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メゾン☆アストロVS空き巣高校生  作者: SAND BATH
空き巣高校生VS管理人
14/112

高校生、作戦に参加する

 メゾン・アストロとは街ひとつ隔てたボロアパートで、参太とシャルロットは作戦会議を開いていた。

「今日この瞬間が、メゾン・アストロの最期になるよう、がんばりましょーう!」

 シャルロットは不敵な笑みでそう締めくくり、参太は盛大にため息をはいた。

 作戦会議は朝のうちに終了した。

 そしてその日の午後三時。

 決死の作戦が開始された。


(やるしかないんだろ)

 参太はメゾン・アストロに戻ってきた。

 あの管理人に見られているのだろうが、しかしそんなことはどうでもいい。

 

 作戦第一段階:管理人室に潜入し、空間変転のキーを盗む


 いきなり宇宙人の部屋に潜入である。

 ハルとシャルロットの闘争のとき、参太はシャルロットの部屋にある宇宙空間と現実空間との切り替えの鍵となる物体を盗み出すよう命じられた。それがクマ型スマートスピーカーだったわけだが、管理人の場合、何が鍵となる物質になっているかはわからない。

 重要なのは鍵を盗むこと自体ではなく、そうすることで管理人の意識を空き巣……つまり参太に向けることだとシャルロットは言う。

 つまり囮を命じられたわけで、参太はそれで盛大にため息を吐いたのだ。

(ああ、もう。最悪だ)

 いつも心躍る空き巣も、いまは本当に気が重かった。

 嫌々ピッキング作業をするのは生まれて初めてかも知れない。

 胸ポケットから針金を取り出し、鍵穴に差し込んでかき回すように動かした。やがてガチャ、と音がすると、ドアノブが自由に回るようになる。

 管理人室とはいえボロアパートの一部なのでやはりセキュリティは甘かった。

「はあっ」

 ため息をつきつつドアノブを回すと室内を見る。

 誰も、いない。

 現実空間としての室内にいないだけで実は宇宙空間にいるのかも知れないが、しかし、いまのところは無人の空間、という事実があるだけでひとまずは先行きは明るい。

「窃盗とか、最低だよな」

 いつもドアノブのネジという被害の少なそうなものを盗んでいるのだが、今回は本当の窃盗だ。

 それも対象物がわからないから、部屋にあるものを片っ端から盗んでいくという頭の悪いこと極まりない作戦だ。

 いや、それはもう作戦ではない。単なる囮人形作成指令である。

(何がキーになるかわからないから、全部盗めとか……やってらんねえ!)

『あたりをひいた瞬間、あの管理人から攻撃されるはずデース! それがこちらの狙いなので、あたりをひくまで延々と盗み続けてくだサーイ!』

 思い出すだけでも腹が立つが、ここは従うしかない。

(一宿一飯の恩義ってやつだ……)

 宿と食事を用意してもらったからにはお礼をしなければならない、という想いが参太にはある。もっとも、明らかに損をしている感じは否めないが。

 ふとハルの顔が脳裏に浮かんだ。

「俺は、馬鹿だな」

 ハルに従って、しかし裏切られて。身にしみてわかったはずだった。自分など相手にはされていないのだということが。

 それでもまた今回、別の女に従っている。結局、欲情している。

 参太は一歩踏み込むと、電気はつけずに部屋を見渡した。窓のない部屋だから、光はドアをあけて確保するしかない。

 暗がりのなか、何もかもが白で統一された殺風景な部屋が見える。ガラステーブルは今日はなく、執務机が部屋の中央におかれてあった。応接セットはどこかにしまってあるのだろうが、しかし収納スペースは見当たらない。

 本もCDも何もない部屋なので盗む物といえば家財道具か食器棚に置かれたグラスやカップ、ソーサーといったたぐいしかない。

 中に入り、執務机の上におかれたペンに目がいった。

 虹色の金属光沢を放つ、世にも不思議なボールペンだった。

 質感としては金属製に見えるが、しかしよく見れば執務机の表面がうっすらと見える。つまりは透けているのだ。

 光と物質の中間に位置する、現代文明には存在しない未知の素材……。

「聖剣、、アゾノフ?」

 管理人の正体が露呈したあの日、エイリアンが握っていた聖剣。その刃と同じ材質で造られたボールペン。

(いや、明らかにこれじゃねえかな……当たりって)

 参太は虹色のペンに触る。

 それは透けているが確かな物質の感覚があった。プラスチックと同じ手触りだった。固さはなく、かといって曲がることもない。触っているのは確かだし感触もあるのに、それでいて固くもなく柔らかくもない。およそ手にしたことのない、生まれて初めて体験する触感だった。

 そして参太がにらんだとおり、それがこの現実空間における鍵だった。

「また戻ってきたな。今度は入居の手続きでも?」

 男の声が背後でする。

 半開きのドアが開いた形跡はないし、音もなかった。この男は文字通り、瞬時に背後に現れたのだ。

 参太は肩をすくめると、管理人に言い放つ。

「俺は、あんたに手を貸すことはない」

 人を管理するアパートとは名ばかりの監獄。

 そんなものは壊さなければならない。そこに自ら住むなどもってのほかだ。

「ならもう一度、洗礼を受ける必要がありそうだな」

 空間が反転しようとしている。

 参太にはそれがわかった。

 

作戦第二段階:管理人とともに宇宙空間に転移する。しかしその際、クマのぬいぐるみを織り交ぜる。


 参太は胸ポケットからにゅっとクマのぬいぐるみ型スマートスピーカーを取り出した。

「やっと出番か!」

「ほう」

 ぬいぐるみが空中で四肢を広げて飛び出した直後、宇宙が反転する。

 ぬいぐるみは本来、シャルロットの部屋に置かれるべき鍵だ。

 鍵は置かれてある部屋が宇宙に反転するとき、特定の宇宙につなげる役割を果たしている。

 つまり、管理人の鍵である虹のペンとシャルロットの鍵であるぬいぐるみが同時に存在している現在、ひとつの空間に二つの宇宙が同時に現れることになる。

 

 参太の背後には星のまたたく美しい宇宙が広がり。

 管理人の背後にはブラックホールに侵食されている失敗作の宇宙が広がる。


 

 同時。

 メゾン・アストロの「7-G」号室で、自らの居室に戻ったシャルロットが口を歪めて言った。

「さあて。作戦第三段階、開始デース」

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