示幸と選択 3
彼女は母親と食事に行くと言った。
その知らせを受けた瞬間、私は心の中で小さな嵐を抱えた。
私は、会えるかどうかを迷い続ける日々の中で、理性と感情を交互に問い詰めていた。
「会うべきか、会わざるべきか」
理性は離れることを勧める。
だが、心は渇き、魂は決めていた。
私は自分の欲望に従い、店へ向かう決意を固めた。
店の扉を押すと、そこに彼女がいた。
席に着く前、彼女と目が合う。
その瞬間、理性は追いつかず、胸の奥の感覚だけが騒ぎ出す。
涙が滲むのを必死に堪えながら、私は自分の哲学の不完全さに気づいた。
幸福は苦しみを伴うべきだと信じていた私の心は、今、純粋に歓喜と恐怖の中で揺れていた。
彼女は、一瞬、緊張で硬直した。
けれどすぐに肩の力を抜き、私を見て微笑む。
その微笑みは、私の中で長年自己を守るために築き上げた鎧を震わせた。
与えられることへの恐怖と、受け取ることの喜びが同時に私を満たす。
初めて生で会う彼女は、暖かい空気をまとっていた。
大人びた知性を伺わせる聡明な笑み、どこか残るあどけなさ。
その微細な揺らぎを、感じとる。
言葉を交わさなくても、互いの存在が確かにここにあることに震えた。
食事を終え、彼女が店を出るとき、私も立ち上がる。
その去り際、私に背中を見せていた彼女は振り返り、私に向かって再び微笑んだ。
胸の中で何かが決定的に揺れた。
これまでの孤独、恐れ、罪悪感――すべてがこの瞬間のためにあったのだと。




