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23.すっかり忘れてた

 早速、東村が引っ越して来ました。部屋は204号室で、姉御のいる201号室とは、二階の端と端になります。実は、核家族向けのこのアパートは、3LDK軽量鉄骨二階建て、一階4部屋、二階4部屋南向きの結構快適な物件なのでした。

「何でこんな端っこなの~? 誰か住んでるの?」

大福ねずみと姉御は、引っ越しの見物に来ていました。

「一階はいっぱいだけど、二階は人間専用として開いてるよ」

「人間はいいとしても、そもそもさ、一階の家賃とかどうなってるのさ~」

座敷グレイは金を持っていそうでしたが、りょうちゃんに収入があるとは思えません。

「体で払ってるよ。座敷グレイは、間接的に財産を増やしてくれる。りょうちゃんは怨念で害虫を寄せ付けないようにしてくれてる上に、泥棒なども撃退してくれるという、超有能な警備担当者だ。他にも、埃取りや草むしりなど、アパートライフを快適にしてくれている仲間がいるぞ。乞うご期待」

 大福ねずみは、姉御が仲間と呼ぶものに、全く期待を持てませんでした。


「楽しみだなぁ。しかも広いし角部屋だし、私は大満足ですよ」

そして、浮かれて楽しげに荷物を運び入れる東村に、多少イラつきました。

 大福ねずみは東村の頭によじ登り、額から東村の顔面にしっぽを垂らすと、左右に振りました。

「くらえ! しっぽワイパ~~」

「うっ、そこはかとなく臭い。そして生ぬるい。地味にダメージでかいですよ」

東村は的確に突っ込みました。


 二人の様子を微笑ましく眺めていた姉御が、突然驚愕の表情を浮かべて凍り付きました。

そんな姉御の視線の先を追った東村と大福ねずみも、言葉を失って固まりました。

「返事がないから、来てみたけど……何で東村がいるのかな?」

インテリもやし来襲です。引きつった表情で、仲良さげな姉御と東村を睨みつけて立っています。

 3人は、インテリもやし姉御を振る事件のことをすっかり忘れていました。


 一.インテリもやしに、別れ話を切り出される

     ↓

 二.交際の事実に心当たりがない姉御が動揺する

     ↓

 三.姉御の兄(シスコン変態野郎)がボスねずみで来襲する(東村も一緒に)

     ↓

 四.インテリもやしと姉御が交際している体になったのは、姉御兄の仕業と判明

     ↓

 五.姉御兄の強烈なインパクトにより、ここ以前の皆の記憶がリセットされる

     ↓

 六.東村がお茶をすする

     ↓

 七.急いで仕事に向かう兄が、迷惑にも脱ぎ捨てたボスねずみを放置して去る

     ↓

 八.姉御、ボスねずみ邪魔、でも捨てると呪われる、誰かに押し付けよう

     ↓

 九.アパートの一階に移動、奇妙な住人二人と遭遇、インパクト大

     ↓

 十.姉御、たい焼きが食べたくなる

     ↓

 十一.東村、アパートに住みたくなる


 そして、現在に至っています。

「私は、このアパートと姉御さんが気に入って、引っ越して来ただけですよ」

冷静な東村が、波風が立ちそうな事実を詳細説明無しで口に出しました。

「そうだったんだ……実は二人は、そういう関係だったんだ。僕が知らないうちに」

盛大に勘違いしたインテリもやしが、セルフで追い込まれて行きます。


「東村は友達だ。このアパートが気に入って引っ越して来ただけだし。そもそも、色々誤解があるようだから、全部正直に話す」

 姉御は、覚悟を決めたようでした。インテリもやしに姉御の部屋に入るよう促し、ドアを閉じてしまいます。東村と大福ねずみは、タイミングを逸して取り残されてしまいました。

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