83.初めての…
翌朝、酒場に向かう途中で前日俺から話した話題をラナから振る形となった。
「昨日、狩りを早めに切り上げて店に行ってみたの。
手が届かない値段ではないんだけど今の私には高かったのよね。」
「鞍が高かったもんな…それでも格安だったんだとは思うが。」
「そうね。鞍自体はとてもいい物だったし後悔はしてないわ。
でもスキルがあったらもっと狩りの効率が上がると思うのよ。」
「たぶんそうだよな。それで、俺に何か頼みがあるのか?」
「頼みっていうか…そうね。
そもそも最近では指導らしい指導をしてもらってないわよね?」
痛い所を突いてくるな。
「まあ…そうだな。スキル書云々の話は俺からしたんだけどな。」
「うぐ…つ、続けるわよ!
にもかかわらず寝る時は…その…私のお尻を使ってるわけじゃない?」
言葉に出すのが恥ずかしいならもう少し暈せばいいのに…
「そうだな。」
「ってことは私の方が貸しを作っていると言っても過言じゃないと思うの。」
「いや、色々差し引くとそれは過言だろう。」
「だから私にお金を貸してほしいの。必ず返すから!」
どうやら俺の言葉は聞こえなかったらしい。
「もし返せなかったらどうするんだ?」
「それは…せ…性…奴隷…とか?」
そんなことをするわけがないだろう。どれだけ頭の中が桃色なんだ…
そもそも俺に性器はないぞ。
『ラナハナカナカ下品ナ事ヲ思イツクノダナ。』
『頭の中がそうなっているんだろう。』
「馬鹿なことを言うな。そんなものが必要なら尻だけで済ますはずがない。」
「そ、そうよね…」
「まぁ最近は指導が必要じゃなかったのは確かだし、
そんな状況で毎晩尻を堪能してるのも悪いとは思っている。」
「え?それじゃあ…」
「正直金は余ってるし貸すくらいなんでもない。いくらだ?」
「20万円なんだけど…」
図鑑から20万円を取り出してラナに渡す。
「これでいいか?期限は定めないが返済は無理のない範囲で早めにな。」
なんだか金融会社のCMみたいになってしまった。
「ありがとう!これで効率も上がるしきっとすぐに返せるわ!」
どちらかというと銀行の気分の方が近いか。利息はないけどな。
食事を済ませて組合に向かうとラナもこちらについてきた。
「せっかくだから買ったところを見せようと思って。」
「返せなかった時のことは聞いたがそこまで疑ってはいないぞ。」
「いいからいいから。」
魔法具屋の前まで来たところでラナからストップがかかった。
「ここで待ってて。すぐ買ってくるから!」
「何もそこまで…」
こっちの言葉も聞かずにラナは店に入っていった。
無視して組合に向かうわけにもいかないので待っていると
ラナは満面の笑みを浮かべ、スキル書らしき本を手にすぐ戻ってきた。
「見て見て!これが欲しかったスキル書よ!」
「何も図鑑から出してまで見せなくても…」
「スキル書は全部読み終わるまで図鑑に入らないわよ?
読み終わっても本はなくなってページが増えるだけだけど。」
なるほど、そうでもしないと貸し借りができてしまうか。
「今日は宿に戻ってこれを読むわ。
読み終わって時間がありそうなら狩りに行くけどね。」
「そうか、頑張って読んでくれ。」
「言われるまでもないわよ。それじゃあまたね。」
「ああ、またな。」
魔法具屋前でラナと別れて再び組合に向かう。
『尻ト引キ換エニ金ヲ借リル…カ。』
『言い方は悪いがそういうことになるな…ラナとしても
苦渋の決断だっただろうしあんまり言わないでやってくれ。』
『大丈夫ダ。ソンナコトヲ言ウホド無粋デハナイ。』
『ヨルムは何か欲しいものはないのか?』
『特ニナイナ。強イテ言エバコノ前見セタ人ノ姿デ
ポノニ抱キツカナカッタコトガ心残リダ。』
アカネと似たようなことを言い始めたぞ…
『さすがに街中じゃ無理だな。昨日言ってくれればよかったのに。』
『聞カレタカラ考エタラソレガ思イ浮カンダノダ。』
『それなら今日もダンジョンに行くか?掲示板の依頼はいつでもいいしな。』
『本当カ!?』
『もちろんいいさ。そんなに食いつかなくてもいいだろう。』
予定を変更してダンジョンに向かうことにした。
元々組合を目指していたのでそのまま歩き続ける。
ダンジョン前に到着すると衛兵が話しかけてきた。
「今日も挑まれるのですか?貴方がダンジョンに行くと
心なしか組合の方の機嫌がいい気がします。頑張ってください。」
「そうなのか?組合のためというわけじゃないが行ってくるよ。」
特に今日は狩り目的で入るわけじゃないしな…扉を開けてダンジョンに入る。
「ヨシ、デハ早速…」
ヨルムは以前見た通りの人型に変化した。元が蛇だからかとてもスレンダーだ。
「相変わらず綺麗だなヨルムは。」
「よせ、照れるではないか。」
「それで俺はどんな体勢でいればいいんだ?立ったままか?寝転がろうか?」
「そうだな…まずは立ったままで。」
「わかった。」
ヨルムは裸のまま俺に抱き付いてくるがどこか不満気に見える。
「何か不満があるのか?」
「人目があるわけでもないしせっかくだから脱いだらどうだ?」
大自然|(に見えるだけだが)の中で全裸か…たまにはいいか。
「しょうがないな…」
石畳の上に服を脱ぎ捨てる。
しかしヨルムは不思議そうな表情をしている。
「どうしたんだ?」
「ポノに触れていてもあまり体温を感じないのは何故なのだ?」
「ああ…これでどうだ?」
俺を覆っている膜の一つをヨルム透過可能にしてみる。
ヨルムの体温は人よりも低く、ひんやりしていた。
「おお…これがポノの温もり…どういうことだ?」
「温度をある程度遮断する膜を張っているんだが
ヨルムがすり抜けられるようにしてみたんだ。」
「なるほど…それで普段からあまり体温を感じなかったのだな。
ポノの体が金属のように硬いのも同じような膜のせいか?」
「そっちは外部からの作用を無効にする膜だな。
重力に関しては受け入れるようにしてあるが…そっちも透過させようか?」
「是非頼むぞ。」
頼まれたのでそちらも透過させる。
ヨルムの柔らかな肉とサラサラでスベスベな肌が心地いい。
考えてみたらヨルムが俺に危害を加えるわけがないしこのままでもいいか。
「おお、見た目の割に柔らかくてしなやかだな。」
「いい筋肉は柔らかいって聞いたことがあるぞ。俺のは筋肉じゃないけどな…」
「いい…いいぞ。これはたまらん。」
ヨルムは異様に興奮している。
美女に抱きつかれるのはいいが口調が男みたいだからな。
ヨルムの姿を見ていないと少し不安になる。
「まあ気が済むまで堪能してくれ。言ってくれれば体勢も変えるし。」
「本当か!?ならば…」
その後、日が沈み切るまでヨルムの要求は止むことなく続き、
ボスまで行く時間もないので初めて入り口から帰還することになるのであった。




