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記録媒体

「⋯⋯どれくらい残ってるんだよ?」

 シュマが苦虫を噛み潰したような表情で問う。

「テミス様が言うには、断定はできないけど少なくとも五年以降の生存率は限りなく低いって」

「そうか⋯⋯」

「エンジュはどこか悪いのか?」


 見た感じは健康そうに見えるが。やつれてる訳でも肌の色も薄めだが正常の範囲内に見える。眼紐に追われた時も一緒に走り回ったし。

「今日言われたのは、テミス様も私の身体の何処が悪いのか分からないんだって。何処も悪くないって計器には出るんだけど、寿命が低くでるんだ。テミス様は、認めたくないけど私個人に定められた寿命なのかもって言ってた」

 身体は悪くないのに、何故か低く見積もられる寿命か。まだ成人もしてないだろうに。


「シュマが大人しくしてろと心配してたのはこれを知ってたからか」

「あぁ。以前、一度急に倒れたんだ。それでテミス様に診てもらってたんだ。だけど結果が出てないのに何度言っても危険な村の外に飛びだして行っちまう。⋯⋯あんなもの読んだせいでよ」

 シュマがどこか忌々しそうに棚に並ぶ記録媒体を睨みつけている。


 俺と出会った原因も、記録媒体を探していたら機獣に見つかってしまったと言うものだしな。

 うーむ。エンジュが命の危険も厭わず記録媒体追い求めるのは、もしかしたらそこに何か寿命の問題を解決するような技術が眠っているかも知れないと、藁にもすがる思いで駆け回ってるのかも知れない。


「エンジュ、君が記録媒体を探しているのは君の身体をどうにかできる技術が有るんじゃないかと考えていると言う事か?」

「テミス様は忙しいから、私は診断結果が出るのを待てなくてね。どうにかして早く何処が悪いのか探れる施設がないか探したのよ。ある階層の奥で稼働する古代の医療機器を見つけて使ってみたら、今日テミス様に言われたのと同じ結果が出てね」

 ということは、エンジュはテミス様に教えてもらう随分前から己の寿命について知っていたと言う事か。


「その施設じゃ治せないのかよ?」

「相当に古かったみたいでね。一度診断に起動したら壊れちゃって。まぁ、どのみち身体は悪くないってやっぱり出たからどうもできなかったんだけどね。でもそこで見つけた記録媒体にシュマも知ってる通り、私が探すべきものの存在が記録されていたのよ」


 エンジュが記録媒体のことを口にすると、シュマの顔が険しく歪む。

「シュマは何故そんなにエンジュが記録媒体を探すことに反対なんだ? 治す手段が保存されてるかも知れないのだろう?」

 探しに行くこと自体は確かに危険かも知れないが、そう目の敵にする事もないと思うのだが。


「観ればわかる。あんなのは情報とは言えねぇ。古代人の妄想に決まってる!」

「その記録媒体の中身は何だったんだ?」

 俺がエンジュに問いかけると、説明するより観た方が早いと棚から一つの記録媒体を持ってきた。


「施設の奥でたぶん院長とか上の役職者の部屋で見つけたんだ。金庫に入ってたんだけど経年劣化で壊れててね。取り出せたんだ」

 エンジュが記録媒体の表面を操作するとブゥンという音と共にホログラムが展開された。


 緑の淡い光で映し出されたのは、何処かのものが散乱した研究室を背景に、ボサボサの頭に無精髭の見るからにやつれた研究員らしき男のバストアップだった。

 男はくたびれた風貌ながら目には狂気じみた光を湛え、鼻息荒く興奮気味に話し始めた。


『⋯⋯この記録が観られているなら、僕とそしてこの国ももはやこの世には存在しないのだろう。はっきり言って我が国の科学技術への探究は暴走していると言っても過言では無い。神がいるならとっくに滅ぼされるだろうことを我々は成し遂げてきた。だが後悔などない。有るはずもない。神の不在などとうの昔に証明されている。実感もしている。奴が存在するならブレアは———っ。

 私の苦悩も、空虚な片翼の生も今日で終わりだ。私は成し遂げたのだ。遂に!


              魂の転写装置をだ!!!!』

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