11 金曜日・後
地図を見ただけでそこまで辿り着くなんて、ユウトの知能の数値はどれだけ高いんだろう。あの盟主の付き人だから、数値は高いとは思っていたけど想像以上だ。きっと、盟主の知能も同等かそれ以上なんだろう。
スバルは口元だけで笑った。
「管理外の地域があるから、チップで管理を望まない人はそこに連れて行かれる、ね。それが正解なんだろうね」
「チップの管理は政策の一部だからな。殺しはしないだろう」
「で、革命同盟の中でチップの管理を望まない人は、何故その場所に行かないのかな」
「知らないんだろ。考えもしない。同盟の中で結構な数が強制的に連れて行かれてから、不満だけが蓄積する」
吐き捨てるように言ったユウトは、紅茶を一気に飲んだ。
「アンタはどう思う?」
話の矛先が向けられた。
俺のことは眼中に無いと思っていた。数値が平均である俺は、同盟にとって価値はないはずだ。
いや、今の同盟では数値は関係ないのか。
どう思う、か。いろいろ思うことはあるけど、この問いの答えは一つだ。
「正しいとは思っていない」
王子への回答を繰り返した。
スバルは笑みを深め、ユウトは意外そうに眉を上げた。
「理由は?」
「同盟と大体同じだ。現状で満足してはいけないと思う」
「じゃあ、同盟に参加しないか?」
ユウトは純粋に誘っているようだった。俺でスバルを釣ろうというわけではなく、俺だけの加入で良いのか。
同盟か。思想は似ているけど同じじゃない。同じであるはずがない。
俺は、ただ一人だけに忠誠を誓っている。
「しない。数の力は認めるけど、自分が入るのは別だ」
「やっぱりな。わかってたから無理強いはしない」
ユウトはあっさりと引いて、茶菓子を口に入れた。
強く勧誘されなくて良かった。絶対に首を立てには振らないから、何度言われても無駄だ。
スバルを見ると、口元を引き締め、真剣な表情になっていた。
「明日の集会で、暴動はないんだよね」
「……絶対無いとは言い切れない。今の同盟は内部で分裂しているところがあるからな。武器の所持の確認はするけど、衝突するかもしれない」
絶対大丈夫とは言い切れない。確かに、今の同盟は昔の思想に賛同した人と、今の思想に賛同した人が混じっている。『チップでの管理に不満を持つ』ということで共通しているけど、根底にあるものは違う。
そうか。革命同盟はこんなにも不安定なのか。数値が低くて同盟に参加している人は、一定数値を下回ると連行されるから減っていっているはずだ。暴力は犯罪で、捕まることはわかっているのに。それでも暴力という手段を選ぶなら、俺は対抗する。
この国を、彼を守るために。
「明日になってみないとわからないね」
スバルの声が、緊張を含んでいるように聞こえた。




