↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
銀狼物語 ~森で出会った銀狼と紡ぐ運命の物語~  作者: ななお
外伝:ソフィア編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

107/215

外伝:ソフィア編 第三話

ソフィアは巨大な門の前に小さな天幕を張り、そこで過ごすことにしました。


門へ向かって声をかけるべきか、決めかねていました。

目の前に広がる美しい景色と、人の手では造れない巨大な門を見れば、この先にいる者が、人をはるかに超えた存在であることは分かります。


けれど、その存在を呼び起こしたことで、人や地上へどのような影響が及ぶのかは分かりませんでした。


一日目、ソフィアは門を見上げたまま考え続けました。

二日目になっても、決心はつきませんでした。


そして三日目。


この美しい場所を築いた者が、理由もなく地上を脅かすことはない。

ソフィアは、自分の勘を信じることにしました。


門の前に立ち、大きく息を吸います。


「お願いします」


声が、広い空間へ響きました。


「どうか、お聞きください」


巨大な門は閉ざされたままでした。


それでもソフィアは諦めませんでした。

四日目も、五日目も、門の前に立ち続けました。

雨が降っても、強い風が吹いても、その場を離れませんでした。


「瘴気が、広がっています」


門の向こうにいる者へ届くように、声を張り上げました。


「国に訴えても、誰も聞いてくれません」


何日も声を上げ続けたことで、喉は掠れていました。


「どうか、お力を」


重い音が、辺りに響きました。


巨大な門が、ゆっくりと開いていきます。


門の向こうに現れた姿を見た瞬間、ソフィアは目を奪われました。


人の姿に似ていながら、人ではありません。

人間ではあり得ないほどの長身。

腰まで届く白銀の髪。

深い蒼を宿した瞳。

頭には髪と同じ色の狼の耳があり、背後には長い尾が伸びていました。


美しいという言葉だけでは表せない姿でした。


その者は、門前に立つソフィアを見つめました。


「お前」


低く落ち着いた声でした。


「天零か……。名は」


ソフィアは我に返り、姿勢を正しました。


「ソフィアと申します」


目の前にいる存在が何者なのか、ソフィアには分かりません。

それでも、ここまで来た目的を忘れるわけにはいきませんでした。


「瘴気のことを、お調べいただけませんか」


その者は、ソフィアの顔ではなく、もっと奥にあるものを見通すように目を細めました。


「理から外れた者か……」


言葉の意味が分からず、ソフィアは首を傾げました。


「……いや。こちらのことだ」


「お願いします」


ソフィアは深く頭を下げました。


その者は、頭を下げたソフィアをしばらく見下ろしていました。

やがて門の内側へ戻り、巨大な扉が再び閉じられました。


ソフィアは顔を上げ、閉ざされた門を見つめました。


拒まれたのかもしれません。

けれど、一度は門を開き、言葉をかけてくれました。


ここで立ち去ることはできませんでした。


翌日も、その次の日も、ソフィアは門の前に立ちました。

食事と眠る時を除き、門へ向かって頭を下げ続けました。


足は震え、喉は渇き、立っていることさえ難しくなっていきます。


それでも、ソフィアは門の前から動きませんでした。


もう限界だと思い始めた頃、閉ざされた門の向こうから、あの声が響きました。


「……調べるだけだ」


ソフィアは勢いよく顔を上げました。


張りつめていたものがほどけ、顔いっぱいに喜びが広がりました。


「ありがとうございます」


ソフィアは、頭を下げました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。