始まりの地
目が覚めると、雲一つない青空が広がっていた。
え!?ここはいったいどこなんだろう。
昨日は気晴らしに散歩にでたはず・・・
あれ?それから記憶がない。
こんな場所知らないし、外で眠るなんてありえない・・・
レナは静かに立ち上がり周りを見渡した。果てしない草原だけが広がっている。
レナは意外にも落ち着いていた。
あぁ、ここが天国だったらいいのになぁ。
あの世界から解放されたいと、ずっと願っていた・・・
レナはどこまでも続く草原をしばらく眺めていた。
「レナよ」
振り返ると、白いローブを羽織った男が立っていた。長い銀髪でエメラルドグリーンの瞳、肌が白くとても整った顔をしている。
わぁ、なんて綺麗な男の人なの!
私の大好きなファンタジーアニメに出てくる賢者みたい。
「あの・・・もしかして、ここは天国だったりします?」
「ここは聖域である。お前は事故で死んだのだよ。」
「聖域? 事故で死んだ?」
「私はあらゆる全てを創りしモノ。」
「創りしモノ?神・・・ですか?」
「神ではない。神も私の子である。」
「神以上の存在?えっと、お名前は?」
「名はない。好きに呼べばよい。」
好きに呼べばいいと言われても、偉大過ぎる存在のようだしなぁ・・・待てよ、全てを創りしモノってことは私の父親でもあるってことだよね・・・
レナは深く頭を下げながら
「では父さまと呼ばせて頂きます!」
「レナ、これからお前の為だけに創造した世界で生きてもらう。そこは魔法が使える。おまえの世界でいうファンタジーの世界。もし魔法が使えたら誰かの為・・・っと願っていただろう。」
「えっ・・・異世界ってことですか?」
「そうなるな。」
「あはは・・・バカみたいな話だけど、確かに考えた。でもそれは、現実逃避する為に、ひたすら自分の世界に籠っていただけですよ。物語を想像することで、現実を見ないようにして精神を保っていました。まったくお恥ずかしいことで・・・」
「生きていた世界が嫌いなようだな。」
レナは俯き、何かを諦めたようなうに話し始めた。
「私自分を含めた人間が大嫌いで、苦手で、人と人の繋がりなんて苦痛で面倒だから、独りでいることを選んだ。」
「淋しいと思ったことはないのか?」
「・・・あります。それでも人間という生き物に対する嫌悪感の方が勝った。昔自分という人間に失望したことがあって、その瞬間から人間の汚い部分しか目に入らなくなった。人間という生き物は学ばないし、愚かで傲慢だ。」
「・・・色々と抱え込んでいるようだな。」
「自分の事が全く解らないのですよ。自分が全くないようにさえ感じる。もう消滅したい・・・」
「やはり生に執着なしか・・・。しかしこれは蟲の神、唯一の願いなのだ。」
「蟲の神?」
「全てのモノにはそれぞれ神がいる。蟲の神、動物の神、植物の神などな。」
「でもなんで蟲の神なんですか?虫は私が最も嫌いで怖いもの。それにたくさん殺してきたのに、どうして・・・」
「お前は、幾度も自力で起き上がれなくなった蝉を助けてきただろう。長い年月を経て大人になった蝉が一週間しか生きれないのなら、生きて欲しいと願った上での行動だろう。そのおかげでたくさんの蝉が、命を終えるその瞬間まで懸命に鳴き続ける事ができたのだと、蟲の神は感謝しているのだ。」
「それは・・・」
「レナ、お前も蝉のように、命尽きるその時まで懸命に鳴いてみないか。」
レナは青い空を見上げながら考えた。
生きたいとも思わないし自信もない。私は人間として欠落した部分が多すぎる。毎日呼吸をしているだけの空っぽの人間、だた本当に生きていただけなのだから・・・やり直す?人間を避け続けた自分が?変わる?変われるのだろうか?変われるのなら変わってみたい?わからない・・・何もわからない。
レナは静かに目を閉じた。突然暖かい風に包まれたように感じた。目を開けてみると、私の長い黒髪が銀髪に変わっていた。
あぁ、これはもう決定したことなのか・・・
「もう決まっていたことなのですね・・・」
「私の今の姿は仮のモノだ。この姿をレナに送ろう。」
「・・・ わかりました。もう一度だけ生きてみます。」
レナは諦めたように笑った。
「レナよ、お前に神と同等の力を授ける。老いない身体。傷を負っても自然に治癒する身体、不死身だな。それと、どんな願いも想いで実現する事ができるあらゆる魔法。想いを込めて手をかざすだけで発動する。コツはすぐにつかめるだろう。だが、神の力との違いが少しある。人の命を蘇らす回復魔法と、人への殺意を明確に放った攻撃魔法だけは、お前の生命力を糧に発動するのだ。使えば使うほど生命力を奪っていく。想いの強さで消耗される命の量が決まるのだ。逆に全く使わなければ永遠にこの世界で生き続ける事ができる。」
「想いの強さ・・・」
「寿命が半分になると、そのエメラルドグリーンの瞳は金色になり、咳が度々出るようになるだろう。死に最も近づき始めた時、その瞳の色は血の色に変化し、血を吐くようになる。」
「唯一の死ですか・・・」
「レナ、瞳の色が血の色に変化したら、白いオーロラが見える方角へ向かうのだ。大陸の中央には果てしなく大きい湖がある。そこへ辿り着いた瞬間道が現われるだろう。道の先には聖域とつながる大きな木がそびえたっている。そこが見えるのはお前だけ。そこに入れるのはお前とお前を愛し愛された者だけ。レナ、これだけは忘れてはならないぞ。」
「はい、わかりました。覚えておきます。」
「旅の共に鳥一羽つけよう。そやつと話しをしたいと想い、魔法をかけても、そやつに魔法はかけられぬ。だか、いずれ意思疎通ができるようになるであろう。」
「たとえ話せなくても嬉しいです!」
「次目が覚めた時新しい世界に降りっ立っているだろう精一杯生きるのだ。また会おう。」
父様はあたたかい光に包まれ姿を消した。
レナは横になり青空を眺めた。
あぁ、新しい世界で新しい人生が始まるのか・・・
すでに一回死んだのだし、大好きなファンタジーの世界なら、夢の中にいると思おう。ありのままの自分で好きなように生きよう。
レナは微笑んだ。
魔法の世界楽しみだなぁ。イケメンに出会ったりて・・・
あはは・・・そこまで都合よくできてないよね。
レナはそのまま眠気におそわれ深い眠りについた。
◇◇◇◇◇
「蟲の神よ、本当にこれでよかったのだな。」
「はい、ありがとうございます父上。」
「私も見守らせてもらうぞ。」
「はい。」
蟲の神は優しく微笑んだ。




