29.本日の報告です 複数視点あり
主人公の自国語は「」、は外国語は<>で表記しています。
船を降りて馬車に乗り込む頃には、もう日も傾いており、船の中では分からなかったけど、思ったより時間が経っていたようだ。
さらに港に長く居た事で、潮風で髪がパサパサになっていたので、夕食の前に入浴の必要がありそうだと、慌てて邸に戻って、各自部屋で身支度を調えていたら、すぐに夕食の時間となってしまった。
3家が滞在中は、初日のように晩餐とまではいかないが、都合のつく人は揃って夕食を取ることになっているので、いつもより華やかな夕食でとても楽しい♪
しかし洗礼の儀式以来、初めての外出の割には動き回ったので、夕食を食べ終わる頃には、私はすっかり眠気で頭がふらふらと揺れてしまっていた。
この後、サロンに移動して、食後のお茶やお酒を飲みながら今日の報告があるはずなので、頑張って起きて居ようと思うんだけど・・・3歳児の身体は言うことを聞いてくれず[泣]
ふらふらして危ないという理由で抱っこしてくれていたギル兄様の、背中を叩くとんっとんっという優しいリズムに、とうとう陥落して夢の世界に旅立ってしまいました。あしからず。
◇◇◇
【 食後のサロンにて Side ギルベルト 】
先ほどまで、寝ないで頑張ろうとしていたマリーナだったけど、外出に慣れていない3歳の子があれだけ動き回れば、相当疲れていたはずなので、眠ってくれて良かったよ。
腕の中で眠っているマリーナは天使以外の何者でもないので、大変離しがたいところではあるが、本日の報告を父様達にしなくてはならないので、仕方なく、ほんっと~に!致し方なく、マリーナの専属侍女であるメアリーにマリーナを寝かせるよう指示をして渡した。
はあ、天使が腕の中から居なくなってしまった・・・やる気が出ないな。
でも、このプロジェクトはマリーナの発案だし、ちゃんとやれば「ギル兄様、凄い!カッコイイ!」って言ってくれるはずなので、それを糧に頑張りますかね。
さて、父様達に本日の報告をしますか。
当主達は、それぞれ妻を伴ってソファに座り、食後のお茶や酒を飲んで寛いでいた。
他のメンバーも近くに座って、紅茶やジュースを飲んで談笑している。
<みなさん、お待たせいたしました。>
<ギル、お疲れ様。マリーナは寝たのかい?>
カルロも居るので、ムリーノ王国語で話し始めたが、特に説明しなくともムリーノ王国語で返事をしてくれたので、そのまま話し続ける。
<はい。たくさん動きましたから疲れていたようです。先に部屋に戻しました。>
そう言うと、今日はあまりマリーナと話が出来なかった大人達が残念そうな表情をした。
まあ、私もマリーナとあまり話が出来ない日があれば、気持ちが落ち込むし、やる気も起きないので、大人達が残念に思う気持ちも大変よく分かる。
それでも、すぐに気持ちを切り替えたようで、表情が引き締まったので、そのまま報告に移ることにする。
<さて、ではギル、本日の視察の報告をしてくれ。>
そう促されたので、孤児院での視察内容、管理事務所での協力依頼、フェレーリ侯爵家の商船での聴取について、要点を整理して説明した。
<以上が、本日の視察の報告となります。報告書にも詳細をまとめて後ほど提出致します。>
当主達が一様に難しい顔をしているが、気になっているのは下級船員達から聴取した内容についてだろうね。
<ギル、報告ありがとう。孤児院と管理事務所の件は、そのまま君たちで進めてくれ。船員達から聴取した内容に関しては、少しこちら側でも調査が必要になるので、少し待って欲しい。まさか、言葉が通じない者をターゲットにした悪質な行為が行われていたとはな。警備隊が機能していない点も気になるし、組織的な犯罪の可能性もあるので、ここは大人に任せて欲しい。>
やはり、その部分は大人達の対応になるか、警備隊などが関わっているとなると、流石に私たちではまだ対処は難しいな。
やるべき事はたくさんあるし、ここは大人しく調査結果を待とう。
<はい、よろしくお願いいたします。では、報告書を作成致しますので、これで下がらせて貰います。>
<分かった。あまり根を詰めずに、適当なところで休みなさい。お疲れ様。>
さて後は、今日のうちに視察の報告書を作っちゃって、明日には今後の方針なんかを決めちゃわないとね。
早く終わらせるためには、みんなに手伝って貰わないと!
カルロは流石にもう休ませるが、他のメンバーは遠慮無く働いて貰うとしましょうか。
(不穏な気配を感じたのかパオロが逃げようとしているけど、もちろん逃がすわけないよね♪)
◇◇◇
【 残った大人達 Side ライナー 】
子供達が部屋へ引き上げた後、女性陣も入浴などで部屋へ引き上げていったので、男性陣だけになったサロン。
少し重たい話になりそうだったので、酒とつまみの用意をさせた後は、使用人を下がらせている。
<さて、さっきのギルの報告だが、父さんどう思った?>
<ああ、儂も色々な国に行っているから、他国の酒場や店で買い物をすると、高い金を取られることがあるのは身をもって知っている。だがそれはあくまでも他国の人間全部がそうだと思っておった。他の町や港でもあるような現地の人間と旅行客用の値段の違いだと思っておったんじゃ。だが、さきほどの報告では、外国語が分からない者への犯罪まがいの行為が横行しているという。アンカーでもそのような事がまかり通っていたとは不愉快極まりない!警備隊の件に関しても早急に調査を進めなければならん!!>
自分のお膝元であるアンカーでも、そのような行為をする者達が居たという事実にショックを受けると共に、絶対にそのままにしておいてはいけないという気持ちは一緒のようだ。
父ほどでは無いが自分も船で他国に行くこともあるから、父の憤りも良く理解できる。
でもこれに関しては、うちと同じように海外の貿易を行う商会を営んでいるフェレーリ侯爵家も似たようなものだろう。
何せ今日の報告は実際に、フェレーリ侯爵家の商船の下級船員達からの話なのだから、
<そうですね。仮に酒場や店などが結託しているような組織的な犯罪だった場合、これからギル達のプロジェクトが始まると、自分たちの商売が妨害されると邪魔してくる可能性だってありますからね。それに、いまは大きなトラブルになっていないとはいえ、このままではいずれ取り返しのつかない自体になると簡単に予想出来てしまいますから、徹底的に洗いましょう!>
そこにアレッシオとクリストフも加わり、
<賛成だ!私も今回の話を聞くまでは、ヴェルナー殿と同じようにあくまでも旅行者達への上乗せ程度にしか考えていなかったが、どうもそんな生やさしい者では無さそうだ。うちの港でも調査するぞ!>
<そうだね。うちだけじゃなく、陸路で国境と接している領地や観光地がある領地でも、旅行客用の値段が設定されている事は珍しい事じゃないし、それはお互いに理解している部分だと思う。しかし、今回の件は言葉が分からない者への過剰な上乗せや、質が悪い物、不要品を高額で押しつけるなどの行為もあるようだから、かなり悪質としか言いようが無い。他国の人間が多く訪れる領地で潜在的に行われていたことだとしたら、かなりマズイと思う。対象がほぼ平民で、立場が弱い上に、言葉で現状を訴えることが出来ないという状況が、これまで表面化しなかった原因だと思う。うちもすぐに調査を入れるよ。あまり時間を掛けられないので、父上も手を貸して下さい。>
<任せなさい。孫達の邪魔をするものは私が排除しよう!>
と義父殿までが気合い十分な様子に、少し苦笑いしてしまう。
<では、各領地での調査と結果については、次回 (4ヶ月後)の定期情報交換会で報告することにしよう。>
<<<< 異議無し! >>>>
重たい話はそこまでに、それからは互いの子供・孫の尽きない自慢話を肴に、楽しい夜は更けていくのであった。
最後まで読んでいただきありがとうございます(ღ˘⌣˘ღ)




