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1-10 三男坊 魔獣退治に行く

経験を積むため、魔獣退治に出かける俺達、いつものように途中の交換所で騒動があったが、無事魔獣被害のあるミュラー伯爵領に到着する。

 卒業後野望を果たすには、高等部に進学し、卒業時に父と戦闘をして、勝つことが条件になった俺。夏休みを利用して訓練するぞ。


 早速、近衛の駐屯地に行って馬車を借りられる予定を聞く。

 今日はお姉さんは非番だったので、代わりの中年男の曹長さんに聞く。

「坊主が馬車を預けてるのか。おおいに助かってるぞ」

 背中をバンバン叩かれる。痛いなあ。


「馬車を借りたいって、おう、ちょっと待ってくれよ」

 予定帳を捲り始める。

「えーっと・・今日は何日だっけ・・これがそうか・・大丈夫だ。坊主の馬車はずっと空いてる。何時まで使う予定だ。・・今月いっぱいと。よおし、厩舎でこれを見せて受け取ってくれ」


「え、魔獣の被害が出てるところか、この間まではシュバルツバッハ辺境伯の領だったが、今は西のミュラー伯爵領でちらほら出たって聞いてるぜ」


 厩舎で書類を見せるといつものおじさんが出て来た。

「おう、先に言って置いてくれれば用意しておくのに」

 ブツブツ言いながら馬を馬車に繋いでくれる。

「ありがとうございます」

「おう、用事が終わったらまた持って来い」


 寮でコトネとアンナを乗せて、出発だ。

 途中で食料を買って、ついでにアンナに護身用のナイフを買ってやる。

 アンナは余程嬉しいのか、馬車の中でナイフを抜いて見入っている。

 俺は門へ着くまでに薬草を売る準備をする。


 門の近くの交換所に薬草を持ち込むといつものおばさんが居た。

「あんた。また来てくれたんだね。あんたの薬草は評判が良くって、錬金術師が取り合いしてるよ」

「そうなんですか?」

「高いポーションが作れるんだって、儲けが大きいのよ」

「それは良かった」


 交換所のカウンターで世間話をしながら薬草の納品をしていると交換所の奥から大声が聞える。

「おばさん!そいつが来たら教えてって言ったっしょ!!」

「あんたのやろうとしてることは、ルール違反なの!引っ込んでなさい」

 交換所の奥から少女が出て来ておばさんの横に陣取る。

「あんたね。新鮮な薬草を大量に納品する奴は?」


 俺は当然無視する。

 おばさんに代金を貰うと帰ろうとした。すると少女はカウンターから乗り出して、俺の腕にしがみ付いた。

「あんた薬草を栽培してるんでしょう。やり方を教えなさいっすよ!」

「この交換所はこんなこと許してるの?」

「ごめんねえ。この時間は用心棒が居ないのよ」

 恐らく夕方の込み合う時間だけ用心棒を置いているのだろう。


 俺がもう少しカウンターから離れると少女は落っこちる。

 俺の腕は少女の大きな胸に押さえつけられているので、夏の薄着もあってなかなか悩ましいが、コトネに見られるとやばい。


「おばさん、この娘ケガさせても問題ない?」

 おばさんは頷いた。

「私にケガさせたら訴えてやるっす!」

「薬草の採取方法を聞くのはルール違反だよ。採取者の権限を守ってね」

 俺は少女の腕を捻り上げ、怪我をしないように優しく地面に転がす。

 少女は驚いて手を離した。


 俺は急いで馬車に転がり込んだ。

「コトネ!出して」

 馬車が動き出すと少女も追い掛けて来た。

 流石に王都内で馬車を走らせるわけにもいかない。

 少女は追付いて馬車につかまる。


「早く、教えなさいっすよ」

 俺はアンナを離して、少女と向き合う。

「教えたらいくらくれる?」

「え、・・お金はないっす。でも儲けたら半分渡すっすよ」

「駄目だな。俺達が一生遊んで暮らせるだけ用意しろ」

「そんな無茶苦茶な・・・っす」

「それ位の価値があるから教えろって言ってるんだろ」

 少女は馬車から手を離して道の真ん中に座り込んだ。


「あのお姉ちゃん教えて貰っても使えないのにね」

 アンナが笑う。

 全くだ。おっさんならぶん殴ってるところだ。

 薬草の商売もそろそろ厳しくなってきたかな。

 次元収納庫の存在を知られる訳にはいかない。


 王都の門を潜って外に出る。このまま王都の壁に沿って西に回る。

 ミュラー伯の領地までは四日か五日の旅になる。

 街道沿いには魔力溜りも無く、四日目の昼ようやくミュラー伯領に入る。


 これまでの村での情報では、ミュラー伯の領地の北の方で魔獣被害が頻発しているらしい。

 俺達は領都へ行く街道を逸れて北に進路を取る。


 道は流石に街道ほど良くはない。凸凹や水たまりがたくさんある。

「右に魔力溜りがあります」

 北に進路を取って2時間程来たところでアンナが俺に伝えてきた。

 俺とアンナが馬車を降りて魔力溜りに行ってみる。


 小さな魔力溜りだった。

 アンナは何も言わなくても薬草を採り始める。

 よし、魔力を溜めて魔法を練習しよう。

 俺は魔力や魔素を次元収納庫に集めてみる。

 上手くいかない。


「ロキ、どうすれば良いんだ?」

『アンナが魔力を感じられるように、主人のあんたにもその能力が少しはあるだろう』

 俺は集中して魔力を感じてみる。地面から湧き出るような魔力を感じる。

「これをどうするんだ?」

『ああもう、うっとおしいね。普通に収納庫に入れればいいんじゃないか』


 俺はその湧き出る煙のような物を収納庫に入れるように念じる。

 駄目だ。収納庫内で魔力が霧散してしまって、感じ取れなくなってしまう。

 そうか水みたいに容器に入れればいいかも。

 空の樽の中の空気と魔力を入れ替えるように入れてみる。

 よし、大丈夫だ。どんどん入るし魔力も感じ取れる。


 樽がいっぱいになったところで魔法を使ってみよう。

「ロキ、攻撃魔法の発動の仕方を教えてくれ」

『まず、使いたい魔法の魔法式を目の前に思い浮かべるんだ』

「魔法式ってなんだよ」

『魔法陣とも言うが円の中に魔法の発動の仕方が式になっている物だ』

「そんなの知らないぞ」

『では魔法は使えんな。普通は使える魔法の魔法式が、思い浮かぶものらしいが』

 そんなあっさり言うなよ。


「じゃあ、ライトとかファイアはなぜ使えるんだ?」

『あれは魔力の消費も小さいし、単純だからな。魔法式と言うような複雑なものを使わなくても発動できる。そうじゃ、スキンアーマーなら複雑な部分は、体でコントロールできるから使えるぞ』

 硬気功があるから要らないんだけど。

 俺が明らかにがっかりしているとロキが声を掛ける。

『従者たちが魔法を覚えれば、魔法式を共有出来るぞ。多分』


「レオン様、薬草採り終わったよ」

 アンナが声を掛けて来たので、薬草を収納庫に入れて馬車に戻った。

 ああ、この旅で一番の目玉の魔法を覚えると言う目標が、早くもポシャってしまった。

「レオン様・・・」

 コトネが俺に問いかけようとしたが、落胆した顔で分かったみたいだ。

「この周辺には魔獣は居ないみたいだ。少し早いけど夜営の準備をしよう」


 道から見えない場所に野営用の小屋を建てて、明るいうちは戦闘訓練をする。

 俺とコトネは木刀を使った模擬戦闘をアンナは力を付けるために素振りをする。

 コトネのすごさは姿勢制御にある。

 今も不意を突いて、左側に回り込んだのに難なく付いてくる。これは彼女の長い尾を回転方向と逆に強く振ることで、普通の人間なら倒れてしまうような姿勢でもバランスを保っていられる。


 コトネの剣技はアヤメさんの直伝なので、ヨシムネ先生から教えて貰った俺とは似ているが違う。相手の命を絶つより、行動不能にすることに重点を置く護衛の剣だ。従って手数が多く、手足を狙う技が多い。


 翻って、俺が教わった剣は命を一刀で断つ技だ。

 俺は力のないコトネの剣に強く当てて、コトネが連続技を使えないようにする。それが決まると勝てるが、コトネが受けずに避けることに重点を置くと超接近戦で一本を取られる。


 暗くなって見えにくくなるとコトネの目には全く勝てないので終了する。

 アンナを見ると随分木刀を真っ直ぐ振れるようになってきた。

 アンナが戦力になるには、あと数年かかるだろうが、鍛えておくことに無駄はない。


 その後は小屋に入って、夕食を取り体を拭いたり、明日の準備をする。

「レオン様、レオン様は何をしようとしてるのでしょうか?」

 コトネは俺が伯爵を断ってから将来の事に関心があるようだ。

「学園に入る前の俺は、家族に馬鹿にされない地位に着きたかった。今はまずコトネとアンナを何とかしたい。お前達が幸せに暮らせるにはどうすれば良いか、考えている。俺の事はその後で良い」


「それは御父上が伯爵になれば差別されないと仰っていたではないですか」

「それでは差別はされないかもしれないが、お前達の身分は奴隷と変わらない。自由はなく、結婚も出来ない」

「私はそれでもかまいませんが」


 コトネと俺は、お互い顔を見ずに明日の用意をしながら話をする。

「俺が構う。俺はお前達を頼まれたのだ。普通の女性の幸せを掴んで欲しい」

「でもそんな方法はないのではないですか?」

「一つある。それには後数年かかるのだ。お前達が魔法を会得して、獣王国に行けば、あそこは実力主義だ。お前達も好条件で入国できると思う」


「私はレオン様のそばに居たい」

 俺はコトネを見てしまった。コトネも俺を見る。でも俺ではコトネを幸せには出来ないんだよ。

「まあ、アンナが将来を考えられるようになってからの事だ。あまり結論を急ぐな」

「そうですね。アンナがどう考えるのかはまだ分かりませんね。でもレオン様が好機を逃すのは嫌です」

「だから、父との戦いに掛けているのだ」


 次の日、俺達は魔獣被害を受けた村に向かっていた。

「まだ魔獣居るの?」

 アンナの問いに俺は答えた。

「さあな、もう四日も前の話だから分からないけど。この近くで何回か出てるらしい」

 俺がミュラー伯爵領に入る前に聞いた話だからな。


「アンナ、探索範囲を広げてみてくれ」

 アンナの探索範囲は半径1km強、居るならそろそろ引っ掛かるだろう。

「レオン様、こちらに魔獣の魔力があります。距離は800m」

 アンナは右前方を指差す。距離も大体正確になっている。

 道からは離れてるみたいだ。取り敢えず、もう少し近づいてみよう。

魔獣を狩る傭兵たちに遭遇する俺達、傭兵の拠点としている村で騒動が・・・。

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