帰宅後の努力
その晩、私は家に帰ってからもなかなか寝付けずにいた。閉じ込められた事もショックだったが、クラスメイト(Stormと呼ばれているらしい)と少し話をした位で他人に危害を加えようとする人間がすぐ側に居るという事に戦慄を覚えた。
アルカスハイムにいた頃は常にあらゆる事に警戒していた。街の中に居れば権力者からの誘いや恫喝、実力行使も含めて勇者としての力をその手に収めようと言う輩は後を立たない。街の外にいれば、それこそ魔王の刺客からモンスター、野生生物や過酷な環境が私たちの身を脅かした。
(やっぱりあれは夢だったんだろうか・・・)
そんな考えをしながら携帯の画面に触れる。パスコードを入力し、画面を見つめる。そこには真実の瞳というアプリが存在している。今までまともに向き合おうとはしてこなかったアプリ。あの体験が夢であろうが現実であろうが、自分としてはもうどうでもいい事だ。少しでも今回の事件の糸口になるのであれば利用してやる。そんな気持ちと共にアプリを開く。
以前にもみた安っぽい作りの画面にはさまざまな項目が並んでいた。その一つに目を止める。このアプリは解放されていない機能が沢山ある。もしこのアプリがあのスキルをそのものであるならば使えるはずである。使用者履歴。
アイテムに触れた順番に新しいものから10人まで知ることができる。このスキルを使いこなせれば今回の犯人は分かったも同然である。待っていろ、卑怯者の犯人め。
私は意気揚々とチュートリアルに取り組むのであった。
翌日。吐き気と頭痛に悩まされながら目を覚ます。飲んだことはないが二日酔いとはこんな感じなのではないだろうか。その原因は単純である。アプリを使うためにはどうやらあちらの世界で言うところの魔力を消費するらしき。つまり今の私は魔力切れを起こしているいる状態である。
「甘かった・・・」
できる限りのアプリの解放をと焦った挙句自分の容量以上の力を吸い取られ、気絶したのである。
(魔力使うなら最初から説明しておいて欲しいわ!!!)
怒りもあるが、これはアルカスハイムでも初期の頃によくやらかしていたので学習能力がないといえばその通りなのだろう。元の世界に戻ったことで、真実の瞳もレベル1になっているのだから、優希自体もレベルが下がっていて不思議はない。もとよりレベルや魔力の概念がないこちらの世界ならばなおさらである。
(先は長いなぁ)
ため息と共にベッドにへたり込む優希の手にはまだしっかりと携帯が握られていた。




