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第一話 劣等生な一日

劣等生な一日


劣等生。それは学年で、学園で一番成績が悪い奴のことを言う。

そして、俺、西鶴政信もまたその劣等生であった。

だが、ただの劣等生ではない。

「見て見て、あれが噂の天才劣等生よ」

「あー、ホントだ」

女子二人が俺を指差し、言う。その声には少し笑いが入っていた。

そう、『天才劣等生』それが俺の呼び名だった。

おかしいと思うだろう?

俺もここがただの学園だったらそう思ったよ。

だが、残念なことにここはただの学園ではない。

俺はポケットに入っている数枚のカードを触る。

「チッ……」

小さく舌打ちしたのはつまらないからだ。

ここは小鳥遊学園。

鏡の中にあるものが見える超常の存在たちが学ぶ学び舎だ。

鏡獣。それは鏡の中に住まう獣。

例えば、夜、一人で歩いているとき後ろに誰かいたような気持ちになったことはないだろうか。

それは全てこいつらがやっていることだ。

そして、それは普段人には見えない。それらが見えるのは俺ら、鏡封カードを持っている者のみ。

鏡摩カードとはその名のとおり、鏡獣を封印するためのカードだ。

はぁ、説明疲れた。

明日から頑張ろう。

そんなことをしていると、俺の教室に着いた。

入ろうとした直後、

「テメェがいけないだろうが!!」

「あぁ? テメェが馬鹿なことしてんのがいけないんだろ!?」

男子の喧嘩が始まっていた。

はぁ。

俺は小さく短いため息を着く。

いつものことだ。そう、いつものこと。いつものことなんだが……。

「馬鹿らしい……」

「「あぁ!?」」

おっと、聞こえていたらしい。

だがまあいいだろう。関係ないし。

俺が席に着くと、男二人が目の前に立つ。

「どういうことだよ、あぁ?」

「お前、天才劣等生とか呼ばれてるからって調子ずいてんじゃねぇぞ、あぁ?」

その、あぁ? をやめてほしい。

馬鹿だろ? お前ら馬鹿だろ? やーい、この馬鹿どもが! ……何してんだろ、俺

俺は気を通り直して、俺はポケットからカードを一枚見せる。

「これ、なにかわかる?」

「な、なんだよ。俺たちとやろうってのか?」

少しビクったように男は言う。

「違うよ。注目すべきはここ」

俺はカードのレアリティを指差す。

そこには三本の剣が描かれていた。

「三本の剣……れ、レジェンダリー!?」

俺が示したカードのレアリティは最上位のレジェンダリーの部類のものだった。

「だ、だからなんだよ! やるのか? やらないのか!?」

どうやら、この男はまだ分かっていないらしい。

「はぁ、わかったよ」

俺はもう一枚のカードをガラスに向けて投げる。

すると、カードがガラスの中に飲み込まれていき空間が出来上がる。

「はは、俺たちを馬鹿にしたこと後悔させてやるぜ!」

そう言って入っていく男たち。

「我もお供しようか? 貴様には借りがあるからな」

俺の背中に抱きつきそう言うのは笹原物化。

高一とは思えぬ小さな体型で、自慢の褐色を際立たせる改造制服を着こなす少女だ。

「いや、あれくらいなんとかなるだろう。それに俺、劣等生だしな」

俺はニコッと笑ってから空間の中に入っていく。

物化はかわいそうなやつを見る目で手を振ってきた。

擬似戦場。ここは主に生徒が自由に戦闘をするためのものなのだが、そのせいで怪我人が出ることが多々あるらしい。

その真ん中に立って俺は周囲を見回す。

だが、目的の人物たちは見つからない。

どうやら、もうゲームは始まっているらしい。

「なんでこう、隠れて闇討を仕掛けるようなつまらない手を使うんだ?」

誰に言うでもなく、俺はカードを一枚投げる。

そして、

「ジェネレート、大竜巻の左籠手」

俺の左手に青い籠手が装着される。

それを前に突き出し、集中する。

「まあ、普通に考えて吹き飛ばされるとは思わないわな」

それだけ言って、籠手から大竜巻を召喚する。

大竜巻はあたりの物体を全て飲み込んでいき、十秒後には戦場に隠れるところなどなくなっていた。

「ありゃ? もしかして、あいつらも飲み込んじゃったか?」

アホそうな声を上げて、俺は辺りを見回す。

やはり、誰もいない。

ふむ、どういうことだ?

「あんたが探してるやつらは私が先にロストしといたよ」

背後から、少女の声が聞こえる。

振り向くと、そこには赤みがかった黒髪に、対照的な真っ白な肌をした中学生がいた。

「……中学生?」

「違うもん! 高校生だもん!!」

涙目で言う中学……高校生。

「へ? あ、中学……高校生だったんだ」

「~~~~!! ふざけないで! どこからどう見ても高校生でしょ!」

いや、どこからどう見ても中学生です。はい。ありがとうございました。

「……で? 何の用ですか? ここは高等部ですよ?」

あ、こいつは高校生か。

「~~~~~~~~!!!!」

盛大な地団駄を踏み鳴らし、少女は怒りをぶつける。

おいおい。地面がかわいそうだと思わないのか? 俺は思わないけど。

俺はそこであの男たちがいないのならばここに居ることもないと気づき、退散を試みようとしたところ、

「どこ行くの?」

阻まれてしまった。

「いや、帰るんだけど」

「は? ダメだよ。あんたは私と戦うの」

………………………………………は?

何を言っているんでしょうか、この自称高校生は。

「なんで俺は戦わなくちゃいけないんだよ」

「なんでって……あんたがこの学園で一番強いから!」

どういう理由だよ! そして、横暴だよ!

「知らん! 俺は帰るぞ!」

「ダメ! ダメだってば!! あんたは私と戦うの!!」

少女に腕を掴まれそうになった瞬間、戦場にけむり玉が投入された。

「政信! 今だ!!」

どうやら物化の救援だったらしい。

俺は瞬時に空間から出て、中の様子を伺う。

煙で何も見えないが、声が聞こえた。

「絶対! ぜぇぇぇぇったい、戦うんだからぁぁぁぁああああ!!!!」

咳をしながらも叫ぶ声に俺は身震いが止まらなかった。

何だろう。このま逃れない運命フラグを回収した感覚は。

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