薄揚げポテトは魅惑の存在2
小生は傭兵をやっている。
機体は高機動型で、武装はこの刀、「虎狼」一本のみ。
何年も虎狼一本でやってきた。
自慢ではないが相応に腕は立つと自負している。
そんな小生に依頼が来た。
通常、依頼は傭兵連合を通したり、マーセナルズの掲示板に書いたりするのだが、傭兵への直接の依頼はままある。
ただ、小生は得物が刀一本であるために、直接依頼が来ても断ることのほうが多い。
普通の依頼であれば、尚更だ。
だが今回の依頼は、そう。
”小生向き”の依頼であった。
内容は単純。
「青狼と呼ばれている傭兵を捕らえてもらいたい」
報酬は前払い50万ドル、成功報酬で100万ドル。当人が無傷であれば報酬は倍額で、合計300万ドルにするとのことだった。
青狼とやらの名は初耳だった。
どの程度やるのかは知らないが、非常に強力なHT乗りであり、つい先日には戦闘の専門家集団をたったの1機で殲滅したとのことだった。
リギーに対しても、自分よりも大型のものを軽々と相手取り、多額の報酬を得ているという。
なるほど、相手にとって不足なし。
受けよう、その依頼。
「小生の名に。
秀閃の名に誓って!
必ずや切り伏せてみせようぞ!!」
いや依頼は捕縛だからね?
間違っても真っ二つになんかしないでね?
依頼人から青狼の情報を貰う。
写真が数枚と、まあ見ての通りの青い髪。
いくつかのマーセナルズを回って情報を得ようとしたが、その全てが空振った。
とあるマーセナルズでは、明らかに本人と思われる人物がいたのだが……違うと言われたのだ。
情報が集まらないとなると厳しいが、ちょうど依頼人から、青狼が出撃したという情報を得た。
場所がわかっているなら話は早い。すぐに出陣である!!
「突然の訪問失礼する!
貴君ら、青狼とその一味と見受けるが!!」
「はあ!?
あたしらは青狼なんて名前じゃねーよ!
つーかそこで止まれ!止まらないなら撃つ!」
あれれえ?おかしいぞ?
いやでも依頼人はここにいるのが青狼だって言ってたし……
どっちだ?どっちが騙そうとしてる?
そりゃあ当然、獲物のほうに決まっとる!
「フン、誤魔化しても無駄よ。
だが小生は懐が深いのでな。
青狼なる人物。青い髪の少女を大人しく引き渡せば、他の者には一切危害を加えぬ」
「ユウ、やれ」
瞬間、相手のHTが発砲した。
なんたる照準速度か!斜め下に構えていた腕が一瞬で持ち上がった!?
……いや、小生が油断していただけか。
全く、交渉の余地なしとは。これでは皆殺し以外に選択肢はあるまい!
いや、青髪の女の子は捕縛だよ?
間違ってもミンチになんかしないでね?
「射撃型のHTなぞ!」
銃など射線が丸見えな欠陥兵器よ!
だが待って欲しい。確か青狼とやらはHTに乗っているという話では?
付近にHTは他に見当たらないし……
じゃあ、あのHTの中にいるのが青狼か?
とすると、コックピットへの直撃はまずい。腕と足を切って無力化する必要があろう。
無論、とにもかくにも近付かねばなッ!
「ふぉぉおぉおお!!」
右、左、右、左。
小生の動きに追い付こうとする努力は認めるが、銃では小生を捕まえることなど叶わぬ!
まずはあのちょこまかと動く右腕を切り落としてくれるわ!!
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「なんて機動力だい!?
ユウの射撃をああも避ける!?」
砂埃を巻き上げ、真正面からにも関わらず幼女の射撃を華麗に避け、それでいて距離を詰めて来るバンセル。
先日戦ったならず者集団とは全く違う、キレのある動き。
それに対してユウの機体は、どういうわけなのかその場から動かずに射撃を繰り返す。
輸送部隊の姐御は……フェンネル・マッグレンの脳裏に、まさかの可能性が過った。
「ユウ!あたしらのことなんか気にするんじゃないよ!
いつものようにやっちまいな!!」
輸送部隊が、自分たちは無力なのは重々承知している。
それでも、HT乗りって奴らは命を張ってこっちを守ってくれてるんだ。
まあ、たまにはクズ野郎もいるにはいるが、ユウはそんなんじゃない。
そういう奴じゃあないんだ、あの幼女は。
こっちだって命張ってやる。その価値があの幼女にはあるんだ。
だが、フェンネルの叫びが聞こえていないのか、何かあったのか、ユウの戦い方に変化は起きない。
なぜだ?どうした?何かあったのか?
何かあったとして、自分たちに何ができる?
そうだ、精々人質にならないことくらいしかできやしない。
「お前ら!撤収するよ!!」
「えっ!?撤収!?
姐さんそれは!」
「黙りな!
あたしらが”使われる”ようなことがあったらコトなんだよ!!」
「……!
了解しやした!!」
だが、その努力も今から始めたのでは遅過ぎた。
既にバンセルはヘリオトロープの目前に迫っており、ユウはそれでも射撃を繰り返した。
右、左、右、左。
「無駄なあがきであったな!
死ねぇぇぇえええい!!!」
いや、依頼は捕縛だよ!?
間違っても殺したりしないでよ!?
振り降ろされた刀がヘリオトロープの右腕を叩き切った。
と、同時に。
射突杭がバンセルの胴を貫いた。
――望まない乱入者との戦闘は、これで終わった。
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「なんだってんだい、こいつは……」
「姐さん、情報来ました。
名前はシュウ・セン。マーセナルズランクエース。HT登録名は”墨柳”だそうです」
「エースだってえ?
そんな雲の上の奴が、ユウを狙ったってのかい?」
結局、棒立ちの状態で左右に弾を撒いていたのは、ユウによる誘いだった。
刀しか持っていないことと、目的はどうやら誰かの捕縛であったらしいことから、HTのコックピットに危害は加えないだろうという予測を立てていた。
そのため、できるだけ正面から外さず回り込まれないように牽制しながら、射突杭で一撃必殺を狙う。
かなり危うい賭けではあったが、外したとしても敵を倒しはする算段だった。
斬られると同時にでも、敵のコックピットだけは撃ち抜く。そういう計画だったのだ。
文字通りに自信の命と引き換えにするつもりだったことを知ったフェンネルが、思い切り拳骨を落とした。
確かに賭けだったけど、そうなると思ったから……と言ったら、もう一発貰った。
涙目になったユウは黙った。これ以上殴られまいと必死に黙りこくった。
後は、ヘリオトロープの右腕くらいだ。被害と呼べるようなものは。
斬られた腕は上腕部分で、パーツの差し替えですぐに直りはするものの、一度は拠点に戻らなければならない。
それに、襲撃なんてことがあったのだ。増援が来ないとも限らない。
今日の狩りは獲物の回収を中断しての撤収となった。
「ランクエースに襲われたですって?」
受付嬢の確認の言葉に、ざわり、と建物内が揺れた。
マーセナルズは傭兵同士のトラブルに関与しないが、それが一方的なものであれば情報の共有くらいはする。
そして、シュウ・センの発言から目的が青狼の捕縛……つまりユウの身柄であったことも広まった。
このことを受け、マーセナルズは一時的にユウの周囲に警備兵を置くことを提案した。
費用はマーセナルズ持ちで、秘匿されている拠点などには踏み込まない。
一介の傭兵にこのような措置は、本来ならあり得ないことだったが、1日100万ドル稼ぐ傭兵であるユウに何かあったらマーセナルズも大損害であるために、こうした行動に出ることになった。
並行して、シュウ・センに依頼した人物の捜査も始まることになったが、こちらはあまり期待できないとのことだった。
ヘリオトロープの修理のほうは、倉庫に入れてある予備パーツと交換であっさり済んだ。
稼働試験も問題なし。
すぐにでも狩りに出ようとしたのだが、受付嬢や輸送部隊の姐さん他、複数の傭兵に、「何が残ってるかわからんからもう少し待て」と言われ、しぶしぶ拠点で薄揚げポテトをつまんでいる。
ぱりぱり。
うまい。
とまらん。
ぱりぱり。
うまい。
もうひとつ。
ぱりぱり。
うまい。
もういちまい。
ぱりぱり。
うまい。
もうないやん。
60グラムで2万ドル。
この世界のポテチの値段だ。
なぜか机を叩き割りたくなるような感覚に疑問を抱きながらも、ユウはもう一度同じものを選択した。
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「っとにもう。
警察の無能っぷりには嫌気がさすわね」
「しょうがないですよ。連中俺らを見下してますから」
「だが青狼からの資源の供給が止まったことで、奴らも少しは焦っているようですぜ。
こっちは突っぱね続けるだけでいい」
「ふふふ、そうね。
ユウちゃんの味方をしない奴らに資源をあげることないものね」
そんな密談をしている最中に、扉が思い切り開いた。
「お前ら!何こそこそとやってる!」
マーセナルズの支店の支配人だ。
見た目は普通のおっさんで、あまり尊敬されてはいない。
「青狼の活動を止めてるってのは本当なのか!
さっさと動かさんか!!」
「あ~ら、マスター?
ユウちゃんを襲った犯人は死んだけど、裏側はまだわかってないのよ?」
「それがどうした!!」
「ふうん?つまりマスターは、主犯がわからない状況で何の対策もなく、ユウちゃんに狩りに出てもらって……
今度こそ捕まえたい、ってことかしらあ?」
「なんだと……!!」
青筋浮かせた支配人が受付嬢を睨みつける。
あと一回でも煽れば簡単にブチギレそうだ。
「マスターよう。なんも不思議なこたあねえだろ。
黒幕わかってねえ内から闇雲に動いてほしい奴らなんて、そりゃあ疑われるに決まってるだろうよ」
「お前らふざけるなよ!
資源が手に入りゃあ構わねえって言ってんだ!!」
「だからよお、わかるだろ?
青狼さえ手に入れれば、資源は手に入るんだよ。
そういうことだ、って言ってんだ」
青狼が動かないことで資源の回収が止まっているなら、だ。
青狼が動くことで資源の回収が再開することと、青狼を捕まえて資源を回収させること。
それは異なる意味を持ちながらも、同じ結果を持っている。
ただ少々、誰かしらの取り分が変わるくらいで。
「お前ら……!!」
そのことを指摘された支配人はブチギレ……と言うかよく我慢した。
だが、支配人は中間管理職だ。
マーセナルズは都市との取引を行っているが、その関係は持ちつ持たれつのもので、どちらかが止まればもう片方も止まる。
都市に資源を提供するマーセナルズと、作られた兵器を提供する都市側。
どちらも決して欠かせない存在なのだ。だから、先に業務を欠いたほうが責められる。
要するに、受付嬢らも別に支配人を疑ってなどいない。こんな小物に何もできることなどないとまで思っている。信頼されてるね。
どうせ支配人は本部や都市側に散々催促されたのだろう。仕事くらいしっかりやれ、という名目で。
「何が、目的だ……!!」
ようやく支配人も状況を理解した。
だが、目的など最初から言っている。
「だからぁ。黒幕の首までを要求なんてしないわよ。
どうせ似たようなことは今後も起きるでしょうから。
必要なのは、ミリオンスタイルに対するバックアップの強化。
資源が欲しいなら、相応の支援が無いとねえ?」
「支援だと……?
馬鹿を言うな!ミリオンスタイルの傭兵を支援など、金持ちに金を撒くような真似ができるか!」
「マスター?あなたそんなに頭悪かったかしら?
支援って金銭なわけないじゃない。周囲の警戒や定期的な調査。
これだけでも十分なのよ。彼女は自分で自分を守れるタイプだしね」
「まさか……」
「そのまさか。
ふんぞり返って何もしない警察機構に、出張ってもらうわよ?」
その後、主犯に対して何の行動も起こしていない警察こそが、資源の回収が滞る原因だとして、話が逸らされた。
警察は事実無根だと反論するも、警察が動きさえすれば事態が解決に向けて動くという事実はあったために、押し切られる形となった。
とは言え、真面目に捜査するつもりもなかった警察は、下層の人物を適当な犯人にでっち上げると、傭兵たちの喧嘩だったと声高に主張した。
だがシュウ・センの口座に入れられた前金らしき50万ドルを、その犯人が用意できたはずもなかったために、警察機構は都市側に強く責められ勢力を削がれることとなる。
だが最終的には、主犯はわからずじまいであった。
これは別に誰が悪いと言うよりは、誰にも届かなかっただけだろう。
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ぱりぱり。
おいしい。
まだある。
ぱりぱり。
おいしい。
もっとくう。
ぱりぱり。
おいしい。
まだあるよね。
ぱりぱり。
おいしい。
まだ……えっもうないやん。
60グラムで2万ドル。
ニキビもできちゃうし、太っちゃいますよ?
えっ絶世の美幼女っていう設定の主人公だからできない?
そんなメタな理由で!
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