36.仮条件での合意
いつもお立ち寄りいただきありがとうございます。
突然の更新お休みをしてしまい申し訳ありません。
人生初の夏バテをしておりまして、絶賛体調不良中です…。
体調が整うまで少し更新をお休みさせていただきます。
詳細は近況報告にてご確認くださいませ。
三つのお願いを聞き終えたワン氏が、少し困惑したような空気を醸し出している。
どうしたのかしら?
ちょっと欲張りだったかしら…。
そんなことを考えていると、ワン氏が遠慮がちに話し始めた。
<伺った三つのお願いは、少し手間は掛かるが、難易度的にはさほど高くはない。ラパンの件に関しては、情報や資料などはお渡し出来るが、入国は断わられる可能性すらある。これでは対価として成り立たないのではありませんか?>
ふふふ。やっぱりワン氏を見込んだ私の目に狂いはなかったわね。
対価が多すぎると言うならまだしも、足りないんじゃないかなんて普通は、心で思っていても言わないもの。
(アレッシオの心情:おいおい、ワン氏が自ら条件に不足があると言い出すなんて…。ワン氏は世界を巡って、各地の狡賢い相手と渡り合っているんだ。相手が見せた隙や弱みを突くことこそあっても、自分から補いにいくなんてするはずがない。どうやらマリーナに影響を受けたか…。うちの嫁はとんでもない人誑しだな)
<ワン氏、いまはこの条件で十分です。ラパンの件も伝手が全く無かったので、聞いてみてくれるだけでもすごく有り難いんです。>
私がそう言っても、ワン氏は少し納得出来ていないような表情をしていた。
その時、カルロが助け船を出してくれた。
<ワン氏、今は秘匿情報の内容を知らない状態なので、これ以上の判断は難しいと思います。だから、情報をちゃんと知って、それからもう一度条件について話し合うのはどうでしょうか?>
おお~!さすがカルロ!!
このまま情報の開示の方に意識を持っていってしまえば、条件にまで気が回らなくなるよね。
カルロってばナイスアシスト!
(カルロ:あぁ、あんなに嬉しそうにこっち見て…。マリーナ、喜んでいるところを申し訳ないんだけど、僕は問題を先送りしただけなんだよ。きっと、マリーナが考えていることとは、逆の事が起こると思うよ。ラオ便は、情報が命の商人や貴族にとって、とてつもない威力を発揮する情報伝達方法だ。ワン氏はこの価値を正しく理解するだろうから、あれだけの条件では絶対に納得しないはずだよ。もっと条件を足せと迫られてオロオロするマリーナの姿が目に浮かぶなぁ…)
◇
カルロの言葉に少し考えていたワン氏だったが、このままでは埒があかないと思ったのか、仕方ないというように小さく息を吐いた。
<ふぅ…確かに、このままではお互いに条件の正しい重さが量れませんからな。では、いまはその条件で仮成立と致しましょう。>
<良かった!では、仮条件での秘密保持契約書をすぐに作成しますので、少しだけお待ちください。>
ワン氏にそう伝えた後、カルロからフリオを借りて秘密保持契約書の作成をお願いした。
カルロの執務補助もしているフリオなら、こういった契約書の作成もお手の物。
その間、メイには新しいお茶とお菓子の用意をして貰う。
二人には、書類の作成とお茶の準備が終わり次第、一旦部屋の外で待機して貰うように指示をする。
それに伴って、ワン氏にも室内に入れている護衛を外に出して貰うようお願いした。
こちらも、契約書やお茶の手配が済んだら、フリオとメイを外に出すと伝えたところ、ワン氏はアッサリと承諾して、すぐに護衛には扉の外で待機するよう指示してくれた。
それに対して護衛は、<護衛を外に出すなんて危険だ!認められない!!>ってごねてたけど、ワン氏に<主人の指示に異を唱えるつもりか!!>と一喝されて、かなり不服そうな顔をしながら部屋の外に出て行った。
<皆様、ご不快な思いをさせてしまい申し訳ありません。あの護衛は、ホンスーで御贔屓にして下さっているある家から、雇い入れてやって欲しいと頼まれて、最近雇い入れたばかりの者達でして。使えるかどうか近場の取引に同行させて試しているところなのです。>
なるほど、どうもワン氏が連れている護衛にしては、質が低い気がしていたのよね。
だって、色々な世界を巡るって、それだけ危険が多いってことよ。
質が低い護衛では、自分や商品を守れない。
ワン氏がそんなところで費用をケチったり、妥協して護衛を選んだりするはずないものね。
<なるほど、通りで…。いつもの護衛では無いと思ってたんだ。いつもの護衛達は、我が家に引き抜きたいくらいの精鋭ばかりだからな!>
<侯爵様。お褒め頂き恐縮ですが、引き抜きだけは勘弁してください!私の命綱なのですから。>
<ははは。もちろん、分かっておるわ。質の高い護衛は、商人や貴族にとって貴重な財産だ。それを奪うような真似はせんよ。>
お義父様とワン氏がそんな冗談交じりの話をしているのを聞いていると、お茶を用意しているメイの動きが一瞬止まったのが見えた。
外にいるレイに何かあったのかしら…。
契約書を作成しているフリオは、内容に不備が無いかカルロと一緒に確認している。
それを確認して、お茶の準備を終えたメイを手招いた。
すぐに気付いて側に来たメイに、小声で問い掛ける。
「[小声]メイ。レイに何かあった?」
「[小声]…はい。外でワン様の護衛がレイに絡んでいるようです。」
「[小声]はぁ…仕事中に他家の使用人に絡むって…バカなのね。」
「[小声]はい。西部のソウ家の所縁の人間だと名乗っているようです。」
「[小声]ふーん。メイはその家について知ってるの?」
「[小声]はい。リン家と同じ古くから在る武家で、なぜか一方的にリン家を敵視している家です。」
「[小声]なるほど。それでさっき、リン家って名前に反応したのか…。」
「[小声]そのようですね。契約書の確認が終わったようなので、加勢にいって参ります。」
「[小声]ふふ。大丈夫だと思うけど、気をつけてね。」
「[小声]はい。遅れを取ることはありませんが、ちゃんと気をつけます。」
作成された契約書を双方が確認し、署名を行う。
その間に、メイとフリオが部屋の外に出た。
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