10 金曜日・前
集会は明日だ。今できることは特になく、休暇を楽しむために植物園に行くことに決まった。
歩いて回るだけで十分楽しめた。王宮の裏庭に植えたい花があり、いくつか種を買った。庭師に頼まず、自分で育ててみよう。
昼食は、人気のある香草を使った飲み物や食べ物を買って、持ち帰りにして外で食べることにした。外には机と椅子の組み合わせがいくつかあり、植物に囲まれながら食事が楽しめるようになっている。円形の四人がけの机に、向かい合うように座った。
遠足のようで懐かしかった。今度は王子を誘って王宮の庭で食べるのも良いかもしれない。
意識せずに王宮のことを考えてしまう。職業病というより、家のことを考えるのに似ている。いつの間にか王宮を帰る家と認識していた。
まだ七年しか住んでいないのに。もう七年、というべきか。
一人納得して香草が入ったお茶を飲んだ。
「あ、付き人さんだ」
スバルの声に、指差す方を見た。
そこには驚きの後、眉を寄せた付き人がいた。偶然通りかかったのか。
「ユウトだ。勝手にあだ名を付けるな」
ユウト。王族の名前だ。多い名前だけど、ここで聞くとは思わなかった。たまたま同盟の主要人物は王族の名前なのだろうか。それとも偽名か。通称、とか。
付き人というのは否定しなかったから、盟主の付き人なのは間違ってなかったわけだ。
「ユウトさん、ね。時間あるなら少し話さない? 革命同盟について聞きたいことがあるんだ」
「同盟について? まあ、少しなら付き合ってやる」
付き人という立場なら、同盟についての話なら断らないだろう。スバルの提案に溜め息を吐きつつ、椅子を勧めた。利き手の左側に座らせ、すぐに動けるように体勢を整えた。
紅茶を淹れながら、様子を見る。
「で、何が聞きたいんだ?」
「あなたは何故、革命同盟に入ったの? 政策に不満があるようには見えないけど」
スバルが何を見てそう思ったのかわからないけど、観察力と洞察力が優れているから何か引っかかるところがあったんだろう。
ユウトは片眉を上げた後、面白そうに口の端を上げた。
「政策に不満はない。ただ、現状で良いと思っていない」
「つまり?」
「今以上に良い国になるにはどうしたら良いかってことだ」
なるほど。革命ってそういう意味か。国に対する不満で王宮から権力を奪うんじゃなく、発展させる方の革命か。
でも、演説ではそんなことは言っていなかった。不満はないか。そればかりだった。チップで管理された国を批判していた。
ユウトの前に紅茶を置いた。
「へえ。否定することで、それを改善する方法を考えるわけだ」
「そうだ。前の革命同盟は管理社会の悪いところを挙げて否定することだけを考えていたけど、一ヶ月前に盟主が変わったんだ。それで方針が変わって、俺も同盟に参加することにした」
そういうことか。同じ革命同盟でも、盟主が変わって性質も変わったのか。あの集会では前の思想を支持する人が多かったようだけど、ユウトのように新しい思想を支持する人もいたわけだ。声を上げて目だっていたのが否定派だけだったのかもしれない。成員に数値が高い人が多いのも、今の思想だからかも。
でも、あの時スバルは気になることを言っていなかったか。仕組まれている。そう言っていたはずだ。
「じゃあ抗議するっていうのは?」
「行動しないと意味ないからな。このままではいけない、改善することがあるっていう内容で抗議する。チップを無くして今以上の国はないだろうからな。それを前提に管理の方法を見直すべきだ」
「だから『チップで管理されるのは正しいのか』、『数値で決められた人生に自由はあるのか』か」
盟主の言葉を反芻する。
現在のように管理された国。管理が悪いのではなく、管理の方法が間違っていないか。チップで管理されるのは正しいのか。
チップをいう手段は最善か。それ以上の物はあるか。無いならチップは肯定しなければならない。数値で決められた人生に自由はあるのか。数値で決まるという安心がある。基準がなくて不安定な方が良いのか。それが自由なのか。
はっきり言って、この国のやり方に不満があるなら他の国に行けば良い。近隣の国々とは交流があり、移住は自由だ。チップは国を出るときに希望すれば除去してもらえる。
「前の革命同盟の思想は、馬鹿らしいよな。チップによる管理や数値制度が不満なら他の国に行けば良いんだ。実際、チップを拒否した奴や数値が低い奴らはチップで管理されない区域に連れて行かれてるんだろうし」
「……よく知ってるね。それも噂?」
「考えればわかるだろ。公開されているこの国の地図で、管理外の区域があるんだから」




