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梔子のなみだ  作者: 水無月
王女時代
23/180

【閑話】アーサーベルトとヴェルナーの1日

日間2位有難うございます!

沢山の人に読んでいただけで驚いております。

御礼小話と言っては何ですが感謝を込めて


「そういえばヴェルナー、

 殿下の誕生日には何を用意するんだ?」


「!!」







******************





互いにイルミナを教える立場同士、アーサーベルトとヴェルナーはよく顔を合わせていた。

しかし理由はそれだけではない。

二人は、歳が近く、なおかつ同じような時期に城に勤め始めているのだ。


しかし、今でこそ普通に話してはいるが、出会った当初の二人は険悪そのものだった。

険悪というより、平民出のアーサーベルトがヴェルナーにしょっちゅう絡んでいたのだ。

それにヴェルナーが絶対零度の視線で対応するというなんとも周囲にも被害を及ぼしかねない関係であった。


そもそも、一番初期のころはお互いがお互いの名を聞いたことがあるくらいでしかなかった。

文官候補と武官候補。

殆ど会うことがないゆえに、互いの噂のみを知っているという状態だった。



訓練生時代、アーサーベルトはかなり早い段階からその才能を開花させていた。

剣を振るわせれば教官ですら唸るほどの強さを持つアーサーベルトだったが、その性格は至って普通で、争いごとを好まない性質であった。

自身の力量にも頓着せず、ただひたすらに訓練をこなすだけだった。

それに嫉妬した貴族というものはいるもので。

アーサーベルトは自身の出身を、貴族に馬鹿にされ続けていた。


ヴェルナーは貴族出身だったが、だからと言って平民出を馬鹿にするようなことはなかった。

そのことは、既に有名であった。

そして、ヴェルナーの性格は見た目以上にきつく、嫉妬した他の貴族が言いがかりのようなものをすれば真っ向から立ち向かって叩きのめしていたのだ。


そんなある日、訓練中のアーサーベルトに突っかかった貴族出身の男がいた。

黙々と素振りをするアーサーベルトにひたすら聞くに堪えない言葉を並べ立て、お前の立場は一生下なのだと声高らかに言っていたのだ。


そんな場にたまたま居合わせたのはヴェルナーだった。

彼はこの頃から既に孤高の存在となっており、同じ貴族という彼らの行動が非常に気に障った。

国を良くするという目的の為にこの場にいるのに、彼らの言動はあまりに幼く、同じ貴族という括りにまとめられる事にも非常に腹立たしかったのである。


結果、ヴェルナーはアーサーベルトを助ける形となった。

それが、ヴェルナーが貴族たちに罵詈雑言を吐いて彼らがみっともなく逃げ出したものだとしても。


そんなヴェルナーに、アーサーベルトは付きまとった。

助けられたから、というのは理由ではない。

そう言い切って。

いくら邪険にされようとも、アーサーベルトは諦めることなくヴェルナーに構い続けた。


そして、助けたつもりではなかったヴェルナーも、少しずつではあるものの、アーサーベルトに絆されていったのだ。

言葉は悪いままだが、ヴェルナーはヴェルナーなりにアーサーベルトを認めた。


そうして二人は時に飲み交わしながら、友情を深めていったのだ。

そして二人はめきめきと頭角を現し、その代の代表する文官と武官になった。

それらは彼らに自信をつけさせ、何事にも動じることはないと思わせてしまうほどであった。


因みに、その高くなっていた彼らの鼻を叩き折ったのが、たまたま視察に来ていた辺境伯であるグラン・ライゼルトだ。


それはいまだに彼らの心に深く根付いており、もう二度と高慢にはならないと固く誓わせるほどの物である。





******************





「――――、アーサー、お前、何か買うつもりなのか」


ヴェルナーは、射殺しそうな視線でアーサーベルトを見やる。

アーサーベルトは、なぜ自分がそのような視線で睨まれねばならないのだろうと考えながら苦笑する。

そして彼が非常に不器用なのを思い出すのだ。


仕事だとあんなに隙無く行うくせに、ヴェルナーという男は意外なまでに不器用であった。

女の話をした日には、真っ赤になって怒りながら酒を飲むのだ。


きっと今もそうなのだろう。

自分が考えてもいなかったことをアーサーベルトに指摘され、内心では怒りまくっていることだろう。

アーサーベルトは、そんな戦友を気に入っていた。

何でもかんでもスマートに出来る人間なんぞ、つまらない。

一部の人間は除くが、長い時を付き合うのであれば面白い人間でないと無理だ。

だからこそ、アーサーベルトはヴェルナーという人を気に入っている。


「あぁ、何か買おうかと思っているんだがな。

 どうだ、決まってないなら今から町へ行かないか」


普段の彼であれば、男二人で街歩きなど気色が悪いと一蹴したであろう。

しかし今の彼はそれを言えない立場にいた。


「・・・あと、三十分ほどで・・・」


ギリギリと、今にも歯ぎしりが聞こえてきそうな表情に、アーサーベルトは笑いそうになる。


「・・・っく、わかった、

 なら三十分後に城門前で」


そう言い、アーサーベルトは踵を返す。

ヴェルナーのことだ。

きっと鬼神のような表情で仕事に目途をつけるだろう。


アーサーベルトは今でも忘れられない。

初めて会話をしたとき、ヴェルナーが言った言葉を。


『出自如きで決めつけるなんて本当に阿呆ですね。

 第一あなたもあなたです。

 何言われっぱなしでいるのですか、口がないのですか。

 そんなんで国を守ろうというのですか』


勿論彼は、この前に貴族たちにもっと酷い暴言を吐いている。

しかし、アーサーベルトには彼の優しさのように見えた。










そしてこの後二人は城下町へと足を運ぶのだが。


「待ちなさい、アーサー。

 あなたは何を選ぶつもりですか」


「え?

 いや、殿下に面白そうなものでも、と」


「馬鹿ですか!!

 その気色悪い配色の人形をさっさと置きなさい!!」


「ダメか・・・?

 ならこれは?」


「!!!!

 あなたという人は!!

 殿下は女の子ですよ!?

 なんで蛇のおもちゃなんてものをあげようとしているのですか!!」


「じゃーお前は何にするんだよ?」


「・・・・・・・・」


「ちょ、まて、花束!?

 しかも薔薇!?

 いやいや、プロポーズか!?」


「女の子は花が好きでしょう!!

 少なくともあなたよりはマシな選択だと思いますが!!」





後日、城で有名な二人が明らかに似合わないものをもって喧嘩をしているというのがたくさんの人に目撃され、恋仲なのだろうかという恐ろしい噂が流れた。



この後、一部始終を見ていたハザに止められます。

そして年頃の女の子が気に入りそうなものというものを数時間かけて説明され、決めたのがあれです。


男ばかりの職場だったり、仕事一筋人間だと情報に偏りが出てしまったようです。

一番の功績者のハザは、ある意味とばっちりです!


イルミナもちろんこのことを知りません!!

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