後編
☆北の修道院
・・・私はスザンナ、もう、今日は、何月何日かも分らない。
単調作業の繰り返し。奉仕作業、掃除、祈り。祈り。
そんなときに、あいつがやって来た。
「女神様の僕、13番、面会だ」
「はい、指導シスター様」
監獄のような部屋を出て、貴賓室に案内される。
あいつは、
「メアリー!何をノコノコと」
「久しぶりなの~~~」
「お前は何者だ!」
グゥ~~~~~~
腹の虫がなく、ここに来てから、薄いスープと固いパンしか食べていない。
何故なら、目の前で、メアリーがステーキを食べているからだ。
「女神の僕13番!ムチ打ち!」
「ヒィ、有難うございます!」
バシ!
一回叩かれた。
ここでは、日常茶飯事だ。
「スザンナは、私の本性を見抜いたの~~スザンナは悪魔と言ったの。私は悪魔なの~~」
「それが、どうし・・・如何されましたか?」
「だから、素質あるの~テストなの。私におねだりするの。おねだりの心を見せるの~~」
・・・何を考えてやがる。しかし、ステーキを食べられるかも知れない。
ハグ、ハグ
「美味しいの~~」
見せつけてる。
「メアリー様、少し、別けて頂けますか?」
「何のためになの~~」
「恥ずかしながら、お腹がすきました・・・」
「失格なの~~~」
と言って、ハグ、ハグ、ステーキを食べて、そのまま帰って行った。
「グスン、グスン、指導シスター殿、あの方は何者でございますか?」
「・・・知らない方がいい。やんごとなきお方のお子だ。さあ、今日は、特別に魚が出る」
「魚!有難うございます」
☆メアリー視点。
・・・私はメアリー、おねだり義妹のメアリー、
私の父は、王国の王太子だった。しかし、馬鹿!とてつもない馬鹿、良い馬鹿とかそんなんじゃなくて、取り柄のない馬鹿だった。
そして、母は、公爵の庶子、父の元婚約者の義妹。
義妹は、公爵の寵愛をいいことに、義姉から、いただきの限りを尽くした。
格差姉妹として、吟遊詩人の演目にもなったものよ。
そして、ついに、義姉の婚約者をおねだりして、父は、公開婚約破棄をしやがった。
そして、2人で仲良く廃嫡、市井で私が生まれた。
父の馬鹿は受け継いだ。しかし、
馬鹿は勉強をすれば、何とかなる。
しかし、母の品性の無さだけは何とかならなかった。
おねだりの心が、遺伝した。
欲しくて、欲しくて、欲しくて・・・他人の物が欲しくてたまらない。
そして、父と母は私を置いて、それぞれ、愛人の元に出奔して、私は、孤児院に預けられた。
修道院併設の孤児院だ。
そこでは、いただき義姉、義妹に地位と財産を奪われて、シスターとして、教育を受けている令嬢達がいた。
身の上話を聞いて、ワクワクしたものさ。
ああ、もしかして、いただき義姉、義妹から、おねだりしたら、いいんじゃないかと。
それなら、誰も咎めない。
「フフフフフフ」
おねだりの心、スザンナに聞いたが、私自身も答えが、出ていない。
他人を守るためのおねだり。
無心のおねだり。
しかし、スザンナの物欲のおねだりは身を滅ぼす。母から反面で学んだわ。
物欲は限りがない。
私にはあまり物欲はない。おねだりが目的、相手をはめて、物がもらえたら満足する。
私は、おねだり義妹のメアリー、今日も、孤児院には、腐臭ただよう。
格差姉妹の話が来るに違いない。
だから、王室から、養子の話が来ても断っている。
「メアリー孤児院長付き!アリシアが呼んでいますよ」
「は~~~いなの」
「メアリー様、どこからか、分りませんが、多量のドレス、宝石が私宛に届きましたわ。これを、孤児院の子たちに使って下さい」
「はにゃ、アリシア様は、いいの?スザンナという方に取られたってきいたの~~」
「フフフフフ、お母様の形見の品だけは、取ってありますから、ご心配なく。元婚約者からのプレゼントですから、ここにあってもつらいもの・・」
「有難く、孤児院の運営費に使わせてもらうの~~~」
「フフフフフ、私もシスターの修行が終わったら、メアリーちゃんと一緒に仕事したいわ」
「はにゃ??伯爵家から、迎えが来ているって聞いたの~~、無罪が証明されたって」
「フフフフフ、人の心は移ろいやすいもの。例え、家族でもね・・・答えが出るまで、いえ、出なくてもいいわ。
少し考えたいの」
「わかったの~~~」
欲しがりメアリー、今日も孤児院で、追放された令嬢を待っている。
・・・・
「グスン、グスン、私は無実ですわ。突然、ピンクブロンドの男爵令嬢がやって来て、婚約者をうばいましたの。私がイジメをしていると・・」
「そうなの~~大変なの」
・・・ピンクブロンドで男爵令嬢、これは一筋縄でいかねえ。
ピンクブロンドの男爵令嬢から、おねだりしてやりますか。
メアリーは忙しい。それだけ、無実の罪で修道院に来る令嬢が多いのかもしれない。
最後までお読み頂き有難うございました。