3、未来から来たんだ
「とりあえず信じられないだろうけど言うね。
僕、未来から来たんだよ──。」
「……へぇ。」
栖原くんの言葉に驚くというよりは、呆れている自分がいた。この人はどこまでおかしいのだろうか?
まあ、でも話に付き合うぐらいはしてみよう。
「それで?未来の私たちはどんな感じなの?」
「そこまで信じてくれていないみたいだから簡単に説明するけど、まず僕たちは同じ委員会になったことをきっかけにどんどん仲良くなっていくんだ。それでいつの間にかお互いのことを好きになって、辻坂さんの方から告白して付き合うことになる。」
「……本当に?私が告白するなんて信じられないんだけど。」
「それくらい本気で僕のことが好きになったって事でしょう。」
「……もう良いや。続けて?」
「まあ、そんな感じで順調に付き合っていくんだけど、高校卒業する時に俺がプロポーズしてね。二人は晴れて結婚するって訳。ここまでは最高なんだ。
でもこれ以降の僕たちは本当にうまくいかないんだ。」
彼の表情は一気に暗くなる。あまりの暗さに、私はどう声をかけてあげたらいいのか分からなくなった。
知り合って間もない人に、自分たちの馴れ初めの話をされても到底理解は出来ない。それでも、未来の私は彼のことを選びそして結婚しているようだ。
「……うまくいかないって、具体的にどううまくいかない訳?」
「……それは……話したくない。」
それまでは何でも語ってきた彼が、急に話したくないと言うものだから驚いた。未来の私たちに何が起こっているのか気になるところだが、これ以上深入りしても無駄だと思い諦めた。
「僕は同じ過ちは繰り返したくないんだ。だから、君と協力をして未来を変えたいと思ってる。」
「それで私に協力して欲しいって言った訳ね?」
「うん。協力して欲しいことはただ一つ。"僕のことを好きにならないで欲しい"っていうこと。もちろん、僕も君のこと好きにならないようにするから。」
そう言った彼の目は真剣そのものだった。
今まではただおかしい人だと思っていたが、この人もこの人なりに考えていることがあるんだなと、少し自分の中で納得することが出来た。
「だからさ、まずはお互いに好きな人を作ろう。そして、僕たちは必ずそれに協力する。どう?」
栖原くんの提案に、私は笑みを浮かべる。
「良いと思う。やってみよう──。」
そこから私たちの奇妙な付き合いが始まったんだ。