていた。そう、僕は小学校2年生にして初めて学校をサボる決断をした。高校や中学と違って全ての教科を担任が教えているので嫌いな先生の教科だけサボる事ができない小学校においては学校自体をサボるしか教育実習生からも担任からも逃れる術はなかった。だから、僕は学校をサボった


「真理お姉ちゃんは叱らないと思うけど、お父さんたちは怒るだろうなぁ……」


 今でこそ真理姉さんは教師の仕事をしているけど、この頃の真理姉さんは高校生だからサボっても怒らなかった。怒るとしたら僕が悪い事をした時くらいだけど、悪い事をした記憶はほとんどない


「誰かに見つかったらどうしよう……」


 サボるのはいいとして、問題はランドセルを背負った子供が平日の昼間にウロウロしてたら警察官じゃなくても不審に思い、声を掛けてくる事だった。そして、その後で交番か警察署に連れて行かれ学校か家に連絡される。そうすればバレる。この時の僕は必死に考えた。どうやったら他の人に見つからずに1日を過ごせるかを


「他の人に見つからない方法……う~ん……」


 他の人に見つからない方法なんていくらでもある。例えば、橋の下で1日過ごすとか、山が近いなら山に籠るとか。でも、僕の住んでいる街に橋はたくさんあっても山はない。1番無難なのは橋の下で過ごす事なんだけど、それでも人に見つかる可能性がある。だからと言って空き家に忍び込むわけにもいかない。空き家は窓や人が入れそうな場所には板が張られているから。そんな僕が思いついた方法は─────────


「そうだ!家に帰ろう!」


 家に帰るという方法だ。幸いな事に僕の両親は共働きで真理姉さんは高校に行っている。つまり、平日の昼間は家に誰もいない。僕にとってはサボるのに打ってつけの場所というわけだ。まさか担任も両親も学校サボって家にいるとは思わないだろう。そう思った僕は来た道を戻った。


「僕って天才か?」


 学校をサボっている時点で天才ではないけど、小学生というのは単純なもので人が思いつかない事をしたら何となく天才だと勘違いしてしまう。ぶっちゃけ別の場所で学校をサボるって選択肢が浮かばなかっただけなんだけど。この頃は考えもしなかったけど、家に帰る道中で人に見つかっても『忘れ物をしたから家に取りに戻る』という言い訳ができる。今思えば家というのはサボるのに最適な場所だ


「お父さんとお母さん、それに真理お姉ちゃんに見つからないようにしないと」


 今でもサボる時には人に見つからないよう細心の注意を払っているけど、初めて学校をサボる僕はきっと今以上に見つからないように注意していたと思う。何て言うか、スパイ気分ってやつ?それに、自分の家の近所だと真理姉さんはもちろん、両親に見つかる可能性がグッと高くなるし


「よし!お父さんもお母さんも真理お姉ちゃんもいない!」


 当たり前だけど、高校生の真理姉さんは僕よりも早く家を出たし、父もそうだ。母の出勤時間は知らないけど、多分、僕が家を出てすぐに出勤してたと思う。そんな真理姉さん達が家にいるだなんて事はあり得ない。余程の事がない限り。この頃の僕はそんな当たり前の事に気が付かなかった。帰ると真理姉さんや両親がいないことが当たり前になっていたから。それに、僕が登校する時には真理姉さんと父は家にいないのが当たり前だったし、いたとして母だけだったし


「た、ただいま~……」


 それでも家に誰かいないかと警戒しながら入る。


「へ、返事はない、誰もいない」


 返事が返ってこない事で僕は家に誰もいない事を確信した。本当に初めて学校をサボるのはドキドキするし、ワクワクする。例えが悪いけど、優等生が万引きする気持ちが今なら少しだけ解るような気がする


「よし!今日1日好きな事しよう!!あっ、その前に鍵を閉めなきゃ!」


 教育実習生から解放されたという解放感からはしゃいでしまったけど、戸締りは忘れない。今なら学校をサボっても解放感を得る事なんてない。だって、学校をサボった理由を説明できるから。それに、サボった原因を突き詰めると空しくなるから。でも、小学生の頃は違う。どんな小さな事でもやり切ったという達成感があった。学校をサボる事にもね


「鍵も閉めた!何しよっかな?ゲーム?それとも、本を読む?う~ん、迷うなぁ~」


 新しい事を始めるのってどんな事でも新鮮な感じがするものでこの時の僕は年相応に浮かれていた。しかし、そんな時間も長くはなかった。なぜなら、玄関に置いてある電話が突然鳴ったからだ。


「────────!?」


 電話が鳴った事で僕は驚いた。本来なら学校に行っている時間に家にいる後ろめたさはなかったし、この頃は家に掛かってくる電話は僕以外の誰かが取っていた。それで僕へ掛かってきたのは取り次いでもらっていたし、遊ぶ約束は学校でして家に帰りそのまま荷物を置いて遊びに行ってた。だから電話は携帯を買ってもらうまではほとんどした事がない


「だ、誰だろう……お母さんかな……?それとも、お父さん?いや、真理お姉ちゃん?」


 今思えば母も父も真理姉さんも家に誰もいない事を知っているから電話なんてしてこないんだから怯える事なんてなかったと思う。少ししてから電話は鳴り止んだ。


「と、止まった……でも、誰からだったんだろう?」


 夜じゃなくても電話が突然鳴ったら怖い。特に後ろめたい事をしている時は。でも、後に学校や授業をサボる事が当たり前になってきてそれもなくなったんだけどね


「さて、ゲームゲームっと」


 電話が鳴る前は読書かゲームかでの二択だった。でも、いきなり電話が鳴った事に対しての恐怖心からか即決でゲームをする事にした。電話が鳴ってもゲームの音で聞こえなくなる。そう思ったからだ


「お腹空いた……」


 しばらくゲームをしていたけど、さすがに空腹には勝てない。僕はリビングからキッチンに移動し、何か食べられるものはないかと戸棚を物色した


「な、何もない……」


 戸棚を物色したけど何もなかった。今の僕なら戸棚に何もなければ買い出しに行く。だけど、当時の僕はまだ小学校2年生。買い出しメモとお金を渡されてないから買い出しになんて行けるはずがなかった。


「た、棚に何もないだけで冷蔵庫には何かあるかもしれない!」


 諦めきれなかった僕は戸棚の物色を諦め、物色先を戸棚から冷蔵庫に移した。


「あった……冷ご飯……」


 不幸中の幸いか、冷蔵庫には冷ご飯があった。


「つ、冷たい……」


 冷蔵行の中にあったんだから冷たくて当たり前だ。それでも食べ物を確保した僕は次の行動に出る


「どうにかして温めないと。でも、火を使うのは危ないし……」


 冷ご飯をどうにかして温めたい。だけど、子供が火を使って火事になったら大変だって事くらいは解った。火を使うのが危ないのならどうしたらいい?答えは簡単だった


「火を使うのが危ないならレンジを使えばいいんだ」


 火を使うのが危ないならレンジを使えばいい。レンジも火事にならないというわけじゃない。だけど、火を使うよりは火事になるリスクはグッと減ると思った。


「れ、レンジが僕でも届く場所にあってよかった」


 母の趣味はお菓子作りだったのでオーブンとかは高い場所にあった。使う頻度が多かったから。反対に使う頻度が少なかったレンジは僕でも届く位置にあった。仮に高い位置にあっても椅子を使えばいい。


「レンジを見つけたのはいいけど、どれくらいチンすればいいのかな?」


 レンジを見つけたのはいいとして、問題はその冷ご飯を加熱する時間だった。料理が趣味じゃない僕は冷ご飯を温める時、どれくらい加熱したらいいかなんて知らなかった。


「うーん……5分くらいかな?まぁいいや!5分にしよう!」


 僕は冷ご飯をレンジに入れ、5分加熱した。ちなみに、問題なくご飯は食べられたけど、5分も加熱したせいか取り出す時と食べる時にすごく熱くて食べづらかった。


「ゲームもたくさんやると飽きる……」


 本来なら学校で授業を受けている時間をゲームにつぎ込んだ僕はやる事がなくなってしまった。今でこそネトゲとかスマホアプリゲームとかあるけど、当時はゲーム機にソフトを入れてゲームするのが当たり前だったし、ソフトを入れて遊ぶゲームも今みたいにネット回線を通じて人とできるものじゃなかった。特にRPGゲームはストーリーをクリアしてしまえばほぼやる事はない


「ゲームも飽きたし、本でも読もう」


 学校に行っている時なら確実に1人で本を読んでいたら教育実習生に絡まれる。家にいたらそんな実習生なんていないから絡まれる心配はない。本を読む事が好きな僕にとっては家とは最適な空間だった。学校に行くのがバカらしくなるくらい


『光晃~、ただいま~』


 真理姉さんの声で僕は本を読む事を止めた。1人でいる時は楽しいとしか思わなかったけど、真理姉さんが帰ってきた事で問題が発生した。この頃の僕は気が付かなかったけど、電話って留守電機能があるんだよなぁ……


「おかえり、真理お姉ちゃん」

「うん、ただいま。ところで光晃、留守電入ってたみたいだけど、どっかから電話あったの?」

「るすでん?何それ?」

「お家の人がいない時に伝えたい事を残しておく事だよ」


 真理姉さんのよくわからない説明はともかく、僕はそんなものが存在するとは思わなかった。今じゃ絶対にしないミスだね


「そうなんだ。でも、僕は知らないよ」


 僕はこの日、初めて嘘を吐いた。僕が大嫌いな教師や実習生がよくする事だ……



今回は光晃が初めて学校をサボる話でした

今回も前回に引き続きテーマは『たかが一回、されど一回』でした。しつこいと思った方いらっしゃると思います。ですが、前回の話で光晃の担任がちゃんと話を聞いていれば多分、光晃は学校をサボるという決断をしなかったでしょう。それ以前に1人でいる事を認められない実習生にも問題があるような気がしますが……

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました

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