48.5 閑話 通信手段についてのちょっとだけ長い補足
前回のお話の補足的な閑話です。
【 通信手段についてのちょっとだけ長い補足 】
みなさん、前回のお話の最後の方のお父様の台詞で「アレッシオにはある程度は伝えてある」って言葉にあれ?どうやって?と思われた方は居るかもしれません。
だって、スキル持ちが乗らない船だとフェレーリ領まで片道1ヶ月掛かりますし、1ヶ月半では往復出来てないから、伝わってるか分からなくない???って思われた方、大正解です!!
中世ヨーロッパ頃の通信手段といえば、『人』が馬車や早馬などで届ける、『鳥』を調教して伝書鳥として短い文章を遣り取りする、などが主流。
この世界でもそのへんはほとんど変わらなくて、同じ国の中や隣国くらいなら伝書鳥や、商会の馬車などで手紙を運ぶことは可能だけど、それ以上の距離(いくつも国を跨ぐなど)になると、その連絡方法すら数ヶ月を要するのよ。
しかも、通常の伝書鳥は帰巣本能の強い鳥を使っていて、ある程度遠くで離されても自分の巣に帰れるっていう性質を利用しているのだけど、あまりも遠くになってしまうと分からなくなって飛べ無くなってしまうらしいわ。最大でも1000kmくらいが限界みたい。
なんでこんな話をするかっていうと、前回の定例会で3家が集まった際に、今後の情報共有をどうするかって話になったのよ。
当然だよね。同じプロジェクトを同時に進行していく上で、タイムラグが少ない情報の共有が為されることは重要で、必須の事だもの。
ちなみに、この北大陸はロシアとほぼ同じくらいの大きさなので、南北に約4000km、東西に約9000kmくらいあるの。
メーア王国は、大陸のほぼ東端にある縦長の国なので、国内でも南端にあるバイエルン領から最北端の領地までは2000kmくらいある。(日本は北海道から沖縄までで約3000km)
バイエルン領からアイヒベルク領までなら国内だし、さらに距離も700~800kmほどなので、伝書鳥でも1日で飛べる距離ってことで、情報の共有は比較的リアルタイムで出来るんだけど、問題はフェレーリ領との連絡に時間が掛かりすぎることだったの。
だって同じ大陸の国とはいえ、ムリーノ王国は西端の国で、メーア王国はほぼ東端の国なので、その距離は約8000km。
伝書鳥の飛行限界が1000kmほどなので、伝書鳥を使うのは無理。
じゃあ、馬車はどうよ?って思っても、途中に大小の国をいくつも跨ぐので、山越えや国境越えなどで馬の交換・越境手続きなどを加味すると6ヶ月以上は間違い無く掛かるらしい。
半年以上も移動とかしんどすぎる上に、鮮度が命の情報なのに価値が無くなっちゃうよ・・・。
(盗まれたり、途中で破損するリスクも高いしね。)
船での交易が行われるまでは、同じ大陸の国同士なのに、ムリーノ王国とはほとんど交流が無かったのもこの辺りが要因だよね。まあ、それでも船で片道1ヶ月は掛かるんだけど・・・。
(個人間でもスマートフォンやパソコンで、世界中の人とリアルタイムにやり取りが出来てしまう前世を知っていると、果てしない時間に感じるよね⤵)
てな訳で、フェレーリ家との情報の共有について当主達が頭を悩ませていた時に、ワタクシちょっと思いついちゃいまして。
この世界にはスキルがあるじゃない?
通信系のスキルがあれば一番早いとは思うんだけど、それも8000kmも離れていれば難しいだろうし、そういう人は国とかが囲い込んでそうだしね。
そこで、お父様達に『テイマー』のスキル持ちは居ないのかと聞いてみたの。
答えは『いる』だったわ。しかも他のスキルと同様に範囲限定のテイマースキルはあまり好まれていないらしい。
特に『テイマー(魔物)』は王城や中央付近ではほとんど魔物が出ないので、かなり見下されているのだとか。
そう、そうなの!この世界って、魔物がいるのよ。(『5.パッシブスキル???』の話中で少しだけ出てきます)
RPGものみたいな如何にもなモンスターって訳じゃ無いんだけど、通常の動物とは一線を画す強さや能力を持っているものを魔物と定義しているみたい。
多分人間にもスキルが与えられているように、動物の中にも神様からの恩恵を与えられる個体が居て、それが独自の進化や繁殖をしたんだじゃないかっていうのが、今日の魔物研究者の説らしいよ。
そこまで聞いちゃったら、あとはお父様達に『テイマー(魔物)』のスキル持ちを速やかに保護するようにお願いするしかないよね!
お父様達はいまいち分かっていない顔で、なぜ???と困惑していたので、良いこと思いついた~♪っていうテンション高めなまま話し始めた。
バイエルン領はこの国で唯一の貿易港なんだけど、海だけじゃ無くて山にも接している領なのよ。
南側を海と港、西と東をそれぞれ山に囲まれている領地なのだ。
そのうち、西側に接している山の頂上付近に鳥型の魔物『ラオプフォーゲル(通称ラオ)』というのが生息している。
ラオは、大陸間を僅か数日で移動可能な魔物として有名で、どの大陸でも見ることが出来るという、飛行速度が速いってことくらいしか注目されていなかった魔物なの。
でもよく考えてみてよ!大陸間の移動が数日で出来るのよ?
『テイマー(魔物)』のスキルで手なずけて貰えば、超長距離での手紙の遣り取りが可能じゃない。
てなことをお父様達に語ってみたんだけど、話を聞いたお父様達は、
「マジか・・・。これは手紙輸送の概念が変わるぞ!とんでもない事になる。」
「とりあえずはこの3家間でのやり取りに限定しよう。国が動き始めると、こちらの身動きが取れなくなる!」
「『テイマー(魔物)』」のスキル持ちの保護と、『ラオプフォーゲル』のテイムを速やか且つ、密かに行わなくてはならん!!」
と慌ただしく動き始め、あっという間に不遇な環境に居た『テイマー(魔物)』のスキル持ちを保護し、『ラオプフォーゲル』のスキルによるテイムを行っていった。
メーア王国で現在登録されている『テイマー(魔物)』のスキル持ちは2人で、なんと親子(父と息子)で同じスキルを授かった人達だった。
父親の方は、魔物学者だった両親の影響で赤子の頃から魔物に囲まれて過ごしていた事もあり、3歳の洗礼の儀式で『テイマー(魔物)』のスキルを得て嬉しかったそうだ。
そして自身も魔物に好かれやすいスキルを活かして、魔物学者となったらしい。
その後、結婚して息子が生まれたが、魔物に囲まれる生活に嫌気がさした奥さんが、赤ん坊を置いて出て行ってしまったので、子煩悩な魔物の力を借りながら子育てしてきたらしい。
そりゃあ、その環境で育てば息子さんも魔物大好きだし、スキル持ちになるよね。
魔物に囲まれる生活だったので町中では暮らせずに、仕事も安定しなかったので、なかなか苦労したようだった。
我が領に是非!とお誘いしたら、大喜びで親子で来てくれることになったと聞いて、楽しみすぎて小躍りしてしまった過去は是非とも忘れて欲しい(恥///)。
テイマー親子は、『ラオプフォーゲル』のテイムとその運用についても大変興味を示してくれて、是非やらせて欲しいと言って貰えたので、西側の山の中腹辺りに大きめの山小屋を建てて、そちらで親子とこれまで一緒に暮らしていた魔物達が生活できる場を用意したら、素晴らしい職場だ!と凄く喜んでくれた。
その後、彼らの研究によって『ラオプフォーゲル』が各大陸に渡る時に、どうやって正しい方角を見定めているのかが解明され、さらに野生のラオとテイムされたラオでは、さらに違う能力を発揮することを突き止めたのだ。
野生のラオは、各大陸にいる『ラオプフォーゲル』の波長(生き物固有の魔力みたいなもので人間にもある)を感じて、大陸を隔てていても仲間(同じ波長)を目掛けて飛ぶことで、正しい方角に向かうことが出来るのだとか。
一方でテイムされたラオは、野生のラオと同じ能力を持ちつつ、さらにテイムしたテイマーの固有波長を覚える事が出来るらしい。
だから、固有波長を閉じ込めることが出来る石(固有石)にテイマーの固有波長を入れて、相手に渡しておけば、固有石を目印に飛んでいくことが出来るんですって!
フェレーリ領までの距離(約8000km)なら、休憩しながらでも3~4日程で着いてしまう。
しかも、魔物なので食事は自分で狩りをすることで調達可能で、道中の餌の用意が不要なのも大変有り難いよね。
ちなみに、アイヒベルク領との間で何度か試験飛行をしているが、ほんの数時間で着いてしまうので、早すぎるとお父様達も苦笑いがでる程だったみたい。
ここまでの成果とこちらのテイマーの固有石をもって、フェレーリ家が自領に戻っていった。
それから数週間後、こちらから送った『ラオプフォーゲル』がフェレーリ家からの報告とあちらのテイマーの固有石を持って戻ってきた。
報告書によると、ムリーノ王国でも『テイマー(魔物)』のスキル持ちを1人保護出来たこと、『ラオプフォーゲル』も無事に数羽テイム出来たらしく、ひとまず連絡先は限られるもののホットライン的な連絡手段が出来た事は、大変大きな出来事だった。
今後のやり取りはこれで、最大でも数日のタイムラグで相手に届けられるようになったので、かなり頻繁に情報共有がされて、プロジェクトの進行が格段に早くなった。
この方法が国に知られれば、『テイマー(魔物)』のスキル持ちの囲い込みや、技術の献上を求められる可能性が高いので、当分は3家での連絡のみの使用に限定して秘匿し、不遇な『テイマー(魔物)』のスキル持ちを見かけたらコッソリ保護する方向で秘密保持契約を結んだのだった。
というのが、冒頭で話していた「アレッシオにはある程度は伝えてある」という台詞のちょっとだけ長い補足でした!!(パオロ&カルロもラオ便でちょくちょく家に報告と連絡入れてました。)
【 補足の余談[笑]】
ちなみにラオでの超高速便はプロジェクトの報告やそれ以外でも活躍していた。
カルロとマリーナも報告書と一緒に送って貰ったり、それが無くても頻繁に手紙をやり取りするようになっていた。
お互いがいま勉強している事や読んでいる本などを教えることで刺激を与え合い、マリーナはもちろんカルロの意欲にガンガン燃料が投下され続け、マリーナに進められた言語の習得なども積極的に行っていき、とんでもない神童が誕生していた。
マリーナにしてみれば『打てば響く』カルロの返答が楽しくてたまらず、自分と共通の話が出来る5歳児の異常性に気付かずに、その後も交流を続けたので、カルロは前世持ちのマリーナにも引けを取らない知識と言語能力を身に着けていくのだった。
(マリーナがどこに行って、誰と話すのか友達なら全部分からないとダメだよね!マリーナが知ってる言葉は全部教えて貰わなくちゃ!!)
距離を置けばマリーナへの執着が薄れると考えていた大人達にしてみれば、超長距離をものともしないこの通信手段は大変利便性と重要性が高いのだが、カルロの熱が冷めないという点に関してだけは頭を抱える事態となったのだった。
【うん、みんなもう諦めた方がいいよ・・・。by作者】
いやぁ・・・。ラオ便のお話を考えたら楽しくなってしまいまして、補足とは・・・?という事態になってしまいました。本当にすみません(ノ_ _)ノ
最後まで読んでいただきありがとうございます(ღ˘⌣˘ღ)




