アイ
旭夏は「失礼しました」と呟き愛夢を地面に降ろして足早に離れていった。
彼にすれば汗臭い新人を助けてやったのに礼の一つも無い。それどころか、喚かれる始末なのだから、たまったものではなかっただろう。
これには溝呂木も、深いため息を吐いて呆れていた。逆に自衛隊の指揮を取っていた男性は大声でゲラゲラと笑う。
申し訳なさと恥ずかしさから愛夢の瞳からは涙が溢れ落ちた。
「西宮愛夢!大丈夫か!?一体どうしたんだ!?」
「落ち着いてください!怪我はありませんか?」
心配する美剣と漁火にも「近寄っちゃダメです!!」と愛夢は大声で叫ぶ。
拒絶の理由を知らない二人は、慌てふためき愛夢から距離を取った。
「ここは同性の私に任せていただけませんか?」
新田の提案を受け入れた美剣たちは、大人しくその場から離れていった。
LETへ戻る車両の中で新田は甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる。
「すみません・・・」
「これまで西宮さんは普通の生活をされていたのですから動揺されるのも無理はありません」
「違うんです。本当は・・・」
申し訳が無く愛夢は正直に全てを話す。だが新田は怒るでもなく愛夢の話を笑い飛ばした後、「失礼しました」咳払いをした。
「私は男性と一緒の機会が多いので、そういった感情を忘れておりました」
「呆れましたよね?」
「いいえ!ですが今の事は皆さんには秘密にしておきたいですよね?それくらい女心は分かりますよ」
そう笑う新田の笑顔で愛夢の中にあった彼女への苦手意識は次第に薄れた。
だがLETに到着した愛夢を待っていたのは月歌と看護師達だった。
「月歌さん!こっちだ!早く診てやってくれ!」
美剣に導かれた月歌はその場で愛夢を触診する。そして昨日と同じ呆れ顔で美剣に詰め寄った。
「美剣君ー?西宮ちゃん元気そうだけど?」
「旭夏の身体が固い所為でどっか痛めてるかもしれねぇだろ!?レントゲンとかMRIとか撮ってくれ!」
こうなってしまった美剣は何も聞いてはくれない。愛夢は抵抗も空しくストレッチャーに乗せられ病棟へと運ばれた。
結局、月歌にも本当の事を話す羽目となり苦笑いをされた。だが月歌も女同士の秘密だと美剣たちには何も言わないでいてくれた。
愛夢の体調を鑑み下された診断結果は「今週は無理をしない方が良い」だった。
そして、それを聞いた美剣の過保護は更に加速した。
検査を終えた愛夢はミーティングルームに呼び出され、旭夏を除いた三人の前に鎮座する。
そこで命ぜられせたのは、トレーニングの延期と追弔時の更なる後方への待機、そして事務や雑用などの仕事の引き継ぎだった。
三人の説得に反論は出来なかった。
愛夢が起こした先の騒動の鎮火へ行く三人に何も言える筈も無い。
共に謝りに行くと言っても断られ「お留守番」を言い渡された愛夢は、一人寂しく漁火が用意してくれた宿題をこなしていく。
追弔をこの目で見て模範とるする事すら出来ない。前に進むどころか後退し続けていく現状に、目の前にある宿題は次第に霞む。
愛夢は上の階にいる旭夏の仕事の邪魔にならぬように嗚咽を噛み殺した。
そして足は誰もいない場所を探していた。
LETの中で愛夢が行ける場所は限られている。その中から選んだのはシミュレーションルームだった。
分厚い鉄の扉には[美剣さんの立ち入りを禁ずる]という貼り紙があり、それが今の愛夢には逆に有り難かった。
ここならば誰も来ない。見つかる事もない。愛夢はしゃがみ込み声を殺して泣く。
ただただ広い空間に愛夢の啜り泣きが響いた。
『具合ガ悪イノナラ オ帰リニナラレタ方ガ 良イデスヨ』
頭の上から響く機械音声のする方向へ顔を上げる。すると美剣が壊した液晶パネルがあった場所に、見慣れぬ物体が置いてあった。
それは両手に収まるサイズのスピーカーで桜の花を模した形をしており、白に近いピンクの花弁が体、花柄が帽子になっていた。
体の中央部に表情を表す記号が表示されており、目のㆁ、口のωのマークが何とも可愛らしい。
「今喋ったの・・・アナタ?」
愛夢はソレを優しく撫でる。愛玩用に作られているとすぐに分かるほどに親しみやすいフォルムに心が次第に落ち着いていく。
『ハイ』
即座に返事をする声は女性でも男性でもなく子供の声に近い。だからなのか愛夢は物怖じせずに話す事が出来た。
「アナタは何?朝はいなかったよね?」
『コレハ シミュレーションヲ サポートスル バーチャルアシストAIデス。美剣サンガ 液晶パネルヲ 壊シタノデ 臨時ノ措置ヲ取リ 置カレマシタ』
あの液晶は美剣の連打に耐えられなかった。だが、そのおかげで愛夢はこのアシストAIに出会えた。
機械ならば迷惑をかけて嫌われる心配は無い。愛夢は次第に絆されていく。
「アナタの名前は?何て呼べばいいの?」
『私ノ事ハ アイ ト呼ンデクダサイ』
「アイ!私は西宮愛夢って言うの。よろしくね!」
かつての同級生達もAIを活用し様々な事を行なっていた。写真の加工や人生相談、授業の解答までをもしてくれるAIに皆が夢中になった。当時の愛夢はそれを遠目で眺めているだけだった。
そんな自分が今、AIと話をしているのは不思議な気分であった。
『トコロデ 体調ハ 大丈夫デスカ?』
「体調?全然平気だけど?」
『デハ 何故 泣イテイタノデスカ?何カ 嫌ナ事デモ アッタノデスカ?」
「私、全然何も出来なくて皆んなに迷惑をかけてばっかりで、それが悔しくて悲しくて泣いてたの。役に立つ為にここに来たのに・・・」
『焦ル必要ハ アリマセン。皆ハ 迷惑ダナンテ 思ッテイマセンヨ』
「アイは優しいね。・・・AIだから当たり前か」
人を傷つけないように作られているAIの解答は愛夢を元気づけてはくれなかった。自分の無力さを再痛感した事で自己嫌悪が加速していく。
『危険ナ目ニ遭ッタノニ コノ仕事ヲ辞メタイトハ 思ワナイノデスカ?怖クナイノデスカ?』
「誰の何の役にも立てなくて迷惑をかける事の方が怖いよ。・・・って、どうしてアイは私が危ない目に遭ったのを知っているの?」
『ワタシハ 最新鋭ノ技術ニヨッテ 作ラレテイマスノデ 情報ハ 常ニ アップデートサレテイマス』
「そうなんだ。すごいね」
『デスカラ LETノ事モ 追弔ノ事モ 匿ス必要ハ アリマセン。遠慮ナク 正直ニ 思ッタ事ヲ 口ニ出シテクダサイ』
アイの言葉に止まっていた涙が再び溢れ出した。
「私、追弔が終わった後に大きな声で叫んじゃったの。その所為で今、美剣さんたちが大変なのに何もさせてもらえない。どうしたら良いか分からないの」
『追弔ノ際ニ 騒ギガ起キルノハ ヨクアル事デス。皆サンモ 対処ニハ 慣レテイマス。デスカラ ソンナニ 気ニ病ム事ハ アリマセン』
全てを知るアイの言葉は、まるで生身の人間からの励ましのようだった。
「私、旭夏さんにも酷い事をしてしまったの。謝りに行きたいんだけど、お仕事の邪魔じゃないかな?」
『放ッテオイテ 構イマセン。無理ヲスル必要ハ アリマセン。叫ビ声ヲ アゲルクライニ 嫌イナ相手ナノデショウ?』
「違うよ!そんな訳ない!むしろ私なんかを助けさせてしまって旭夏さんに申し訳ないくらいなのに!」
『デスガ カナリ嫌ガッテイタヨウニ 見エマシタ』
アイは、その場に居たかのように話をした。そんな風に思われる態度をとってしまったのかという罪悪感で愛夢の胸はチクリと痛んだ。
「違う!トレーニング中に、いきなり召集されたからシャワーを浴びてなかったの!しかも今は生理中だし!旭夏さんに臭いって思われたくなかったの!」
愛夢の弁明に、それまでの円滑だったアイの返答が突然止まる。
しばらくして『ソウデシタカ』と短く答えたアイは、気まずさを感じたかのように再び沈黙した。
アイはAIなのにどこか人間臭かった。
良き相談相手を見つけた愛夢は次第に饒舌になっていく。
「聞いてよアイ!美剣さんが全然トレーニングをさせてくれないの!しかも今週は運動しちゃダメって言うのよ!?私は早く強くなりたいのに!心配性すぎると思わない!?」
『暫クノ辛抱デス。万全ノ体調デ 挑ンダ方ガ トレーニングハ 成果ガ出ヤスイデスヨ』
「でも・・・」
『誰モ 一朝一夕デ 強クナレル訳デハ アリマセン。焦リハ 禁物デス。怪我ニモ 繋ガッテシマイマスヨ』
「そんなんじゃ遅いの!私は、美剣さんより強くならなきゃ追弔に参加させてもらえないの!事務仕事なんてしてる場合じゃないのに!」
『ソンナ事ヲ 言ワナイデクダサイ。事務仕事ハ 皆サンモシテイル 立派ナ業務デス』
「・・・ごめん」
『イイエ。アナタガ事務仕事ヲ 完璧ニ熟セルヨウニナレバ 皆ノ負担ガ減リマス。ダカラ 頑張ッテクダサイ』
「うん」
無駄だと思えた事務仕事でも皆の役に立てている。
アイの励ましで、どんな事でも良いから美剣たちの役に立ちたいという初心を愛夢は思い出せた。
もっとアイと楽しい話がしたい。一緒にいたい。
そう心の中に芽生えた感情は、友人のいない愛夢が初めて感じた友情だった。
「漁火さんから渡された事務仕事と宿題は終わってしまったの。だから皆んなが帰ってくるまで、ここに居てもいい?」
言いつけられていた機密書類の破棄と今日の追弔の情報入力は、かなり前に終わっていた。後は座学の復習をしていたので、今の愛夢は暇だった。
『構イマセンヨ。デスガ ココデ話シタ事ト ワタシノ事ハ 絶対ニ 誰ニモ言ッテハ イケマセン』
「えっ?誰にも?どうして?」
『ワタシハ 最新鋭ノ技術ニヨッテ作ラレタ AIデス。ソシテ コノ国ノ最重要機密デアル データガ入ッテイマス。ツマリ ワタシノ存在自体ガ 国家機密トモ 言エルカラデス』
「そうなんだ。でも、どうして美剣さんや漁火さんにも、アイの事を言っちゃダメなの?」
自分よりも機密情報を知り尽くしている彼らがアイに拒否される理由が愛夢には分からなかった。
『アナタ以外ノ人間ニ ワタシノ存在ガ 露呈シタ場合 防衛システムガ 発動スルカラデス』
「それ・・・どうなっちゃうの?」
『ワタシノ存在ヲ 認識シタ人間ハ 毛根ガ 全テ死滅シマス』
「何その防衛システム!?呪いみたい!怖い!」
心に浮かんだ純粋な疑問の答えは、想像もしていない程に恐ろしいものだった。
驚きから電力が走るほどの衝撃が頭に響く。
『ASPワクチンノ 副作用デス。体内デ変化シタ イオンガ送ル電気信号ガ 脳ヘ到達シ情報ヲ理解スル際ニ 毛根ノ細胞ヲ 死滅サセテシマウノデス』
美剣も漁火もそんな副作用の話はしていなかった。
知らされていないのか、知っていて黙しているのかは分からない。俄かには信じられない話ではあるが、どちらにしても愛夢がする事は一つだった。
「・・・分かった。ちゃんと秘密にするよ。皆んながハゲになるのは嫌だもん!」
愛夢は自分の髪を触る。大嫌いな自分の顔を隠してくれる髪は大切な身体の一部だ。
誰であっても無くなるのは嫌だろう。
ましてや大好きな美剣たちの髪が無くなるなど耐えられない。
自分が口を閉ざせば最悪の事態は防げる。
ずっとそうやって生きてきた愛夢には、お安い御用であった。
『賢明デス』
「でも私以外の人が、この場所に来たらどうするの?アイの事、バレちゃうよ?」
『置物トシテ 振ル舞イマス』
「本当に大丈夫?」
『ワタシハ アナタノ為ニ ココニ置カレテイマス。アナタノ声ダケニ 反応シテ 起動スルヨウニ 作ラレテイルノデ 平気デス』
「じゃあ、アイを動かせるのは私だけって事?」
『ハイ』
「何で?どうして私なの?」
『答エラレマセン』
誰が何の為に自分にアイを用意してくれたのか。
愛夢の頭の中は疑問だらけだった。
「誰が私の為にアイを作って此処に置いてくれたの!?私の知ってる人!?会いたい!会わせて!」
『黙秘サセテモライマス。極秘事項デス』
「・・・秘密ばっかり」
『ソンナ組織ナンデス』
頬を膨らませてみるがアイは特に気にする様子も無かった。
「ねぇアイ、皇さんを知ってる?」
『存ジテイマス。皇サンハ 素晴ラシイ オ方デシタ』
「私、皇さんに会いたいの。前にお世話になって、どうしても直接お礼が言いたくて。今どこにいるのか分かる?」
『皇サンハ トテモ遠イ場所ニ イラッシャイマス。デスノデ ワタシニ 言伝ヲ下サイ』
「やっぱり、そうなんだ」
予想はしていたが愛夢は肩を落とす。
あの日、美剣には頼めずにいたからアイの提案は、とてもありがたかった。
頭の中で伝えたい言葉を整理しアイへと伝える。
「素敵な傘を貸していただき、本当にありがとうございました。直接お礼に伺えなくて申し訳ありません。私も皇さんみたいに困っている人を助けられる優しい人になれるように、この場所で頑張ります。って伝えてくれる?」
暫しの沈黙の後、アイは『必ズ 伝エマス』と答えてくれた。
傘を貸してくれた優しいあの人は、愛夢には手の届かない人だった。
「ありがとう。・・・とは言ったけど、まだまだ難しそうなんだけどね」
『イイエ。アナタナラ キット大丈夫デスヨ』
「アイなら知ってるでしょ?私、追弔の見学からも外されちゃったの」
『ソンナ事ハ アナタノ 成長ノ妨ゲニ ナリマセン』
「なるよ・・・」
『何故デスカ?』
「これからは遠くで待機だから、皆んなのカッコいい姿を見られない。だから寂しくて悲しいもん」
『成程 理解シマシタ。皆サンノ勇姿ガ アナタノモチベーションニ 繫ッテイルノデスネ』
小さな返事はアイには届かなかったのか、会話が止まってしまう。
愛夢はアイの置かれた台の横に膝を抱えて座る。
シミュレーションルームには再び啜り泣きが響いた。
『泣イテモ 決定ヲ覆ス事ハ 出来マセン』
「分かってる。私なんて、いてもいなくても何も変わらない。それなら、いない方が良いに決まってる」
『ソウデスネ。ワタシモ 有用性ガ無イ人間ヲ 追弔ニ同行サセルノハ 無駄ダト思イマス』
アイの返答で涙だけでなく呼吸すらも止まる。
必ず否定してくれると期待していたが返ってきたのは、まさかの肯定だった。
「アイのバカ!ひどい!何でそんな事言うの!?」
『アナタガ 自分デ 言ッタンジャナイデスカ。何故 怒ルノデスカ?事実ヲ 述ベタマデデス』
「さっきまで優しくしてくれたのに、何で急にそんなイジワルな事言うの!?AIならもっと前向きな事を言って励ましてよ!」
『気休メデ 状況ガ 好転スルノデスカ?』
「しないかもだけど・・・。美剣さんなら、きっと出来るって言ってくれる!漁火さんだったら、そんな事は無いですよって言ってくれる!私が頑張れる優しい言葉をくれる!」
『適当ニ励マス事ハ出来マスガ ソノ所為デ アナタニ 危険ガ及ンダ場合 皆ニ動揺ガ生マレ 士気ニ影響ガ出マス。ソウナッテカラデハ 遅イ』
「大丈夫だよ。今日だって何とも無かったし・・・」
『美剣サント溝呂木サンガ 何トカシテクレタンデス。イツモソウナルト思ッテモラッテハ 困リマス』
「・・・だから、そうならない為に強くなりたいのに」
結局、最後にはこの押し問答になってしまう。
大好きな人達の為に頑張りたいのに、当人達がそれを望んでくれていない。
どうにもならないやるせなさで愛夢は唇を強く噛んだ。
「私・・・誰の、何の役にも立てないままでいたくないの。何をしたらいい?教えてアイ」
『アナタニ出来ル事ヲ 頑張ルシカアリマセン』
「私は、私にしか出来ない事をする為に此処に来たの!今の私に出来る事なんて誰にでも出来るよ。」
『ソレハ 追弔デアル必要ハ ナイデス。LETノ事務仕事モ 誰ニデモ頼メル訳デハ アリマセン』
この悲しみは何度味わっても慣れる事はない。
「結局、アイも漁火さんと同じ事を言うんだね。危ないから普通の仕事をした方がいいって、もう何度も言われた。アイを作ってくれた人も同じ思いなの?」
『危険ナ事ハ シテホシクナイ ト思ッテイマス』
「じゃあ、ずっと置物のフリをしてくれたら良かったのに。励ましてから突き放すなんて酷いよ・・・」
アイは説得の為に此処に置かれたのだろう。
抑揚の無い声が愛夢を追い立てていく。
『アナタノ為ニ言ッテイルンデス』
「本当に私に期待していないんだね・・・。もういい、分かったよ」
『何処ヘ行クノデスカ?』
立ち上がった愛夢にアイは素早く反応する。だが昨今のAIの技術力に感心する余裕は今は無かった。
「トレーニングするの』
『美剣サンニ 安静ニスルヨウ 言ワレテイマスヨネ?』
「言われた事務仕事は頑張る。けど追弔に参加する事を諦めた訳じゃない」
この部屋に入ってきた時も泣いていたが、まさか出る時までも泣くとは思ってもいなかった。
『待ッテクダサイ』
「止めたって無駄だよ。どんなに言われても邪魔されても諦めないから」
『今日ハ 止メテクダサイ。ソウシテクレルノナラ ワタシガ アナタノ トレーニングニ付キ合イマス』
「アイが?」
『ハイ。アスピオント戦ウノデハナク アナタガ己ヲ守レルヨウニナル為ノ トレーニングデスガ』
「美剣さんみたいに筋トレじゃなくて、自分の身の安全を確保できるような方法を教えてくれるの?」
『ハイ。今日ノヨウナ事ガ 再ビ起コッタ場合ノ為ニ 己ヲ鍛エテクダサイ』
どの道、美剣より強くならなければ追弔には参加させてもらえない。アイの提案は通過点であった。
愛夢の最終目標である美剣たちの窮地を救い弔意金でマリアに幸せになってもらう。その為ならば、どんな困難であろうと我慢は出来た。
「分かった」
『デアレバ コノ場所ヲ使ウ事ヲ 許可シマス』
アイの承諾と同時に室内の照明が落ちる。
真っ暗な室内の中、愛夢の目の前には追弔用のボディスーツに身を包んだ美剣が現れた。




