武術大会・一日目の午後
午後からもログインして試合会場をぶらぶらする。リオカも一回戦で負けたので、あまりすることが無いようで、一緒に散歩している。一人でいるよりはこうして誰かと歩いている方が楽しいし俺としては嬉しい。けれど、こうして一緒にいられるのは、リオカがクリムゾンらに負けた結果であると考えると、素直に喜べないなあ。
「ところでものすごく今更なんだが、フラウは? 一緒じゃないの?」
「本当に今更ね。試合後、フラウちゃんは大学の友達と偶然出会ってね。午後からはそっちと周るらしいわ」
「ふむ。なるほど。フラウは確か俺らとは別の大学だよな?」
「そうね」
「そっかそっか。じゃあ、そこにリオカが混ざるのも気が引けるか」
「そう。で、一人でぶらつくのはちょっとやだなあって思ってたところに、お兄ちゃんを見つけたから声をかけたって流れ」
「なるほどな。お、マルベーシの三回戦が始まるらしいぜ」
「へえ! マル姉の?! 勝ち進んで欲しいね。ここで勝ったら明日の決勝に選抜されるんだっけ?」
「そうだな。……ちょっと待て、なにその『マル姉』って」
「時々マル姉とは一緒にレベル上げするんだけど、その時に色々あってそう呼ぶことになったの」
「は、はあ。今度俺もそう呼んでみようかな?」
「辞めておいたほうがいいと思うわよ」
「じょ、冗談だから、そんなに真面目な顔で返さないでくれ!」
◆
「流石マルベーシ。一瞬で相手を完封したな」
「すごいわよね……。戦っているはずなのに、踊っているように見えてしまうのはなぜなのかしら……?」
「ああ、確かに。ついつい見入ってしまうよな。実際、ほら」
「ん? AWT公式ホームページ? 武術大会第一部のPVね。へえーー!マル姉写ってる! しかもサビの所で!」
「ああ、運営も無視できないレベルの強さとかっこよさってことだな」
「ところで、こんなの勝手に載せていい物なの?」
「そりゃ、許可を取っているだろう。それに、利用規約に『運営はプレイヤーの様子を見ている』的な事を書いていたし。まあ、それをインターネットで配信するって旨のことは書いてなかったなあ。やっぱり、あらかじめ許可を取ってると思うよ」
「へえ、そんなことが書いてあったの? 初めて知っ……忘れてたわ」
「??? 一緒に利用規約読んだよな?」
「……ゴメンナサイ。アマリ キイテ イマセン デシタ」
「おいこら」
ちなみに、リアルに帰ってから七瀬に聞いたが、ちゃんと事前に話されたらしい。それに、七瀬も自分が載せて貰えて喜んでいた。よかった、よかった。
◆
???「兄貴。これを見て下され」
兄貴?「ほう。これはこれは。我々アルカディアの優勝を祝って飲むつもりなのか?羽目をはずすのもいいが、今は目の前の戦いに全力を注げよ」
???「ふ、この品の本質を兄貴は気が付いていないようで。この効果。これは奴を奈落に叩き落すのに有効ではないでしょうか?」
兄貴?「ふ、ふはは! なるほど。まさかそんな手口があったなんて。俺としたことが、そんなことにも気が付いていなかっただなんて。流石だな」
???「お褒め頂き、至極恐悦」
二人はにやりと笑みをこぼすのだった。
◆
「ところでさ、リオカ?」
「なあに?」
「毒薬とかその他の異常状態系のアイテムの使用は禁止されてないの?」
「禁止じゃないわよ。でも意味がない」
「なんで?」
「毒ダメ無効薬とかが出回ってるから」
「ああ、なるほど。という事は、選手はみんな一通り全部の薬を持っているのか? めっちゃお金が掛かりそう。」
「そうでもないわよ? 予備を買ったとしても精々20個あれば十分だし。全種類って言っても5つくらいしか無いんじゃない?」
「5つ?」
「毒ダメ無効薬・暗闇無効薬・魅了無効薬……あと何かあったかしら?」
「魅了って誘惑シアがかけてくる異常状態だよな?」
「ええ。召喚術師の中には誘惑シアを召喚獣にしている人もいるから。……召喚獣って言い方はおかしいかしら? まあ、それはともかく」
「なるほど。召喚術師はそんな事も出来るのか。……だったら、ボス級のモンスターを召喚したら最強じゃない?」
「無理無理。ボス級モンスターは召喚可能になるまでに時間がかかるのよ。例えば、スライムは一度でも倒せば召喚可能になるわ。でもホーンラビットは五回倒す必要がある。クロウなら七回だったかしら? そんな感じで、より強いモンスター程、時間がかかるの」
「なるほど。つまり、水龍とやらを召喚するには、水龍と何十回も戦う必要があるって事なのね」
「下手すれば100回を超えるかも」
「……それは憂鬱だな」
「ええ。でもまあ、いつか誰かが達成するかもしれないわね」
「そうなったら、最強じゃん、その人」
「どうかしら。水龍(ベースレベル1)って強いのかしら?」
「へ? 強いのを倒したらそのまま強いってことは無いの?」
「残念ながら、Lv30のモンスターを倒しても、召喚したらLv.0になってる。水龍を頑張って育成したらいつかはボス級の強さになると思うけど……途方もないわね」
「ふーん、大変なんだな」
「育てがいがあって楽しいのよ?」
いつも本作を読んでいただきありがとうございます。今後ともよろしくお願いします。




