ネコかぶる
あたしの名前は子猫香小6の12才。
ちびすけで語尾は「にゃん」。
みんなから愛されるためのキャラづけだ。
人気者だと迫害や差別から逃れられるからね。
うちは貧乏だからいじめられないように対策だ。
おかげでみんなからのめちゃくちゃ好感度はいい。
たまには香って呼ばれたい今日この頃。
うちはすごい貧乏だけど、両親と妹と弟の5人で楽しく暮らしてる。
母は売れない漫画家で父は売れない脚本家だ。
2人とも怠け者だから一生売れないと思う。
両親はアルバイトしながら3人の子供を養っていた。
あたしも新聞配達で家計を助けてる世界一立派な小学生だ。
弟と妹の面倒も見てるし家事も手伝ってる。
二宮金次郎のように学校に銅像を建てて欲しい。
貧困からなんとか抜け出したいからあたしは自分の特技を磨くことにした。
あたしは異常に鼻がいいのだ。
隠されたおやつの匂いなんて一発でかぎあてる。
あまりにも鼻が良すぎて香害の被害を避けるために常時、口呼吸している。
柔軟剤の匂いもダメだし香水もダメ。
いい香りなんだけどね。頭がくらくらしてめまいがする。
この鼻の良さを鍛えに鍛えた。
かくれんぼの鬼ばかり担当したり、目隠しして匂いだけでフルーツグミの細かい香りの違いを嗅ぎわける訓練をした。
おかげでスクランブル交差点に大量に人がいても目的の人をかぎ分けることができる。
フルーツグミも匂いで間違えることは絶対ない。
あたしはこの特技を最大に活かせる方法を考えた。
香水の調香師とスパイスカレー屋さんがいいと思った。
どんな秘密のレシピも分析して再現できるからね。
でも、お店を開くにしても元手がいる。
そこであたしはラスベガスで冬に開催される世界ポーカー大会に出場することにした。
ちょうど12才から出場資格がある。賞金は10億円。
参加費は100万円だけど、それはカジノのポーカールームで稼ごう。
ポーカールームはお金を賭けてポーカーしたい人たちが集まってる場所でプロもいる危険な鉄火場だ。
あたしは新聞配達で貯めたベガスの片道航空券を50,000円で入手した。
ポーカー大会のメイインイベントは勝ち残れば優勝まで1週間かかる。
だんだん人数が削れていく仕組みだ。
家族には内緒で出発した。置き手紙はしてある。
「1週間留守にするにゃん♩億万長者になってくるにゃん♩」
ネコ耳フードのついたパーカーをかぶりネコ型リュックを背負ってあたしは飛行機に乗り込んだ。
ラスベガス空港からベラージオっていう噴水で有名な超高級ホテルまではシャトルバスでたどり着いた。英語はこれまでほとんど使ってない。
ベラージオホテルの内装はすごくゴージャスでお城の中に入ったみたいだった。
一階がカジノだからさっそくポーカールームに入る。
カウンターで10,000円分のチップを買って1番低いレートのテーブルに向かう。
これで負けたら一文なしだからホームレスだ。
ベガスにはギャンブルで負けたギャンブラーがホームレスになって地下トンネルで暮らしているという。あたしもその1人になるのだろうか。
なーんてね。ぜったいありえません!
数年前の法改正で子どももギャンブルしていいことになったけど、こどものギャンブラーはほとんどいないから目立つ。
3人おじさんがいる席に座るとめっちゃ注目した。
「ハローハローにゃん♩」
英語で笑顔であいさつすると、おじさんたちはみんな笑顔になった。
ディーラーの女性も微笑んでる。
あたしはプレイするのはテキサスホールデムポーカーだ。
テキサスホールデムは、手札2枚と共通カード(コミュニティカード)5枚の計7枚から5枚を選び、役の強さを競うゲームでプリフロップ、フロップ、ターン、リバーの4ラウンドでベットを行い、最後まで残るか、ショーダウンで最強の役を持つプレイヤーがチップを獲得する。
カードが配られて勝負がはじまる。クラブの3・ダイヤの7だ。
しょっぱなからめっちゃ弱いカード配られる。
あたしはポーカーフェイスできないから困った顔をしてしまう。
あたしが最初にアクションをしなきゃいけない。
強く見せかけよう。ブラフでチップ一枚だけ残してぜんぶかける。
みんな降りてくれ!
心の中で祈る。
願いは神に届かない。他のプレイヤーはみんな参加だ。
おわたぁ。あたしは頭を抱えた。
みんなニヤニヤしてる。
3枚のカードが開かれる。フロップでもあたしのハンドは弱いままだ。
グーのこぶしでテーブルを2回叩く。チェックのサインだ。
チップを上乗せしませんってことね。
もう負け確定だ。あきらめよう。
おじさんたちは時間かけて考えてる。
あたしはリュックから大好物のフルーツグミを取り出して食べる。おいちい♩ぶどう味が1番好き♡
最終的にあたしといかついおじさんの勝負になった。
巨躯でスキンヘッドだからまじ怖い。
腕にイカリの刺青をしてるしポパイみたいだ。
ポパイおじさんはハンドを開く。
フルハウスだ。あたしは最弱のハンドを見せてテーブルにあごを乗せて涙ぐんで見せる。
おじさんたちはHAHAHAと笑ってる。
とほほ。やっぱりふつうに勝負してちゃ勝てないよね。
あたしはぺろっと舌なめずりした。




