表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/52

EP 7

黒焦げになった死甲虫ビートルの残骸と、潤滑油の匂いが漂う枯れ森の最深部。

俺が差し出した手を見つめ、レオンは泥に塗れた顔を歪め、そしてポロポロと悔し涙をこぼした。

「……っ、どうしてだ。僕は君を……君たちを、あんなに見下して、子供のお遊びだと馬鹿にしたのに……」

震えるレオンの手。俺はそれをガシッと掴み、強引に彼を立たせた。

「レオン君が僕たちを助けようとしてくれたこと、知ってるよ」

「え……?」

「死甲虫の突進から、僕たちを逃がそうとしてくれただろ? 自分の剣が折れて絶望していたのに、それでも他の誰かを守ろうとする。それは、立派な『リーダーの器』だよ」

俺がニッと笑って言うと、レオンはハッと息を呑み、そして顔を真っ赤にして俯いた。

「……敵わないな。君のその『知恵』にも、仲間を信じる『心』にも。それに……」

レオンはチラリと、俺の後ろで「腹減ったー!」と騒いでいる規格外の大人たち(イグニス、キャルル、ルナ)を見た。

「あの強すぎる大人たちをまとめ上げている、君の『忍耐力』にもね」

「あはは……そこは本当に、毎日胃薬が手放せないよ」

俺の苦笑いに、レオンもようやく、毒の抜けたような清々しい笑みを浮かべた。

「ありがとう、アレン君。君こそが、僕たちの命の恩人であり……真のリーダーだ」

深々と頭を下げるレオン。その後ろで、傷が癒えた『白銀の翼』のメンバーたちも、俺たち問題児パーティーに向かって心からの感謝の礼をした。

プライド高きエリートたちが、俺たちの強さを完全に認めた瞬間だった。

   ◆

数時間後、城塞都市アイギスの冒険者ギルド。

枯れ森からの帰還を報告する場は、水を打ったような静寂に包まれていた。

「――以上が、枯れ森での一部始終です。オークの異常繁殖の元凶は、未知の鋼鉄の魔獣群でした。僕たち『白銀の翼』はそれに全く歯が立たず……そこを救ってくれたのが、アレン君率いる彼らです」

ギルドのホールの中央で、レオンがよく通る声で高らかに宣言した。

周りを囲むベテラン冒険者たちは、信じられないものを見るような目で俺たちを見つめている。

「お、おい嘘だろ……? あの『白銀の翼』が手も足も出なかったバケモノの群れを、あんな子供が率いるパーティーが全滅させたっていうのか!?」

「でも見ろよ、あの『白銀の翼』の連中が、あの少年に心底惚れ込んだような顔をしてるぜ……!」

ざわめきが、次第に『驚愕』から『称賛』へと変わっていく。

ギルド長が重々しく頷き、俺の前に進み出た。

「アレン・鍵田。そして君の頼もしい仲間たちよ。城塞都市アイギスを代表して、君たちの規格外の活躍に心から感謝する。これは特別報酬だ」

ドンッ!とカウンターに置かれたのは、目玉が飛び出るような額の金貨が入った皮袋。

「よっしゃぁぁっ! 今夜は街で一番高い肉を食うぞ!!」

イグニスが雄叫びを上げ、ギルド内が一気に歓声と拍手の大爆発に包まれた。

レオンたちに見下されていた『アンバランスな問題児の集まり』は、たった一つのクエストで、この街で最も尊敬される最強パーティーへと名声の階段を駆け上がったのだ。

   ◆

その日の夜。

俺たちは、アイギスで一番の高級宿屋の特別室で、豪華なディナーを囲んでいた。

「むぐむぐ……こっちの街のお肉も最高ね! アレン、もっと頼んでいいかしら!」

「ダメだよキャルル! それもう5人前! イグニスも骨まで食べないで!」

「あらあら、果物も甘くて美味しいわよ〜」

相変わらずドタバタと騒がしい仲間たちを見ながら、俺は懐のポケットに手を入れた。

指先に触れる、小さな『黄色いアヒルの玩具』。

最初のハズレアイテム。でも、俺のすべてはここから始まった。

(ギアンの奴、今度は完全に『殺し』に来ていた。次はもっと恐ろしい手段で、僕たちの前に立ちはだかるはずだ)

死蟲王サルバロスの潜む【天魔窟】。

そこに至るまでの道のりは、今日のような絶望の連続かもしれない。

だけど、恐怖はない。俺の頭の中にある地球の『知恵』と、この最強で最高の仲間たちがいれば、どんな困難だってぶち破れる。

「よし! 明日は装備を整えて、さらに東へ進むよ! みんな、準備はいい!?」

俺がジュースの入ったグラスを掲げると、問題児たちも満面の笑みで肉や果物を手にしたまま応えた。

「「「おうっ(わよ)(ねぇ)!!」」」

窓の外には、満天の星空が広がっている。

13歳の少年アレンと、問題児だらけの大人たち。

彼らが紡ぐ、笑いと知恵と奇跡の冒険譚は、新たな大陸の果てへと向けて、勢いよく加速していくのだった――!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ