第三話 放課後の課外事業
放課後の課外事業
俺の横を転入してきたばかりの女の子、相原三毛菜が歩く。
はあ、なんで俺がこんなことをしなくちゃいけないんだ。
俺は今、転入してきたばかりの三毛菜を案内していることろだった。
「なあ、一つ聞いていいか?」
「何?」
うわ、なんでそんな冷たいの? 何? そんなに俺に話しかけられるのが嫌なわけ?
「なんで、お国のトップの遣いがこんな学園にいるんだよ」
それでも話しかける俺なんだが、答えは案外あっさりと帰ってきた。
「簡単な話だよ。私だって人だし、学生だし、国の命令ばっかり聞いていられないだけ。それに、勉強もしないと将来が不安だし」
へぇ、お国のトップの遣いでも辞めさせられることとかあるのか?
「それに、これは任務でもあるんだよ」
はい?
任務? この学園に何かあるのか?
疑問で首を捻っていると、三毛菜は俺を指差し言う。
「あなたが、私たちの敵なのかどうかを見極めに来たの。それが私の任務」
はい?
再び、疑問が生まれる。
俺を見極める? 敵? 何のことですか?
「何のことか、さっぱりわからないんだが」
「あんただって、持ってるんでしょ? インフィニティーのカードを」
オット、まさかこのタイミングで聞かれるとは。
そう、何を隠そうこの俺もインフィニティーのカードを持っているのだ。
「ああ、持ってるけど。それが?」
「わかってないの? インフィニティーのカードは世界を変えることだってできるんだよ? そんなカードを名もしれない人物が持っていたら国にとっては恐怖なの」
なーるほど。
で?
「だからって、見極めるってのはどうかと思うぜ?」
「分かってる。わかってるんだけど、上がどうしてもそれを許さなくて。だから私が来たんだよ」
そう言って、三毛菜はカードを窓に投げる。
あれは戦場召喚カードだ。ということは、
「まさか、戦うつもりか?」
「ええ、それが私の仕事だから」
にらみ合う俺たち。だが、
「まあ、断るだろうな。この戦いは」
「……国に潰されたいの?」
おおう! 怖いこと言ってくれるぜ。
だけどまあ、
「それも悪くないな。だが、簡単には潰れないぜ。絶対、この世をぐちゃぐちゃにしてから潰れてやる」
俺は二ヤッと笑って言う。
最強の力? 国の敵? どうでもいい。そんなものは心底どうでもいい。
俺は俺だ。国に変えられるような存在じゃない。
「俺は、俺がダメだと思ったことを全面的に否定する。その為に力が必要なら、手に入れるし、なくても戦う」
それが俺だ。
誰にだって俺を左右させない。自分を突き通すのが自己中だというなら、俺は喜んで自己中になってやる。
俺の言葉を聞いて、三毛菜が笑っていた。
「なんだよ」
「あんたってほんとおかしい奴だよね。最強とも言われる力を持っているのにそれを誇ろうともしないし。何より、私から逃げた」
逃げたんじゃない。戦わなかったんだ。
「なんで、そんなに自由なの?」
「なら聞くが、なんでこんなのが自由なんだ?」
「え?」
俺の質問がそんなに驚きか?
だって、俺はこんな生活に自由なんてもんは一瞬も感じたことはない。
「俺は自由な世界なんてものに憧れを持ったことも、欲しいと思ったこともないが、これだけは言える。世界にルールが存在する限り、本当の自由なんて手に入らない」
世界にはルールが必要だ。そう言う奴は多い。だが、そうじゃない。
「で、でも、ルールがあるから人は平和と自由を均等に得られるんだよ?」
「平和と自由を均等? そんなものは無理なんだ。平和は金をたくさん持っている奴ができて、自由は金を有り余している奴ができるものだ。貧乏人はいつだって苦しんで働かなくちゃいけない。それが平等だと本当に言えるのか? ルールがあるから、そんなことが起こる。全ての人間に枷を付けたところで、最初から優位な位置にいるやつと、ギリギリな位置にいるやつとでは全然違うんだよ」
相当ひねくれていると、自分でもわかっている。
だが、だがしかし、俺は言いたいんだ。間違っているのは俺たちじゃなく、世界だということを。
「そう、まあいいよ。でも絶対、私とは戦ってもらうんだからね。それが私の仕事だから」
それだけ言い残し、三毛奈はどこかに行ってしまった。
あれ? もしかして、案内必要なかった?
なんだよ、ならもっと早くに行ってくれよ。俺は帰るぞ。
帰り際、不審な人影を見た。
情報処理室に二つの影、それは朝俺に喧嘩を売ってきたやつらだった。
「おい。何してんだ?」
「……あ? てめえには関係ないだろうが、去れよ」
鋭く、馬鹿らしい視線が俺を写す。
ああ、そうですか。そうですよね、帰りますよ。
俺はその場を後にした。
あー、マジ疲れた。慣れないことはするもんじゃないな。