4 エリーセの悪霊
……………………
『……カ……ナデ…………』
……ん? ……居眠りをしていた……?
『カナデ、起きろ。式の最中だ』
シリスに怒られた。
『は……はいっ! 私ったら――、ごめんなさい、シリス』
優しげな表情で見つめるシリスがニヤリとした。
ハッ、よだれか? と思い慌てて手を口元にやろうとすると、何かふわっとした柔らかいものを抱いていることに気がついた。
大きなニャンコのぬいぐるみを、しっかりと胸に抱きしめていたのだ!
『な、なんでっ!?』
豪華絢爛な式場で、巨大ニャンコを抱えてあたふたと右往左往する。
そんな様子をみて、エリーセ姉さまがクスクスッと笑った。
――目の前では、エリーセ姉さまの結婚式があげられていた。
エリーセ姉さまは、とびきり美しかった。なにか特別な巫女のように、まるで魂からオーラを放出しているかのように輝いていた。
黒いドレスが、綺麗なきめの細かい純白の肌を、よりいっそう引き立たせてみせていた。
『でも……、なぜエリーセ姉さまは、純黒のウエディングドレスなのかしら? これではまるで…………』
『そろそろ新郎のお出ましだぞ』
黒い霧が立ち込めると背筋が凍った。
それは、黒い鎧に覆われ赤い目を不気味に光らせた黒騎士だった!
『魔獣だー!』
誰かが叫ぶと、出席者がパニックを起こして出口の扉に殺到した。
泣き叫び、怒鳴り声の響く中、神聖だった式場が、どす黒い瘴気につつまれると荒れ果てた冷たい墓場へと変貌していった。
ひときわ甲高い悲鳴がした!
『エリーセ姉さまッ!? そんなの、ダ、ダメよ! 助けないと!!』
追いかけようとするも、瘴気に巻かれ身体が鉛のように重くて動けなかった。それでもムリヤリ前に進もうとすると、脚がもつれて転んだ。
黒い霧の中を、黒騎士に抱きかかえられ連れ去られてゆくエリーセ姉さまの姿を、見送ることしかできなかった。
声の限り叫んだが、まるでとどかなかった……。
……………………
「…………ね、え……さま…………」
……右肩がほんわりと温かかった。ぽかぽかとした幸せな気分がした。
薄らと目を開けると、ベッドの上で下着姿となって横たわった俺に、唯が右肩と右手をそっと握って銀気を流して治療してくれていた。唯は教会でも超一流の治癒術師だ。
――銀気とは、片翼の女神の恩寵を受けた者のみが持つといわれる聖なる力だ。治癒や魔獣を討ち滅ぼすことさえもできる。特に銀気の力が強い異邦人たちをブレイバーといった。残念ながら、俺にはまったく銀気はなかった……。
もう何度も、唯の治癒術に助けられてきた。もし唯がいなかったら、耐性のない俺は瘴気にやられて異世界での生活には耐えられなかったに違いない。
俺は、しばらくの間、唯の顔をボーッと見ていた。……あいかわらず美形だな……。
豊かな黒髪と目じりに小さな泣きボクロが印象的な、女神のようにやさしい表情だった。胸には銀の翼のペンダントが揺れていた。
「ん……唯……」
「うなされていたわよ、カナデちゃん。でも、もう大丈夫。すぐに来れてよかったわ」
「……右手はどう? 剣は、握れそう?」
「まったく、雪色剣姫さまはもう戦う気なのかしら? 早期治療ができたから心配ないわよ。でも、何があったの? こんな濃い瘴気なんて……。とんでもない呪いの塊だったわ」
「……甘く見ていたのかも……。いきなり出くわすなんて想定外だったから……。唯、できれば、教会に退魔師を頼みたいのだけど……」
「退魔師を? …………出たのね、悪霊が!」
唯はブラックパールのような瞳で、ゆっくりと俺を見つめる。
「……私が、すり替わったようなものだから、怒ったのかな……」
「というと、亡くなられたお姉さまの、エリーセさまかしら?」
「あれはもう、見間違いようがない。……エリーセ姉さまは病気だったんじゃないの……。本当は――、黒騎士に呪い殺されたのよ! だから、悪霊となっていても全然おかしな話じゃない……。このまま、お父さままで連れていかれるわけにはいかないから……」
「そうだったの……。カナデちゃん、頑張ったね。でも、あまりひとりで根を詰めちゃダメよ。みんないるんだから」
でも――、白燐騎士団だって悪霊相手ではどうにもならない。
エリーセの名を汚さぬように、侯爵家令嬢として頑張ってきたつもりなのに、姉に拒絶されていたのかとがっかりすると、力が抜けていくように俺はまた意識を手放した。
次の日、俺=カナは、体調を崩してしまい大事を取るということにして、メイドの勤労体験はお休みをいただいた。田舎から出てきたばかりの娘にはよくあることだった。
だが、唯は治療に来てもらっただけだといったのだが、さすがにメイドさんたちを誤魔化しきれなかったようだ。注目の的のようになり、盛んに噂話がされていた。
「……そもそも、いくら急に体調を崩したといってもよ、水兵=カナちゃんのために、どうして、あの聖女さまが、わざわざ夜中に駆けつけてくるのかしら? お医者さまだっているのに」
「実は、高貴な身分の末裔――とか?」
「ユナの紹介なのに、そんなわけないじゃない」
「それがさぁ、水兵ちゃんったら、カナデさまの推薦状をもっていたらしいのよ!」
「お優しいカナデさまが、お情けをかけられたのじゃなくって」
――つらい……。俺のいる部屋の前で、俺の噂話を大きな声でするのは止めて……頼むから。
声が、まるで頭の中をハンマーで叩くように、ガンガンと響くのだ。ベッドの中で、俺は顔をしかめていた。
もしかして、部屋の中にまで突撃してこないだろうな……。
「カナデさまとまったく同じお味噌汁をつくって、侯爵さまがおかわりまでされたらしいけど……」
「カナデさまの推薦状に、お味噌汁って――アレッ? 私、気がついちゃったんだけど!」
メイドのひとりがひときわ大きな声を上げた。
――ああ、ついにバレたのか。秘密の幽霊調査はここまでだなと、俺は、頭痛の渦の中で、名乗り出る覚悟を決めた……。
「ま、まさか――! カナデさまがご幼少の頃に預けられていたところと、何か関係があるのかもしれないわっ!」
「……ありえる……!」
――ふぅ、話が別の方向へ飛んで助かった……。
出生記録の上では、俺とエリーセ姉さまは双子だ。俺は生まれてすぐに里子に出されていたが、姉さまが亡くなったので、実家であるリムウェア侯爵家に戻されたことになっていた。
「あらら、先輩方、こんなところでミーティングですかぁ? シェリ主任が探してましたよっ!」
いいタイミングでユナが部屋の前にやってきた。
「大変、もうこんな時間! それじゃ、ユナ、水兵ちゃんの面倒をしっかりみてやってよ。なんてったって、幻の日本料理まで作れる金の卵なんだからね!」
メイドさんたちは、それぞれの職場に戻っていった。
ほんの軽いノックの後、カチャリと扉が開くとユナが入ってきた。
「カナデさま、ご気分はいかがですか? 蒸しタオルと新鮮な果汁水をお持ちしました」
「ありがとう、ユナ。もう大丈夫よ」
昨夜の洋館での騒動は、古くなった建物が自壊しただの、偶然入り込んだ獣どうしの縄張り争いのケンカだの、適当なことが言われているらしい。
当然、これらの噂もユナが全部仕込んできたものだ。俺が蒸しタオルで身体を拭いてもらったり、果汁水を飲んだりする間に教えてくれた。
さっぱりしたせいか、頭痛はおさまってきたようだった。備え付けの鏡の前で銀髪をとかし水兵服に着替えていると、ノックの後に扉が開き、唯が部屋に入ってきた。
「おはよう、カナデちゃん。あら、お姉ちゃんが手伝ってあげましょうか」
「あ、唯姉、おはよう。スカーフの結び方がよくわからなくて……」
「コツがいるのよ。結び目を少しだけ崩せばふわっとするから……セーラー服だなんて懐かしいわ。カナデちゃんに着せられて、お姉ちゃん嬉しい!」
鏡の中には、修道服を着た黒髪聖女の姉にやさしくセーラー服を着せられている銀髪令嬢の妹、という妖しい雰囲気を醸し出す構図が映しだされていた。
くっ……なんだか頭痛がぶり返してきそうだ……。
俺は真っ赤になって、助けを求めるかのようにキョトキョトと視線をさまよわせた。
「――と、ところで、唯。その大きなトランクは、いったいなんなの?」
部屋の隅に置いてある、まるで海外旅行にでも行くかのような大きなトランクを見て、俺は聞いた。
「カナデちゃんったら、意識が朦朧としていたせいだと思うけど、夜会のことで私に大至急来るようにって言ったらしいわよ。そこまで真剣に考えてくれるのは嬉しいんだけど、もう、恥ずかしいから、夜会の手紙のことはふたりだけの秘密だよ」
編み込みブーツにミニスカートふうの修道服姿の唯が、大きなトランクを開くと、流行りのドレスやアクセサリー、メイク道具一式がぎっしりと詰まっていた。
「いきなりでどうしていいかわからなかったから、入るだけもってきたのよ。カナデちゃんに選ぶの手伝ってもらえばいいかなと思って!」
俺は思わず自分の顔が引きつるのが分かった。ちょっと油断して、夜会に呼んだらそうなるのか……。
「そ、そうだ、退魔師は誰に依頼すればいいのかな。司祭さま?」
「ううん、私ができるから心配しないで」
「へっ? 唯、それってどういう――」
唯はとまどう俺に構わず、トランクの内フタについているチャックを開いた。
そこには、銀の十字架、聖水が入っているようなビン、杭、ニンニク、銀の弾丸と装飾の施された回転式拳銃に至るまで、さまざまなオカルトグッズが入っていた。
俺は突然のことに目をぱちくりさせた。
「回転式拳銃をもってるなんて! 唯は射撃をしたことは?」
「ほら、グアム旅行とかによく行ってたじゃない。そこで元特殊部隊の人に教えてもらって、バンバン撃ってたから自信はあるわよ」
たしかに、唯はよく海外旅行に行っていたけど、射撃まで――。さすがにスイーツな毎日を過ごしているだけのことはある。
「この杭って、まさかね?」
「まず、聖水を振りかけて悪霊の動きを封じるの。そして杭を胸にドンッと突き刺すだけの単純なお仕事よ」
唯は手慣れたようすで、杭を刺すアクションをして見せた。
「もしかして、もう何回もやったことがあるとか?」
「ここは異世界ノエルスフィアなのよ。カナデちゃんだって、数えられないくらいの魔獣を倒しているでしょう? それとまったく同じことよ」
唯は涼しい顔で言った。
――うぅ、なんだって――あんな常軌を逸したような幽霊の相手を聖女の唯がしてきたって? 勇者の優人ならまだしも――。そうか、同じように唯も銀気持ちだからなんだ。治癒術師という肩書にとらわれて、退魔師のことはまったく頭の隅にもなかった。
目の前にいるのが誰なのか、片翼の女神の恩寵を受けたブレイバーのひとりだということをやっと理解した。
そして、俺は今さらながら、ここは異世界だと気がついたような顔をした。
「悪霊が侯爵さまを狙っているのなら、部屋で待ち伏せをかけていれば、必ずまた現れるはずよ」
「でも――、もしかしたら、お父さまは、エリーセ姉さまがたとえ悪霊であってもかまわないのかもしれない……。昨夜みた明かりの点滅は意図的なものだった。誰にも知られずに部屋に招き入れるための、なにかの合図かも――」
俺が煮え切らずに言うと、唯の目つきが厳しくなった。
「確かに、子を思う親であれば、その気持ちはわからなくはないけど……。だからといって、子に呪い殺される意味も必要もまったくないわ! エリーセさまも、悪霊になってとりつくのならば、まず敵である黒騎士でもやっつけるべきじゃないかしら?」
「そう……。もうこれ以上、お父さまを苦しめたくない……」
俺は、唯にいってほしかったのかもしれない、――エリーセ姉さまの幽霊を助ける秘密の儀式があると――。しかし、いくら異世界といえど、そんな都合のよい話があるわけがない。俺は改めて、自分の甘さを突きつけられた気がした。
「思いをいいように利用されて、悪霊になってしまっただけなのよ。天に帰してあげましょう!」
唯は胸を張って鋭い口調でいった。
「あの~、シェリ主任。あたしが、侯爵さまへのお食事を運びたいんですけどぉ……」
ユナが、食事を部屋に運ぶ主任メイドのシェリに声をかけていた。
「はぁ、何を言ってるんでしょう、この子は。侯爵さまは安静中なのよ。そもそも、ユナさんがまた何かしたら、怒られるのは私なんですよ」
「う~、主任。勉強のためにぜひ運びたいんですよぉ」
「ダメッたら、だーめです! まずはちゃんとマナーを身に着けてからにしましょうね」
「そこを曲げてください。かわいい後輩のためにっ!」
ユナはコブシを握って必死になって食い下がっていた。
「あと三回いったらおしおきですよ! って、あら、唯さまにカナちゃん。もう、安静にしていなくても心配ないのかしら……?」
「ごくろうさま。お父さまへのお食事は、私が運びましょう!」
俺は、頭に巻いていたバンダナを解いた。銀色の髪がキラキラ輝きながらこぼれおちる。肩の力を抜いて頭を振ると、銀髪がふわりと広がった。
前髪を手ぐしで整える間もなくシェリ主任は、
「あ、あなたさまは、カナデお嬢さま――――!?」
と、唖然としていた。
「ご迷惑をかけ通しで本当にごめんなさい、シェリ主任」
「ごめんね、主任。今回だけは、実はそういうわけなんだ。だれにも内緒だからね」
ユナは両手を合わせて頼んだ。
食事を受け取ると、俺たちはお父さまの執務室へ向かった。
コンコンと、お父さまの執務室の重厚な扉をノックする。
「失礼します。お食事をお持ちいたしました」
両開きの扉をそっと開ける。部屋は学校の教室より広く、豪華な応接ソファーセットや飾り彫刻付きの立派なデスクがあった。カーテンは閉じられていて、中は薄暗かった。
俺はハッとした。
お父さまが、深い絨毯の上に倒れていたからだ。
俺は慌てて勢いよく部屋に入ると、お父さまの元へ駆けつけようとした。
側面から素早い動きを感じた。
俺は持っていた食事のトレーで、猛烈な拳を防いだ。銀製のトレーが、ひしゃげ、ぶち抜かれる。
すかさず蹴り上げて、エリーセの姿をした悪霊の腹部にめり込ませる。
身体が勝手に動いていた。
「お父さまにまで手をかけるなんて許せない! もう、お前はエリーセじゃないッ! ただの悪霊よ!!」
自分に言い聞かせるように叫んでいた。
トレーで運んでいた皿が割れ、食事は飛び、ユナは悲鳴をあげてしゃがみ込んだ。
その間に、唯はお父さまの元へと駆けつけた。
だが、それに気を取られているわけにはいかなかった。
白いワンピース姿のエリーセの悪霊は、滑るような動きで近づいて、俺に掴みかかろうと手を伸ばしてきた。
俺の動作はそれよりも速かった。大きなデスクの上を横に転がり反対側の床に立った。椅子を掴むと盾にした。
エリーセの悪霊の手が椅子に触れるやいなや黒い霧に覆われると、一瞬にして椅子はボロボロと腐り果て崩れていった。
俺は手に残った椅子の背を、悪霊に向かって投げつけた。
エリーセの悪霊は、投げられた椅子の背当てを避けようともせず、鈍い音を響かせながらも頭で受けた。悪霊は俺の側へ近づいてきていた。
俺は剣に手をのばした。
エリーセの悪霊が鋭く反応し、なんの感情もない人形のような表情のまま、俺の方を向き直った。青ざめた酷い顔色だった。
悪霊の視線が俺の右肩から右腕を巡る。すると、ブラウンの乱れた前髪を振るように顔を上げ、不意にニタリと冷笑した。
まるで、勝ち誇ったかのように――――!!
全身が怒りで熱くなり、俺の邪魔な思考は無になった。身体が戦闘モードに勝手に入っていった。
俺の喉元を狙って、悪霊の青白い手が伸びてくる。
一歩引いて間合いを取ると、流れるように銀髪が揺れた。俺は手に剣を閃かせる。刹那、悪霊の首は、天井まで斬り飛ばされた。
唯の治癒術のおかげで、瘴気に冒されていた俺の右腕は、完全に回復していたのだ!
床に転がった首は、魔獣の咆哮のような声をあげると、どす黒い瘴気を吐き出した。
剣を鞘におさめ、白いワンピースを着た悪霊の身体と斬った頭部をみまわした。斬った感触が魔獣とは違い、なにかおかしかった。
見る間に、悪霊の頭部はプヨプヨと溶け出し、多数のグミのようになると、転がり身体に吸収されて、ひとつになっていった。
そして、あっという間に、斬り落としたはずの首が、そこに頭があるのが当然とでもいうかのように、元通りになっていたのだ。
俺はあっけにとられて動くことができなかった。だが、戦いの中でそれは致命的だった。
あっ、と声を上げる間もなく、エリーセの悪霊の回し蹴りが、逆に俺の首を刎ねようと、素早く振り上げられていた。
エリーセの悪霊は、なぜか涙を浮かべた泣き顔のように見えた。
俺はもう間に合わないことがわかっていながら、反射的に避けようとした。
運を天に委ねようとしたとき、
「動かないでッ!!」
唯の甲高い声がした。
修道服の中に隠し着けていたガンベルトから回転式拳銃を抜くや否や、悪霊へ向けて唯の構えた銃口が火を噴き、銀の弾丸を撃ち込んでいく。
銀気の込められた銀の弾丸は、魔獣ならば瘴気ごと消滅させる。
よろめき、バランスを崩した悪霊は、二階の部屋の窓を突き破って厚いカーテンを掴み裂くと、外へと落下した。
杭を手にした唯が修道服のベールを翻し、後を追って窓から外に飛び出した。
俺は唯の跡を追うように、窓から身をのり出して下を見る。
唯の右手の杭が銀色に光ると、凄まじいうなりをあげて悪霊の胸に突き刺さった。
あの杭は、エシュリンの楔なのかッ!?
悪霊は地面に磔にされた。
そして、エリーセの姿をした悪霊は動かなくなった。
……エリーセの顔は、ゆったりと笑みを浮かべているように見えた。
「唯、終わったの……?」
先ほどの、驚異的な回復力を見た後では、すぐには安心できなかった。
「心臓を杭で、エシュリンの楔で打ち抜いたから、悪霊の正体がたとえ禍ツ姫であっても生き返らないわ!」
きっぱりと唯は言い切った。
銀の弾丸、それにエシュリンの楔は、確実にとどめを刺したはずだ。
階下に降り、地に磔られたエリーセの悪霊に近づくと、じっと見つめた……。
「エリーセ姉さま……私、あなたの妹のカナデよ…………」
この世のものじゃない姉の変わり果てた姿に胸が詰まり、そっとささやいた。




