大地で目覚める
レナは目覚めた。そこにあるのは青い空と白い雲。穏やかな風に鳥の鳴き声。川の流れる音。どうやら森の開けた場所に降り立ったようだ。
あぁ、新しい世界に来たんだ!!
レナは立ち上がり、自分の格好が変わっていることに気付いた。動きやすい膝丈のワンピースに、フード付きの上着。足にはショートブーツ。腰にはベルトを巻き、小さいポシェットが三つ付いていていた。
「うん、動きやすい格好。」
レナは川に近づき自分の姿を水面に映した。
「わぁ、本当に父様と同じ顔してる。長い銀髪にエメラルドグリーンの瞳。父様と比べると、少し女の子らしい顔つきになってる。見た目は20歳くらいかしら?実際の歳より10歳近く若いわね。うわー!肌の張りすごい!!」
レナは自分の頬を何度も突いては満面の笑みを浮かべた。
「おっと、こんなことしてる場合じゃない。これからどうしたものか・・・」
レナはとりあえず水を飲み、川を眺めながら考えた。
「そういえば、お供の鳥はどこ?」
辺りを見渡してみると、向こう岸の木にこちらの様子を伺っている鳥を見つけた。
「君かしら?」
試しに左腕をだしてみると、こちらに向かって飛んできた。
「わぁ、私の大好きなトンビじゃない。トンビの鳴き声大好きなの。名前つけてあげなきゃね!」
レナはトンビをじっと見た。
「宝石のスモーキークォーツみたいな綺麗なブラウン色ね!『スモーキー』ってどうかなぁ?石の意味はね、確か・・・安定とか、癒し、素直っだった気がする。どう?」
するとトンビは羽ばたき「ピーヒョロロロ・・・」と鳴いた。
「気に入ってくれたってことかな!良かったー!さて、次は魔法だけど・・・人はいないし、適当に試してみても大丈夫かしら?」
父様は、手をかざし想いで発動するって言ってたけど・・・
「水」
手をかざし唱えてみたが何の反応もない。
「火」「風」
何度も繰り返し繰り返し試してみたが何の反応もない。
「本当、へこむな・・・」
スモーキーはどこへ行ったのかしら?スモーキーに癒されたい。鳥笛とかあったらいいのに・・・父様はあらゆる魔法って言ってた。物も出せるよね?想い・・・想い・・・こんな感じ?
レナは手をかざし、心の中で『鳥笛』と唱えてみた。すると目の前にシルバー色の綺麗な鳥笛が現われた。
「やったー!よし!このまま練習しよう。」
とりあえず鳥笛を首にかけ、魔法の練習を続けた。
「何となくわかった!ただ頭に思い浮かべるのではなく、心で感じイメージして、放出する感じなのね!今、声を出さなくても大丈夫だった。やっぱり手はかざさないとだめなのかしら・・・」
レナは野球ボールくらいの水の玉をイメージしながら、手をかざさず『水』と唱えてみたが、やはり発動しなかった。
何度か魔法の練習をした結果、コツを掴みスムーズに発動できるようになった。掌さえかざせれば、どんな状況でも発動できる事もわかった。
はぁ、お腹すいた。何か食べるものないかしら。
辺りを見渡すと赤い実がなっていた。試しに食べてみると甘酸っぱくて美味しかった。レナは空腹がある程度まぎれるまで食べ続けた。
「ポシェットに入れて行こう。」
ポシェットに赤い実を入れると、入れた瞬間に消えた。レナはびっくりして手を突っ込んでみたが、ちゃんと赤い実に触れ取り出せる事ができた。
「これって、マジックバック?」
レナはそこら辺の草や石を次々入れた。手を入れてみると何もない。
あれ?石どこいった?
再び手を入れてみると、石が手に触れた。
あぁ、取りたいものを思い浮かべないと駄目なのね。
レナは一つ目のポシェットにはお金を入れようと決めていたので、二つ目のポシェットに食べ物を入れることにした。レナは入れた物を全て出し、赤い実をたくさん入れ直した。
さぁ、森を出てみようかしら・・・どんな世界か分からないのだから、派手な魔法は避けるべきよね。人間はいるのか、どんな扱いなのか、他に種族はいるのか、分からない事だらけ・・・。しばらく様子をみよう。魔法でむやみに物をつくり出すのは控えよう。ダメな人間にならないよう、本当に困った時にだけ魔法でつくろう。普通の生活を心がけなきゃ。それと、ステータスを確認する画面?どうやっても出てこないけど、そういったものはないのかしら?あまり自分の事を知られないよう、念のため魔法をかけておこう。あと、いつ攻撃を受けてもいいようバリアを・・・とりあずお金の稼ぎ方を知る必要がある。街を探そう。冒険者ギルドとかあるよね?楽しみ!
レナは鳥笛を吹いてみた。するとスモーキーが右肩に止まった。スモーキーの頭を優しく撫でた。
「これからよろしくね!」
◇◇◇◇◇
レナはどうにか道らしき所に辿り着いた。下山の途中、レナにとっては見慣れない生き物、魔物に襲われ悲鳴をあげまっくっていたけれど、バリアを張っていたので比較的落ち着いて対処できた。攻撃魔法の練習になったのでちょうど良かった。
「どっちに行けばいいんだろ。」
近くに枝が落ちていたので、枝を倒して向かう方向を決めた。レナは左に向かって歩き出した。あまり顔を見られたくなかったので、フードを深く被った。一時間程歩いただろうか、街らしきものが見えてきた。ここまで来ると人とすれ違う事も増えてきた。レナはあまり目が合わないよう俯きながら歩いた。レナの悪い癖だ。
街には大きな門があり、兵士みたいな格好をした中年の男性が検問をおこなっているようだった。
やばい、通してもらえるかな・・・。父様は、私の好きなファンタジーの世界っていってたから、冒険者ギルドとかあるよね・・・。
レナの順番がきた。
「あの、街に入りたいのですが・・・」
「身分証は?」
「ありません・・・えっと、冒険者ギルドに入りたくて来ました。」
「おっ、ギルドに登録してないのなら身分証がなくて当然だね。君がどんな人間かわからないからギルドまで同行する事になるけどいいかな?」
「はい。よろしくお願いします。」
「ふむ。では行こうか。」
レナは街の中に入った。そこは賑やかな街で、店も多く人もたくさんいた。人間以外の種族もいるのかと期待していたけれど、どうやら普通の人間しかいないようだった。
「あのう、ここは人間だけの街ですか?」
「そうだね、あまり他族は見かけないね・・・。全くいないわけではないと思うけどね。」
「ギルドに登録すると、どんな街も身分証で出入り自由になるのですか?」
「そうだね・・・。ある程度大きな街には必ずギルドがあるから、身分証は持っていた方が便利だね。問題を起こすと入れない事もあるよ。個々の情報はある程度ギルドで管理されているからね。でも普通に生きていれば、どんな街でも身分証だけで出入り自由だよ。小さい村はギルドがないから関係ないけどね。」
やはり普通に暮らしたいのなら、ギルドに登録するのは必須ね!
「さぁ、ここが冒険者ギルドだぞ。」
目の前には【イチの街冒険者ギルド】と書かれた建物があった。大きめのスーパーと同じ位の大きさだった。




