売り上げ
「おいしーー! ふわふわー!!」
「うんーー! 綿あめなんて久しぶりね! はふはふ」
試合に負けたリオカらを励ましていた俺だったが、偶然近くを歩いていた女性プレイヤーの声が耳に入った。
「流石お兄ちゃん。こういうお祭り事に合った商品を作ったのは正解だったみたいね。利用者のニーズを理解しているって訳ね」
つい先ほどまでは「お兄ちゃーん、負けちゃった~!」と落ち込んでいたリオカだったが、いつの間にか普段の様子に戻っていた。回復したようで何より。
「褒められて嬉しくない事はないが、ヒマワリさんの功績が大きいから、素直に喜べないな。正直、アルコールの方が売れるんじゃないかと思ったのだが……」
「ああ~。お兄ちゃんが作ったのってフルーツから作ったアルコールよね?やっぱりこういう場にはビールの方がふさわしかったかもね」
「俺にはその差が良く分からないが、その通りみたいだな」
「そうね。私もその差を飲み比べたことがある訳ではないけど、でもビールを飲む場面とワインを飲む場面って雰囲気が違うでしょう? そんな感じではないかと」
「なるほど。なんとなく理解した」
返事をしながら、ステータス画面から、無人販売所での売り上げ実績を見る。俺の出店物の中で一番売れているのが綿菓子。二番目が意外にも売れているキャットフード。果実酒はあまり売れていない。
「ところでリオカ、質問があるのだが?」
「なあに?」
「何故にキャットフードがこんなにも売れているのだろう? お前が今しがた言った『ニーズ』の観点から考えると、現在必要とされていない商品のように思うが?」
「なんで?」
「え? だって、アイテムによるHPの回復は不可能なのだろう? ほら、試合を泥沼化させないようにそういう縛りがつけられたよね?」
「ああ、うん。そうね。うーん。うん。まあお兄ちゃんになら言っても問題ないでしょう。実はね、召喚術師の間でとある論争が繰り広げられてるの」
「というと?」
「好物をあげたら好感度が上がってその分戦闘力が高くなるのではないかって言う意見と、そんなことをしても意味がないという意見とが対立しているの。ちなみに私は部分的に前者の意見を支持してる。お兄ちゃんはどう思う?」
「どうと言われても……。実際に戦闘力の上昇は見られるのか?」
「不明。時間と共に召喚獣が強くなるのは確かとしても、それが好感度によるものか、それともレベルの上昇によるものなのか。比較できないからね。それに、召喚獣はある程度のAIが組み込まれている。AIの成長も加味すると、もう比較検証が出来ないのよ」
「なるほど……。ちょっと待て。どの程度のAIが組み込まれているのか分かったりする?」
「普段から行っている戦闘方法に磨きが掛かったりするわね」
「すごく嫌な想像をしてしまったのだが、言っていい?」
「どうぞ?」
「『好物をあげたら好感度が上がる』かもしれないが、強くなるか否かはそれが直接の原因ではなく、オペラント条件付けが起こっているのではないかと……」
「……つまり、うまく敵を倒せたらキャットフードをあげる。失敗したら全員死に戻るからキャットフードはあげない。こういう経験を重ねることで『より上手に敵を倒す技術』に磨きをかけてきた。そうお兄ちゃんは言いたいのね?」
「まあ、端的に言えばね」
「うーん、その線で検証をしてみましょうか……? でも、字面で説明したら、なんだか悪いことをしている気分になるのは私だけ?」
「俺もそう思う。なんとなく『無理やり芸を覚えさせようとする飼い主』のようでちょっと嫌だな」
「うううーーー。取り敢えず、フラウちゃんとも相談してみるわ」
「あいよ~」
リオカはトテトテと小走りで去って行った。
◆
さて、リオカとの話でも確認した出店物の売り上げだが、実は他の人の物と比べる機能も付いている。どんな商品が売れているのか見てみよう。
売り上げトップは、串焼き屋のおっちゃんことドルフ=ドーバの商品、「串焼き」。確かにあの商品は、この場で食べるのにふさわしい味であり、それこそニーズに合った商品と言えよう。
かく言う俺も、一つ買った。美味しかったです。
売り上げの二位は俺の綿菓子。並んでいるように見えるが売れている個数はこっちの方が上。俺の商品の方が安いからこのような結果となっている。
問題は、そろそろ売り切れてしまいそうだという事である。当たり前だが、売切れたらそこで終了。無念である。
売り上げ三位はクッキーである。作ったのは住人であるローラン=エルシーとかいう人である。
こちらの商品も俺の状況と似ていて、朝から一気に売れ、現在品薄という事。俺の綿菓子もクッキーも売り切れなく売れたとすると、ちょっとの差で俺の負けになってしまう。くそう。
売上四位はすごく高い武器。一点限りの出店だったので一度売れたらそこで終わりな訳で。それでも4位に入っていることから、その武器が如何に高価な物であったのかが良く分かる。
売上五位は俺のキャットフード。確かに、ちょっと離れた所で猫キャットにキャットフードをあげている女性プレイヤーがいる。回復手段として以外にも『猫キャットとのコミュニケーションツール』として慕われているという事であろうか?
売り上げ六位はひまわりさんのチャクラム。まだそんなに売れていないので在庫も十分。ここからどこまで順位を上げてくるのだろうか?楽しみである。
さて、そろそろ俺はログアウトするとしよう。今日はリオカの好きなハンバーグである。勝ったらお祝い、負けたらお疲れ様の意味で用意するつもりだったのだ。さあ、ビッグサイズハンバーグを作りに行こうか!
いつも読んでいただきありがとうございます。今後ともよろしくお願いします。




