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分析

「へぇ〜、これがエラー個体の角か。通常個体とは色が違うし、質感も光の反射具合も違う。⋯⋯触っても?」

「あぁ。それはサンプルとして持ってきた。君の好きにして構わない」

 俺としては力場発生の仕組みがわかればそれでいい。


「じゃあ、遠慮なく」

 メギスはエラー個体の角を手に取ると、モノクルを嵌めてしげしげと眺め始めた。幼女がモノクルというのもなかなかに違和感があるな。

「表面に全然傷がない。生まれたばかりみたいな感じ。叩いた感じ密度もえげつないね。なのにこんなに軽いのか」

「この角はただ軽いだけではなく、ちょっと特殊なんだ」

「特殊?」


 俺が手を出すとメギスが角を返してくれる。

「こいつはな、まだ力場が発生するんだ」

 軽く指で角を弾くと、表面に揺れが光るのが確認できた。

「スゲェ! 固有能力持ちだったのか! それが死んだ後でも残ってるなんて⋯⋯」


 メギスの反応を見ると、かなり珍しいもののようだ。

「あまりないのか? その固有能力は」

「うちはよく村の外まで機獣同士の縄張り争いを見にいくんだけど、明確に能力持ちだと判断できた個体なんか一割も居ない。ましてや死んでるのに能力は生きてるなんて⋯⋯」


 やはり角を持って帰ってきたのはいい判断だったな。

「俺が調べて欲しいのは、力場発生の能力はいつまで使えるのか知りたい。探索の同行者の防具に使いたいんだが、いざという時に力場が発生しなかったら困る。できれば繰り返し使えると有難いんだがな」

 連続で力場を展開するのは厳しいとしても、時間をおけば復活するような防具にしたい。


「わかった。色々実験するから、細かくしちゃうけどいいんだろ?」

「構わない。ただこの角は非常に硬くてな。このナイフでないと加工は厳しいかもしれない。力場もあまり関係なく切れるはずだ。貸与しても構わないがどうする?」

 腰から黒のナイフを引き抜き、メギスに見せる。


「——正直このナイフの方が気になる。遺物か? どこで手に入れたんだ? 見たことない物質でできてる」

 どこと言われてもな。気づいたら装備していたから由来は知らないんだが。

「俺も知らない。調べたいならこのナイフも調べて貰って構わないぞ。壊さないでくれると有難いが」


「傷つけずに調べられる機器もあるから大丈夫。それにしても固有能力持ちの力場を切り裂けるのか。反則だな。エラー個体もこのナイフで狩ったのか?」

「いや、家に置いてあるが獣挽きという剣で戦った」

 力場もあっさり切ってしまう黒のナイフとはいえ、流石に巨体相手に戦うのはリーチが短すぎる。

「獣挽き⋯⋯あぁ、あれね。あんた選ばれたのか。あの剣なら固有能力持ちでもいけるか」

 

 メギスは獣挽きを知っているんだな。シュマは最初は存在を疑っていたようだが長命種とのことだから、実際に目にしたことがあるのだろう。

「なかなかに優秀な剣だ。獣挽きが無ければもう少し手間取った筈だ」

「ならうちに感謝しなよ。昔あの剣を作ったのはうちだからね」


「メギスが作成者なのか!? だがシュマは大昔に拾い手が拾ってきたと言っていたが⋯⋯」

 というか作れるのかあの意思を持つ剣を。

「まぁね。うちがこんな場所に追いやられてる理由の一つでもあるからね。機獣の素材と遺物を組み合わせたらどうなるかなって実験したら暴走しちゃってさ。テミス様に封印して貰ったんだ。情報も真偽不明なのを流したんじゃないかな。そうか、あんたにあげたんだね。大事にね」


 大事にねか。軽く言ってくれる。彼女にとっては獣挽きを作成するくらい何ということもないのかもな。目の前の幼女にしか見えない存在は、俺の思う以上に凄まじい技術力の持ち主かもしれない。

 彼女ならエラー個体の角の秘密も解き明かしてくれるかもしれないな。

「無論、大切に使わせてもらう」

「ん、一応うちの最高傑作の一つだからね。あれと仲良く慣れたらもっといい仔になるよ」


「具体的にはどうすればいいんだ? 剣と仲良くする方法なんて知らないぞ」

 一緒に遊んでやったり添い寝でもすればいいのだろうか。

「話しかけてみたり、機獣の素材をあげてみたりすればいいんじゃない? 説明が難しいけど、だいぶ特殊な遺物を組み込んであるからあの仔があんたに要求することを聞いてあげればいいよ」


 機獣の素材か。試しに角の欠片でもあげてみるか。

「了解した。それじゃあ、角の解析を頼む。プルナも紹介してくれてありがとうな。想像した以上にすごい人物だ」

「絶対気が合うと思ったんだ。喜んでもらえてよかったよ」

「だろ? もっと褒めていいよ」

 メギスが俺の賛辞にふふんと誇らしげに鼻を鳴らす。

 角の解析をメギスに任せて、メギスの家を後にした。

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