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メゾン☆アストロVS空き巣高校生  作者: SAND BATH
空き巣高校生VS超宇宙住民
39/112

クラブ、バイト、高校生

メゾン☆アストロVS空き巣高校生 39


 いったいどんな距離感で接すればいいのだろう。

 口調さえわからなかった。

 だから参太は透の話を聞きながら、彼の背中についていった。

「しかし奥津くんも盾伊さんと知り合いだったとは、想定外だったよ」

「盾伊さん?」

「ああ、眼鏡をかけた主任研究員さ。名前、知らなかったかな」

「あ、うん」

「そうか。なら奥津くんは有望株ということかな」

「有望株?」

「あの人に見込まれているということさ」

 しばらく歩くと、またひとり灰色のブレザーを着た学生と出会う。

「やあ」

 その学生をみて、参太は首をかしげた。男子のようでありながら、スカートをはいていた。

「まったくもって傷つくなあその反応わぁ。ま、慣れてるけどさ」

「ご、ごめん」

 黒髪ショートヘアの小柄ボーイッシュ少女。

「神居司。よろしく」

 司は名乗るとバレリーナのように一礼する。

「奥津くん。最初にいっておく」

 三人が互いに向かい合っているところで透は宣言した。

「俺たちは学生生活を送る傍ら、放課後はバイトしているんだ。君も同じバイト先で働いてもらうことになっている」

「それって、盾伊さんから?」

「ああ、その通り」

 透は言うなり踵を返すと、また通学路を歩き始めた。

 それからは終始無言で、結局はそのまま汎神高等学校に辿り着いた。



 夏休みを前にして期末テストが始まろうとしている。

 そんななか転校した参太は何事にも不安尽くしだったが、まず汎神高等学校という建物をみて大きな不安をおぼえた。

「なんじゃこりゃ」

「ハハッ、やっぱりそういう反応するよねえ」

 参太はぽかんと口をあけて校舎を見上げる。透は無言でスルーするが司は笑った。

 それは学校とはとうてい呼べない。神社そのものだった。

 校門は鳥居。参道をすすむと巨大な社があり、入り口に入ったとたん、普通の学校の内装が現れる。下駄箱に渡り廊下、階段……内側は神社要素なしだ。

「いったい何なんだろう、このギャップは」

 見た目を神社にしたのなら、内装もそれらしい和風建築にするべきだろうに。廊下は青い樹脂シートが敷かれているし、天井には蛍光灯がむき出しになっている。凝った意匠はどこにもなかった。

 参太は呆れながら透の背中についていく。

 いったん教務室に案内してくれた。

(そうか、俺は転校生か)

 ようやく実感が出てきたところで、透と司は参太をおいていく。

「それじゃあ奥津くん、また」

「まったねえー」

「ああ、ありがとう」

 透と司は肩を並べて階段をあがり、参太はすこし心細くなる。

(付き合ってんのかな、あの二人)

 そう直感したが、聞く勇気もなかった。

 参太は息を吸い込むと教務室のドアをノックする。



 校舎の内装と同じように、その学校はごくありふれた普通科の高校だった。

 進学校ではあるが、就職希望の学生もいてテストに臨む態度にもそれぞれ差がある。

 透は進学志望らしく一週間以内に迫った期末テストに警戒している様子だったが、司は就職を希望しているのか授業中は常に寝ている。

 高校二年。

 進路選択を迫られる学年だが、参太はどうにも心を決めきれなかった。

(こんなことしてる暇があったら……リミッター、かけ直したいのに)

 思うのはメゾン・アストロのことだ。

 いまこの瞬間にも住民の誰かがエイリアン化しているかも知れない。止めなければならない、その使命感はある。

 かといって授業をサボるのも気が引けた。

 透がいった“バイト”の時間を待つしかないのだろう。

(クソが)

 参太の席は透の背後で、司の隣だった。司は堂々と居眠りを決め込んでいる一方、前の透は常にペンを走らせている。教師の説明を一言一句ノートにメモしているのだろう。

 勉強をそれほどがんばろうとも思えないが、堂々と居眠りする度胸もなかった。

 参太は仕方なく、板書を書き写しはじめる。



 午後5時半をまわった。

 授業が終わり清掃当番の仕事をしてから、参太は玄関で待機する。

 最後の授業である五限目が終わった段階で透から指示があった。

『掃除当番があるのと、ちょっと生徒会の集りがあってね。司もちょっと用事があるから、すまないが6時までは待っていてくれないかな』

 転校したばかりで友だちもいない以上、することもなかった。

 放課後の教室は吹奏楽部の練習場所になってしまって居づらかったし、そもそも校舎の構造さえ頭に入っていない。

 ひとりさまよって校内探索でもして時間を潰そうと思った、そんなものは30分もあれば終わってしまう。

(転校生ってぼっちになるんだな)

 以前も友だちがいなかったが、それでもいいと思っていた。

 だがこうして新しい環境に置かれてみて味わうひとりぼっちというのはさすがに堪える。不安で落ち着かない心細さがただただ増幅されていく。

 時計を見ながら玄関で立ち止まっている参太に、しかし声をかけてくる女性がひとり。

「こんにちは、転校生さん」

 顔をあげた瞬間、参太はどきりとする。

 それくらい美人だった。

 眼鏡をかけた理知的な双眸にセミロングの茶髪が印象的だった。教師らしいが、まだ若く二十代後半といったところで、大学生にしか見えない。

「こ、こんにちは」

 とりあえず返事だけしてみたが、それで精一杯だ。

「まだ慣れてない感満載だね。まあ色々クラブ活動もあるし、そのうち慣れると思うよ。それでさ、よかったら今日……私が開いているクラブ、見に来ない?」

「え?」

 今一度時計を見やる。5時40分……参太は、視線を美人教師にむけた。

「6時までだったら、大丈夫ですけど」

「そ。なら、行きましょ」

 教師はぱっと花咲く笑顔をつくると、迷うことなく参太の手首をつかんだ。

「え」

 なされるがまま、参太はひっぱられて案内される。

 そのまま校舎を出てグラウンドへ。野球部とサッカー部が練習しているのを通り過ぎ、隅に建設されている小さなプレハブ小屋に辿り着く。

 まるで物置のような位置に建っているが、それはあえて校舎の外に造られた部室らしい。

 その扉を女教師が開いた直後だった。

 参太は我が目を疑うことになる。

 扉の先、プレハブ小屋のなかにはひとつの檻があった。そこには生きたままのエイリアンがいた。

 虹色の、満身創痍のエイリアンだ。

「どう? 見覚えはあるかな」

 女教師はそこで笑みを浮かべ、参太の顔をのぞき込む。

 絶句したまま、何も言えなかった。

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