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伍糸endB 右にいく


「右へいってみましょう」


私達が進んだ先には、まるで雨乞いの儀式をするときに使う野外の祭壇があった。


「……まさかこれが生け贄の儀式なのか?」


伍糸さんの言葉を冗談だろうと流すことはできない。


私達は何かの気配を感じて神社の中へ入っていく。


《ナカナカ良いウツワと成りそうだな》


「……なんだ!?」


黒いモヤモヤが伍糸さんに語りかける。


「……あなたはこの神社の神様で女神様じゃないですよね?」

《――ああ、女神などとうの昔に社を去った》


それじゃあなぜ儀式をしているのだろう。それに、ウツワと言ったのが気にかかる。


「悪神か……」


彼は呟くように言った。


「悪い神様……?」

「ああ、村の儀式、姿をもたぬ悪の神、ウツワ、美男。すべて繋がったぞ!!」


謎を解いて嬉々とする伍糸さん。


「あの、つまり?」

「生け贄に美男を要求したのはおそらく女神ではなくこの悪の神だ。

奴は姿を持たないから実態化するべく人間の男に取りつく」


―――女神伝説はそんな単純なことから始まっていたんだ。


《……そうだ。我が力の前に畏怖するがいい》

「悪神、なぜ村人ではない俺たちに姿を見せた?」


恐れることなく伍糸さんは問う。


《あえて見せたわけではない。逃げも隠れもせん。ここにいるというのに奴等に視る力がないだけだ》


この村の人たちは神の姿を見ることができない。

だから女神がまだここにいると信じて疑わないんだ。


《この年は新たな贄がくる。我がウツワにふさわしい秀麗な人間がな》

「村一番の美男……まさか……」


私は厭紀さんが頭によぎる。


「生け贄の儀式なんか、させるわけにはいかない」

《抗うか力無き人間よ、ぬしらになにができると?》


風もないのに悪神の黒煙がゆらいだ。


「力があれば……」


手の珠はなにも反応しない。


「……悪神、オレでは噐になれないか?」


伍糸さんは悪神に問う。


《ほう、気でも狂うたのか?》


いくら友人が生け贄にされそうだとしても自分から生け贄に志願するなんて――――


「このままオレ達を返してくれるわけでもないだろう?だから彼女だけでも解放してくれないか」


《かろう――村人でなくとも姿に問題はないな》


悪神が彼にとりつきはじめる。そういえば彼は悪霊がつきやすい体質らしいけど―――


「いまだオレを殴れ!!」

「え!?」


私は暗闇なので足元がくるってしまってそこらの陶器を落としてしまう。


《グアアアアア》


伍糸さんに憑いた悪神の煙りは苦しみもがいて消えた。


「あの、殴れなくてすみません?」

「いいんだ結果的に殴るより効果はあった」


「ところでどうしてそんなことを?」

「奴は悪い神だが、一応は神だから穢れを嫌うと思った。殴られて口を切れば血で汚せると思ってな」

「無謀な賭けですね」


――だがこれで儀式はやらなくてすむだろう。


「でも生け贄が厭紀さんと決まったわけじゃなかったですよね?」

「まあな。だがなんとかなったからいいだろう」



【ノーマル..結果よければ解決】

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