煉獄の巫女、猛る!
剣山から地上を見下ろしていた巫女、袴小夜子は徳島の電車に乗り、誤って地獄に渡ってしまった少女、アリスと結愛が気がかりになった。
(あの二人は生身の人間、しかし目的はただの行楽に来た訳じゃなさそうだわ…何かしら…二人を蠢く大きな歯車は…)
小夜子は透視しアリス達の事を探る事にした。
(アリス…あの子は勇者のようね…しかし今は剥奪されて普通の女の子になってる…でも可哀想だわ、勇者から剥奪された今だからこそ助け出さなくては…!)
小夜子自身も魔法少女、勇者とは違うがしなければならない事は勇者とそう変わらない。
ただし勇者の力を持てれば戦う事が出来るものの勇者としての心の拠り所も無くし、武器も奪われたアリスは今はただ1人のか弱い少女に過ぎなかった。
そのアリスが触手に捕らわれたままでいるのを見過ごせない小夜子は徳島の電車に乗ってアリスを救いに地獄へ向かった。
ーーー徳島の地獄世界。
禍々しい瘴気が漂う。
『生身の人間だ!』
『しかも年端もいかぬ少女だ!』
『二度も生身の女の子が来るなんて俺達ゃついてるぜ!』
地獄にいる自縛霊達は地獄を歩く小夜子に向かい囁きあっている。
(おめでたい地縛霊達ね、聞こえてないと思ってるのかしら…)
アリスや結愛などの普通の人間には聞こえないが霊感の強い小夜子には霊達の声はしっかりと聞こえた。
あと、醜悪な姿も見えたが小夜子は表情も変えず、あたかもそこには何も見えなく、聞こえないかのように颯爽と歩き続けた。
しかしその地縛霊達は悪霊、相手の運気を狂わせ、それを餌にしているのでこのまま小夜子を見過ごそうともしなかった。
『あの女の運気食ってやる!!』
『あっ、ずりーぞ!!』
悪霊達が小夜子に襲いかかる。
肉体的に食うのではなく運気を狂わせて破滅に向かわせそれを餌にしようとしているのだ。
しかし小夜子は声を放った。
「見えてるわよ」
『な、何!?』
小夜子は目線を悪霊達に向けて一言放った。
悪霊達は戸惑う
「このまま昇天しなさい!悪霊退散!!」
小夜子は悪霊達が止まった隙に薙刀を空気中から出現させ、悪霊達をまとめて祓った。
『ギャアアアァ!!!』
悪霊達は祓われ、跡形もなく無くなった。
「哀れな悪霊達、無残な死に方をして人を呪う事にしか目的を見出せなくなっていたのね…でも安心をし、これで貴方達は一から生まれ変わり、出直す事になる…どんな姿であれ…」
小夜子は手を合わせて悪霊達の冥福を祈る。
(あのアリスと結愛も悪霊の餌食になってるようね、結愛は元々運気無さそうだけどアリス…彼女は今どん底の中でもがいている…助ける必要があるわ)
メアリアン含め、結愛にも裏切られ、破滅に向かっているアリス、このままでは崩壊も危ぶまれている。
小夜子はクオーツを取り出した。
「今は触手に捕らわれてやりたい放題にされているみたい、貴女は喜んでいるみたいだけどこのままでは危ないわよ、私が助けに行くから!」
小夜子は聞こえないはずのアリスに声を放った。
『誰?そこにいるのは誰なの??』
小夜子の脳裏にアリスの声が。
(聞こえているようね、そのうちわかるでしょう)
小夜子はあえてこれ以上はテレパシーを取らずにアリスのいる廃墟の街へと向かった。
小夜子は悪霊を退治しながら地獄を歩き続ける。
地獄にはあらゆるトラップが待ち構えるが巫術を持つ小夜子には通用しなかった。
巫術とは霊障への耐性、先見性の事である。
しかし小夜子の巫術を持ってしても敵わない出来事がその内起こる事になるとは小夜子はこの時点では思いもしなかった。
しばらく小夜子は鬱蒼とした地獄の街を進むと、奥から獣臭い臭いが漂ってきた。
ガルルルル…獣の唸り声が小夜子の耳に響き渡る。
小夜子は感じ取った。
その獣を何者かが通らせぬように放ったのだと。
(ヒロと言う狂科学者の放った刺客ね、アリスさんを助ける前に奴と戦わなくてはならない、少しばかり手こずる事になりそうね…)
小夜子は巫術を高めて気合を入れ直した。
小夜子の体から闘気が沸き立つ。
ゴオオオと炎のように舞う小夜子の闘気。
その闘気を獣は感じ取ったのか、唸り声がピタリと止んだ。
獣の目前に来ると再び獣は唸りだした。
『人間の娘!ここは通さんぞ!』
と言わんばかりに。
「通す気が無いのは覚悟の上!ならば私も遠慮せずに全力で戦うわよ!」
小夜子は薙刀を器用に旋し、体をほぐす。
臨戦態勢となり、薙刀を構えて鋭い目線を獣に向ける見目は可憐な少女。
可憐な少女にして心は漢の小夜子にはあらゆる魔物にも臆さず危機も厭わない。
『グガアアアァ!!!」
「やああああぁ!!!」
小夜子と獣の一騎打ち。
小夜子は巫術により力が何倍もブーストされ、獣ともひけを取らず押し合っている。
獣は小夜子の薙刀を喰らいつき、一思いに噛みちぎろうとするが、小夜子の強力な巫術で薙刀も強固になっており、獣の強力な顎を持ってしても噛みちぎるのは不可能。
ブウン!!
噛みちぎる事が出来ないと悟ったのか、獣は顎で小夜子を投げ飛ばす。
シュタッ!
小夜子は目線を獣に向けたまま、器用に着地した。
「ガルルルル…」
小夜子と獣は睨みあう。
「軻遇突智の舞!!」
小夜子は舞って炎の渦で獣を払いのけようとするが獣は炎を器用に躱し、一歩も譲らなかった。
(強い…余りに魔力を使い過ぎると私自身の身が持たない…それといち早くアリスさんも助けなければならないっ!)
小夜子はギリっと口を噛み締め、苦虫を噛んだような表情で汗も全身に染み出てきた。
体力の消耗と魔力の消耗、ダブルパンチで小夜子は極限の状態だった。
小夜子はかつての師匠アヤネの言ったことを思い出した。
『小夜子、熟練した魔法少女は極限の状態においてこそ力を発揮するものなの、これをマキシマムマジックの解放と魔法少女の間で言われてるのよ』
(そう、私は数年魔法少女を続け、幾多の危機を乗り越え、徳島を守ってきた、アルティメットま○か様、私に奇跡を!マキシマムマジックの解放を!!)
小夜子は強く念じた。
すると小夜子の炎のような赤とオレンジを基調とした闘気は虹色に変わる。
ま○か様!小夜子は見た、女神の優しく微笑む姿を。
「勝運は我にあり!チェスト!!」
小夜子は獣を打ち破った。
「グガアアア!!」
獣は断末魔を上げてそのまま倒れ込んだ。
小夜子は荒げる息を整える。
(魔力を大分消耗してしまった、でもこれでアリスさんを助けられる!)
小夜子は魔力と体力を消耗しふらついた状態でありつつも触手に襲われているアリスを救いに向かった。




