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オレにホレないモノはなし!~完全無欠のスコッパー~  作者: GIMI
第6章 我らにクダけぬモノはなし!
90/156

090.極東武神イーズマジン

「極東武神イーズマジンのうた」 


 唄 ササニシキ イサヲ

   花魁坂46(コーラス)


(1番)


 イーズマズマズマジンゴー!

 イーズマズマズマジンゴー!

 

 遥か東の平和な都 荒ぶる悪が牙を剥く

 逃げ惑う人々 飛び交う悲鳴(キャ~!)

 だが、待て、奴がいる! 我らが防人!


(イーズマジーン、ゴー!!)


 唸れ、剛腕!! トタンインパクト!!

 放て、剛脚!! ベニヤブレイカー!!

 ああ、奴こそ! 奴こそ、我らの!!

 無敵の守護神!!


(2番)


 イーズマズマズマジンゴー!

 イーズマズマズマジンゴー!


 諸行無常の──




「なんや、この大音響の歌はっ!?」

「ふふっ、あの坊主(転生者の少年)が"巨大ろぼっと"には"てーまそんぐ"が必須やと言うとったからのぉ。ちょっと仕込んでおいたんじゃ」


 こんなもん用意する暇あるなら、もっと用意するべきもんがあるやろう……。


「っていうか、花魁坂46(うちの娘達)まで勝手に巻き込みよって」

「だって、わしお得様じゃしー。優待札持ってるしぃ」


 くっ、このネコじじい……。

 職人としての腕が良くなかったら、国外追放にでもしてやりたいくらいや。


「まあ、歌は置いとくにしても……」


 作戦室の窓から、件の"ろぼっと"の様子を眺める。

 鎧を着た武者を巨大にしたようなその見た目。赤くカラーリングされた装甲。

 確かに見様によっては強そうではあるが……どことなく信頼できない。

 それに、一応歩いてはいるのだが……遅っ。


「ジャスパー。あれ、使いもんになるんか」

「無論じゃ。あれの歩みが遅いのは搭乗者の問題じゃ。おいっ! ブルート! ちまちま物にぶつからんよう歩かんでいい!! 敵はもう来とるんじゃぞ!」

『で、でも、親方ぁ!』


 さっきから、都の家々を壊さぬようにと、抜き足差し足で歩いていた"ろぼっと"の搭乗者が泣きそうな声を上げる。

 うん、明らかに慣れていない感じが凄いんじゃ。


「鋼帝竜に上陸されたら、街なんて一瞬で粉微塵じゃ。多少の被害には艶姫嬢も目をつむってくれる。とにかく走れぇい!!」

『うっ、わ、わかりましたぁ!!』


 巨大な"ろぼっと"が、一瞬ビシッと直立したかと思うと、ぎこちない姿勢で、走り出す。

 一歩が人間の数十倍あるだけあって、さすがに速い。

 しかし……。


「なあ……ちょっと勢いありすぎじゃ……」

『お、親方ぁああ!! 止まりませーーーん!!!!』


 ほら、やっぱり。


「止まらんで構わーん!! そのまま鋼帝竜までジャンプじゃ!!」

『ええええええっ!!?』


 港まで、メインストリートを走り切った"ろぼっと"は、その勢いのままにジャンプをした。


「補助ブースター点火!」

『うわぁああああああああああああああ!!!』


 そのまま沖合3km付近まで到達していた鋼帝竜に向かって、背中から火花を散らしながら、ものすごい速度で飛翔する。


「今じゃ! "例のアレ"を叫べぇ!!」

『ええええ!? えっと……ご、剛脚、ベニヤブレイカー!!』


 搭乗者であるブルートの言葉と共に、今までのどことなく情けない動きから、美しいキックの形へと"ろぼっと"の姿勢が変わる。

 どうやら、音声認識というやつらしい。


「説明せねばなるまい!」


 いや、突然、どうした。ジャスパー。


「剛脚! ベニヤブレイカーとは、ベニヤ板127枚を一撃で粉砕するイーズマジンのスーパー必殺技である」

「いや、威力がわかりにくいわ」


 とにもかくにも、あれだけの質量を持つ物体の飛び蹴りや。

 その破壊力には多少期待できる。


『うぁあああああああああああああああ!!』


 搭乗者の悲鳴を響かせつつも、"ろぼっと"の飛び蹴りが、鋼帝竜の胸の辺りに直撃した。

 せやけど……。


『ひぎゃああああああああああああああ!!』

「弾き返されとるやないか!」

「くっ、やはりベニヤ板127枚を貫く程度の威力では、アダマンタイトでできた奴の鱗を砕くことはかにゃわんか!」


 想定内かい!!


「あー、コルリ!! なんで通信繋がらんのや!!」

「待てい!! まだ、負けたわけじゃにゃいわい!!」

「そないなこと言うても」


 弾き返された"ろぼっと"は盛大な水しぶきを上げて、海に落下するも、ようやく膝下辺りまでを水に浸かりながら、立ち上がった。

 しかし、改めて見てみると……サイズ感が微妙だ。

 いや、街中にいた時は、なかなかの巨体だと思ったのだが、鋼帝竜と対峙すると、随分と小さく見える。

 っていうか、せいぜい鋼帝竜の膝くらいまでの大きさしかないやん。


「無理じゃね……」

「無理じゃにゃい!! ブルート、次の技じゃ!!」

『えっ!? あ、そうだ……えーと、ご、剛腕! トタンインパクト!!』

「説明せねばなるまい! 剛腕! トタンインパクトとは、トタン板83枚を──」

「もう、それはええ」


 轟音と共に、"ろぼっと"の両腕の肘から先の部分だけが、鋼帝竜に向けて、発射された。

 いわゆる"ろけっとぱんち"というやつだそうだが、果たして鋼帝竜に効果があるのか……。

 そもそも当たるんやろか……。

 と、そんなうちの不安をよそに、必殺の"ろけっとぱんち"は見事に鋼帝竜の首の根元辺りに命中した。

 しかし、やはり鋼帝竜の硬い鱗は貫けない。


「やっぱ無理やー!!!」

「ふん! 目的を見失うにゃ!! 貫けずとも、要はこれ以上"進ませなければ"いいんじゃ!! ブースター!! フルパワー!!」


 ジャスパーが何やら手元の操作盤をいじると、腕の後方から出る、火花が一層激しくなった。

 そして……。


「ゴォオオオオオオオオオオオオ!?」


 港に、初めて、鋼帝竜の咆哮が響き渡る。

 パワーを全開にした"ろけっとぱんち"は、あの鋼帝竜の巨体を押し戻しつつあった。


「す、凄いやないかっ!!」

「当然じゃ!!」

「このまま街から遠ざけるんや!!」

「任せろ!!」


 ジャスパーがさらに操作盤のつまみを絞った。

 すると、火花がさらに激しく迸り、鋼帝竜を押し返す速度も上がる。

 やっぱ、凄いやないか、ジャスパー!!

 ……と思ったのもつかの間。


「あれ、火花が……?」


 ぴたりと止まった。


「ああああああ!! パワーを上げすぎた!! オーバーヒートじゃああ!!!?」

「やっぱダメやないか!!!」


 勢いをなくし、あえなく海へと落下する2つの腕。

 再び前進し出す鋼帝竜、そして、前には、肘から腕を失くし、おろおろする"ろぼっと"の姿。


『親方ぁ!! どうしたら!!?』

「えーい、うろたえるにゃぁ! まだ、そいつには武装が残されている! マニュアルは読んだじゃろう!!」

『あ、そ、そうだった……えーと、確か、ドリルクラッシャーっていう武装が……』

「そいつはまだ、開発途中じゃ」

『えっ、じゃ、じゃあ、大斬剣イーズマジンブレード!』

「それもまだ未実装」

『えー!? そ、それじゃ、ば、バーニングイーズマビームは?』

「年貢ジェネレーターが安定してないので、撃てにゃい」

『全部、ダメじゃないですかぁあああああ!!!』

「まあ、待て! まだ、そいつには強力な技が残されとる!」

『きょ、強力な技……?』

「そうじゃ、その名も、イーズマジンボンバー!」

『イーズマジンボンバー!! そ、それは一体……!!』

「説明せねばなるまい! イーズマジンボンバーとは……ただの体当たりである。当たって砕けろぉ!!」

『そ、そんなぁ!!!』


 と、親方と弟子の不毛なやり取りをしている間に、もう"ろぼっと"のすぐそばまで鋼帝竜はやってきとった。

 そして、大きく口を開く。あの体勢は……。


「お、音波が来んで!!」

「にゃ、にゃんだと!? ブルート、耳を塞げ!!」

『えっ!?』


 慌てて耳を塞ごうとする搭乗者だったが、時すでに遅し。

 咆哮とともに振動波が放たれ、"ろぼっと"は目の前でそれをもろに受けた。


「ブルート!! ブルートォオ!!」

「あかん……あの距離は……」


 眼前で強烈な振動波を浴びせられた"ろぼっと"は膝から海へと倒れ伏した。

 あの様子だと搭乗者は意識を失っとる。

 そんな"ろぼっと"を踏みつぶさんと、鋼帝竜が一歩足を踏み出す。


「起きんかい!!」

「起きるんじゃ、ブルート!!!」


 うちとジャスパーの叫びも空しく、"ろぼっと"は立ち上がる気配もない、

 そもそも通信装置すら破壊されてしまったのかもしれん。

 巨大な脚が、踏みつぶすように"ろぼっと"へと大きな影を落とした……その時。


「スターライト!!」


 煌々と女性の声が響き渡った。

 すると、空から巨大な光の柱が鋼帝竜へと飛来した。

 圧倒的な光の奔流が、鋼帝竜の全身を灼くように蹂躙する。


「ゴォオオオオオオオオオオオオオオ!!?」


 さっきの"ろけっとぱんち"の時以上に、叫び声を上げる鋼帝竜。


「こ、これは……」


 うちが用意した魔法遊撃部隊は、街の最終防衛ラインとして、まだ、市中で待機しとる。

 やとしたら……。

 気が付くと、港の埠頭の先に、2人の女性の姿があった。

 白と緑の神官着に身を包んだ少女と、額に第3の眼を持つ、小柄な少女。


「フ、フローラはんとシトリンはん……?」


 東冒険者組合の医務室で、寝ているはずの2人が、杖と弓を手に、真っ向から鋼帝竜と対峙しようとしとった。

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