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19話 シハカミでお買い物(前半)

長くなり過ぎたので、前後に分割しました。

2025/8/26 加筆修正

 チッチッチッ!ピーチョン!ピョーチョン!


 朝日が顔を出しそうな頃、野鳥の鳴き声にたたき起こされた。


 昨日は夜更かしをしてしまったので、まだ眠い。娘はもう起きていて、屋台の食べかすをついばむ鳥たちを眺めていた。


「おはよう」


「おあよ」


 よく眠れたようで、お目めぱっちりだ。


(うちの娘、可愛いなぁ)


 娘が近づいてきて鼻をくんくんさせたかと思うと、不意に顔をしかめる。


くしゃい(臭い)


「!?」


(まさか加齢臭か!)


 と思ったが、この体ではありえない。となると、昨日のお酒だろうか?自分の体の匂いは、慣れてしまっていてよく分からない。後で水を貰って、洗い流そう。なるべく口を開けないように気を付けながら、娘の毛並みを手櫛(てぐし)で整えてあげている時に思いついた。


「ブラシ買おうか?」


「うん!かぁいいやつ(可愛い奴)!」


(機能性重視が良いと思うけど、可愛い奴か…)


 他に必要なものも含めて、栗林(くりりん)さんに聞いてみよう。


◆ ⁂ ◆


 身支度を整えて一階へ降りると、食堂はすでに慌ただしさに包まれていた。


「パン1、スープ1」「アイヨー」「パン2、スープ1」「オマタセ!」「スプーンないぞ!」「スミマセン!ドウゾー!」「パン1、スープ1」「ヘイオマチ!」「悪い、パン持ってきてくれ!」「アイヨー」「パン2、スープ1」「オマチー」「パン2、スープ1」「ナイヨー、チョトマテ」「お待たせしました!」「スープ、そっちまだあるか!?」「アルヨー」「パン1、スープ1」「ドウゾー」


 仕事へ向かう者たちが、パンとスープをかき込むようにして席を立っていく。カウンターにはメニューが大きく表示されている。


≪鶏肉入りスープ+パン (ニェン)200 ※追加は1つ(ニェン)100≫


 食事を受け取ってから食べ終わり出ていくまで、5分もかかっていない気がする。味よりも、燃料補給の速度重視といった印象だ。


(まったく無駄がない、素晴らしい!惚れ惚れするほど効率的だ)


 後でまとめて洗うのか、使い終わった食器が、出口に設置されている樽の中へ放り込まれていく。中には、歩きながら最後のひとかけらを口に放り込み、そのまま皿をぽいっと樽に投げ入れる者までいた。


 ガシャッ!カラコロ…ガシャッ!カランカラ…ガシャッ!ゴッ!ガシャッ!

 

 いくら食器が木製とはいえ、放り込まれる勢いと量に、壊れないか心配になってしまう。


(それにしても、パンとスープだけか…)


 自分だけなら気にしないが、今は食べ盛りの娘が一緒だ。頼めば別の品も出るかもしれないが、1つのミスが命取りになりそうな厨房を見てしまうと、頼む勇気は出なかった。


(足りないようであれば、屋台で買ってあげよう。腹も満たせて情報も得られるなら、一石二鳥だ)


 流れを邪魔しないように気を付けながら食事を受け取ると、ゆっくり食べられるように端の席に陣取る。


「ゆっくり食べてね」


「あぃ」


 娘が食べ始めたのを見届けると、飲み水を取りに行く。戻った時には、料理が半分に減っていたが、嬉しそうな娘の顔を見ると何も言えなかった。


「美味しい?」


おいひい(美味しい)!」


 そのまま息をつく暇もなく完食してしまった。昨日、部屋へ持ち帰った料理だけでは足りなかったかと心配になるが、お腹は一杯になったようで満足そうな顔をしている。仕事へ向かう人たちは既に退店しており、食べ終わった頃には宿泊客の姿しかなかった。


 食器を片付けて、さて買い物へと思っていたら声をかけられた。


「おーい、そこの嬢ちゃん」


 厨房から、いかついおっちゃんが手招きしている。


「まだ食えるかい?」


 なんと、娘の為に果物を切ってくれたようだ。『おいひい(美味しい)!』と言われて嬉しかったのかもしれない。


あいがと(ありがとう)!」


 満面の笑みでお返しをする娘に、いかついおっちゃんが一瞬でデレデレになった。


(うんうん、うちの娘可愛いもんな)


 果物も食べ終わり、お腹がポッコリしてしまった娘をおんぶしながら厨房へお礼を伝える。


「ごちそうさまでした」


「おぅ。夜はまた、(くり)に付き合うのか?長話だから大変だろ。嬢ちゃんの夕飯も、用意しておくからな!」


 栗林(くりりん)さん、常連なのか名前を憶えられているようだ。


 『あんまり遅くなると、料理が冷めちまうぞ』という声に『早めに帰ります』と返して食堂を出る。なんだか実家にいる様な人情あふれるやり取りに嬉しくなり、また利用しようと宿の看板を振り返る。


 ≪妖精猫亭(ファタフェリーナ)


 青い猫と妖精があしらわれた、お洒落な看板だった。


(妖精と言っても、厨房に住んでるのは筋肉の妖精さんだったな)


 ちなみに、猫は受付で寝ている。茶トラ模様の、ちょっとふくよかな看板息子だ。名前は『ウノ』というらしい。昨日、通りすがりに顔をくすぐってあげたら『ぶしゅっ』っと、くしゃみをされた。


(帰ったら、娘のオヤツの小魚を少しおすそ分けしようかな?)


 ちょっと太り過ぎな気がするし、飼い主に確認してからにしようと思いつつ宿を出た。

 読んでいただき、ありがとうございました!

貴方に、満月の祝福がありますように…


※ファタフェリーナ(妖精猫)は、イタリア語由来の造語です。

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