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十八話目、この兄妹の仲は修復不可

 「こんな所で、何をしているのかしら?」

 元から静かだった庭が、エレナさんの一言で更に沈黙した気がする。

俺とアルバート王子が他人に聞かせられない話をしていた時、

エレナさんが笑顔で、後ろに修羅でも居るのかと思うよな雰囲気で現れた。

うわ怖…

多分、アルバート王子が俺と一緒に居るから怒ってるんだろうけど…

前にアルバート王子の話をしようとした時より、二倍以上の怒りと威圧感を感じるんだけど…

 「何をしている、とは随分な言い方だな。俺が庭を散策していたらいけないのか?」

「私が言ってるのは、もう此処には来ないでって言ったのに此処に居る事よ!」

 …ものすごい嫌われようだな…これは俺が二人の仲を取り持つのは無理かもしれない…

というか…アルバート王子はものすごく挑発してるけど、無自覚なの?それとも性格?

はたから見たら、嫌い合っているようにしか見えなかった。

 「この城はお前だけのものじゃない、父上のものだ。

だからお前はこの庭に、人が立ち入るのを禁止する権利は無い」

「うっ…だとしても、彼に近付かないで!彼は私の客人よ!」

「それを決めるのは彼自身だと思うが?彼が嫌なら俺は近付かなくていい」

 ちょ…!人を巻き込まないでもらえません!

関係無いと思っていたら、急に火の粉が降ってきてびっくりした。

 「当然嫌でしょう!だって私の天敵なんだから、嫌に決まってるわ!」

「俺が聞いているのは彼になんだがな?それとも、彼は話してはいけないのか?」

「聞くまでもない事だからに決まってるからでしょ!」

 う~ん…俺、当事者の一人なのに発言が出来ない…

完全に蚊帳の外だな~…と思っていると、

セルリアさんが俺をアルバート王子から離そうとしにきていた。

 「セルリアさん?」

「こちらに、あの二人の中に割って入っても良い事はありませんから」

「そっ…そうですか…」

 …俺もそう思ったけど…これは放っておいていいのか?

そう思っても、セルリアさんが二人の間に入れないようにしているため、放っておくしかなかった。

 「それにしても…あんなに嫌われてるって…アルバート王子は何をしたんですか?」

「一番エレナ様に口うるさく言っておられたので、そのせいかと。

それと、会うたびにあのようなやり取りをしているので…」

「ああ…だから嫌われてるんですね…」

 会うたびに小言を言われたり、馬鹿にされてると感じる態度をとっていたら、

誰だって嫌われるだろう。

アルバート王子の場合は無自覚な分、更に質が悪い。

そんな事を考えている間にも、二人の言い合いは続いていた。

 「そもそも、何でこんな所に居るのよ!此処に兄様が来る用なんて無いはずよ!」

「だから散策だと言っただろう?人の話を聞いてなかったのか?」

「城の端も端に散策する用なんて無いでしょ!私に対する嫌がらせのつもり!」

「嫌がらせのつもりならこんな事はしない。

それ以前に、庭を散策する事が嫌がらせになるわけないだろう」

「来ないでって言ってるのに、来ている事が嫌がらせだって言っているのよ!」

 …いつまで続くんだろ…このケンカ…そろそろ終わってくれないかな…

長々と続く言い合いに、いつまでやる気なんだろうと思っていると。

 「とにかく!もうこのあたりをうろつく事も、彼に近付く事もしないで!」

 そういったエレナさんは、急に俺の手を取り、

およそ淑女らしくない早歩きでアルバート王子に背を向けて歩き出した。

あ~あ…折角理由を聞けるチャンスだったのに…

これでアルバート王子に会って話を聞く最後のチャンスをふいにしたと思うと、うなだれてしまう。

当然、表には出せないが。

しばらくの間、エレナさんに腕を引かれていたが、もうアルバート王子は見えなくなったので、

そろそろ手を離してもいいんじゃないかと思った。

 「あの…エレナさん」

「まったく…何なのよあの人は…いちいち人の神経逆なでして…

その上、私の言った事は守ってくれないし…大体、何で…」

 …聞いてないな、これは…

アルバート王子の文句を言う事しか考えられなくなっているエレナさんに、

気付いてくれるまで声をかけないといけないようだと悟る。

 「エレナさん、エレナさん。エレナさん!」

「えっ?どうかしたのかしら?」

 俺の呼びかけでようやく足を止めたエレナさんは、呆けた顔をしてこっちを向いた。

三度目でようやくか…

 「どうかした、じゃないですよ。何処まで行くつもりなんですか?」

「ああ、ごめんなさい。つい夢中で走ってしまったわ」

「まだ庭だからいいですけど、止めなかったら迷子になるかと思いましたよ」

「大丈夫よ、こっちは貴方の部屋の方だから」

「…そうですか…」

 そこはちゃんと考えてたんだ…

ずんずんと早歩きをしていたのを思い出すと、とてもそうとは思えなかった。

 「急に走り出したので、セルリアさんを置いて…」

「私なら、此処におりますが」

「えっ、いつの間に!」

 気付かなかった…一体いつから居たんだ…

声が聞こえて後ろを振り向いたら、セルリアさんが息を乱した様子も無く控えていた。

あれ…?結構な距離を走ってたような気がするんだけど…

しかも、俺とエレナさんと同じ速度で走ってないとおかしい時間差だし…

 「でも、今回の事は予想外だったわ…まさか兄様の嫌がらせがここまで酷いなんて…」

「え、セルリアさんの事は流すんですか?」

「現状、殿下はクシマ様の敵では無いにしても、エレナ様の敵ではありますから…」

 えっ?気付いたら後ろにメイドが居るのって普通なの?俺が変なの?

二人があまりにも普段と同じように話しているのを見て、自分がおかしいのかと混乱してきた。

 「敵は身近に居たのね…」

「殿下がクシマ様をどうするおつもりかは分かりませんが、警戒するに越した事は無いかと…」

「そうね。ただでさえ、元からカズヒコさんを狙っている人達が居るんだもの、

これ以上は敵を作りたくは無いわ」

「まずは殿下の動向を調べた方がよろしいかと」

「そうね、相手の思惑を叩き潰すには必要だもの」

 勝手に話が進んでいくなぁ…

また蚊帳の外かと思っていると、エレナさんが笑顔を浮かべてこっちを向いた。

 「それにしても、良かったわ。

嫌な気配がしたから戻ってみれば、兄様が貴方と一緒に居るんだもの」

「はっ…花を見ていたら、偶然会いまして…」

「そう。…まさか兄様は彼に会いに来たのかしら…」

 そうでしょうね、理由は知りませんけど俺が目的なのは間違いないでしょうね。

正直今更だなと思うが、エレナさん達は俺より情報量が少ないので仕方ないのかもしれない。

 「エレナ様、もうそろそろ時間かと」

「ああ、そうね。時間が無いからもう行かないと、じゃあね」

 そう言ったエレナさんは、またも淑女らしからぬ早歩きで何処かに向かった。

と思っていたら、急にこっちに戻ってきて。

 「今日はもう、部屋に戻ってね?」

 と眩い笑顔で圧をかけてから、また何処かへ向かっていった。

うわ~…煌めきが威圧してるかと思った…

 「…邪魔…されちゃったな…」

 聞けたかどうかは別として、あそこでエレナさんが来たのはよくなかった。

あの時点で、また同じ事を話せなかっただろうからな…

 「当分は部屋で調べものをするしか無いか…」

 見付かりそうには無いけど…他に出来る事は無いし…

自分の世界に帰る方法を探すしか、出来る事が無いんだと思いながら、

エレナさんの言う通りに自分の部屋に戻った。

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