穢之endB 有象無象
「穢之さん、その話が本当なら今すぐ逃げないと!」
「僕だけ逃げても、意味がないよ。それに間違いなく厭紀のほうが狙われてる」
彼は他にも事情を知っているようだ。
「それって……」
「僕らの叔父に当たる芙菟さん、実は18年くらい前に犠の儀式から逃げたんだって」
私は驚いて、何も言葉がでなかった。
「それで縒彦さんのお姉さんは叔父さんの幼馴染だから当時の女神役だった」
「もしかして……」
――――縒彦さんのお姉さんの気が触れてしまったのは、榊さんが原因だった。
「犠を逃がしたことで、儀式は中止されたらしいけど……」
「儀式をやめたから女神様が怒ってあんなことに?」
祟りなんて本当にあるのかな。人間の妄想が飛躍したとかだろうし。
「あの、この手になにがありか見えますか?」
「普通の手みたいだけど?」
見ても、触れてもなにもないと言われる。
だけど私にはこの珠が見えているし触れる。
―――でも、すべてを否定するのをこの手にあるものは許さないらしい。
私だけ黙っていては話が進まないので、穢之さんに珠のことを説明した。
「君が女神ということは、儀式は開かれないんじゃない?」
「やっぱりそうなります?」
穢之さんは厭紀さんを探しに行った。
私が女神なら、この村から早く出れば――――――
《たすけてあげて》
「え?」
「どうしたの?」
戻ってきた穢之さんに声をかけられた。―――私を呼ぶ声がした。
「なにかに呼ばれて……」
この珠が声に共鳴するということは、犠絡みのことで間違いないだろう。
「まさか厭紀になにかあったのか!?」
私たちは導きに従って、左へいくことにした。
だって今までも導きに間違いはなかったから。
「うわっ……なにか踏んだ」
穢之が拾ったそれは変なお守り。
「もってくのそれ?」
「お守りを捨てるとよくないっていいますし」
私はそれを拾っていくことにした。
私たちは違う神社の社へたどりつく。表ではすでに黒装束の人々が変な儀式の用意をしていた。
裏口からこっそり中へ入ると、そこには厭紀さんが倒れていた。
《ほう……妙なものを持っているな》
傍には黒いモヤがかかっていて、誰かの声がしている。
《まあ良い……我はこの人間を新たな器としよう》
あのモヤが話しているのかと思うが、私は厭紀さんに近づくそれにお守りを投げつけた。
《ぐ……ただの人間かと思えば貴様は――――》
全てを語り終える前に、モヤは消えていった。あれはなんだったのか、私たちにはわからなかった。
あれから朝になり、私達は深夜徘徊についてしかられた。
「てっきり儀式の邪魔して怒られると思ってた」
厭紀さんは目覚めたら社にいて、自分がそれ以前に何をしていたかまったく知らないらしい。
「……昨晩なにがあったのか、皆覚えてないんだよね」
私と穢之さんだけが、昨晩起きたことを覚えている。
「でも、二人だけの秘密ってことでいいよね」
「お前も俺に隠し事する年になったんだな、双子として寂しいが、兄としては喜ぶとこか」
厭紀さんは腕を組みながら私達を見てからかう。
「ご、誤解ですから~!」
今日は生憎の曇りだというのに、顔から火が出そうなくらいあつい。
【ノーマルend 壊被回避会費】




