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第36章 生徒会長選挙が決着する話

赤塚先輩と公約について話した次の日 俺は生徒会担当の神立先生に呼ばれます。

  職員室に入って、机の脇に立つと、神立先生は、相変わらず面白くなさそうな顔で俺を見た。

「お前、まだ会長に立候補する気持ちに変わりはないか? 告示前だから、今なら取り下げられるぞ」

 また、その話か。

 選挙運動までやっているのに、取り下げられるわけないじゃないか、と内心思うが、顔には出さず、神妙な顔で言う。

「取り下げる気はありません。選挙をしたいです」

「お前も頑固だな。書記からじゃだめか?」

「会長を目指します。やりたいことがあるんで」

「まず書記になって生徒会に入ってから、その『やりたいこと』というのを提案してみたらどうだ。みんなの賛成を得られれば、みんなで事に当たることにして」

「いえ、会長として中心になってやりたいので」

「先生たちの中でも、心配している人もいるぞ、『鯨岡なんかに会長務まるのか』って声も聞くが……」

「その心配は、実は、よーくわかります」

 『わかりますとも。実は、俺が、一番、心配してます』と心の中で言う。『でも那加がやれっていうんです。そして那加がついていれば、たぶん、俺でも、本当にできるんです』

「でも、選挙で選ばれれば、俺はがんばります」

「そうか。俺がこれだけ言ってもどうしてもやるっていうんだな」

 神立先生は顎をさすって少し考えた。

「しかたない。それなら、おまえにやらせるよ」

「は?」

 意外な言葉に、一瞬、俺は混乱した。

「実はな、赤塚と後台が、今朝、俺のところにきて、それぞれ、会長と副会長の座を譲るから、おまえと友部にやらせてやってくれと言うんだ」

「え?……」

 俺はびっくりして言葉も出なかった。

「赤塚はもう一人の副会長、後台は書記に立候補するそうだ。そうすると、1年生で書記を頼もうと思っていた子が、はみ出てしまうんだが、次の機会を待ってもらうことにした。そうすれば、今回も選挙はなしで、信任投票だけで、全員、当選ということになる」

「はあ、そうなんですか。ちょっと意外です。そんなことになるなんて」

 まさか、神立先生、選挙を避けるために、俺の決心が固いのを見て赤塚先輩を説得したんじゃあるまいな。

 俺の考えがわかったわけじゃあるまいが、神立先生はこう付け加えた。

「選挙になると思っていたんだが。俺も意外だよ。赤塚はずっと会長を目指してたんだがな。お前の公約が面白いので、一緒にやってみようという気持ちになったと言っていたぞ。お前、なんか公約、作ってんのか?」

「あ、はい。まあ」

「じゃ、それを所信表明演説の時に聞かせてもらおう。というわけで、遅れていたが、告示は明日、演説会は4日後でその日のうちに信任投票して、信任されれば、その日からおまえが生徒会長、友部が副会長ということになる。わかったな。話はそれだけだ。あとで、友部にも伝えておいてくれ」

 あんなに選挙運動した結果が、最後は、定数内立候補で信任投票になって、全員当選とは!……と拍子抜けしたような気分で教室にもどる。まあ、なんにしても目的を果たしたのだから、これでいいというしかないが。

 教室に入ると、うまいことに友部と那加が同じグループで話している。友部に伝える形で、ご主人様にも報告できる。ご主人様も、びっくりなさることだろう。


 次の日の朝は選挙運動の必要性もなくなったので、久しぶりに那加の秘密の書斎に行った。

「こんな形で決着するとは思ってもみなかったわ」

 やはり、那加にとっても意外だったようだ。

「赤塚先輩というのは、よくは知らないけど、頭のいい人なのかもしれないわね」

「公約を実現してみたくなったって言ってたそうですよ」

「それが本当なら頼もしいわ。生徒会の役員になっても、先生の言う通りに、決まりきった行事を実行するだけという現実に、もしかして疑問を感じてたのかもしれないわね。部費の予算なんてみんな不満は持っていても、微動だにしないことで喧嘩を防いでるっていう状況だものね。もし、これを少しでもいいものにできるなら、って、ジラにかけてみようという気になったのかもしれないね。もちろん、ジラに勝てそうもないから副会長を確保したという意地悪な見方もできるけど、それも学校を楽しいものにするというジラの公約の実現に参加してみたくなったから、とも言えるわ。まあ、よくわからないけど、公約の実現にはどちらにしても協力してもらわないとね」

「公約、本当にうまくいくんですか?」

「何言ってるのよ。二人で一緒に考えたんじゃない」

「まあ、俺も考えましたけど、赤塚先輩にいろいろ言われて……先輩の言うことも、もっともな気もするし、特に、部費は、どうにかなるんですか?」

「どうにかするのは、生徒会長のジラでしょ」

「俺にできるわけないじゃありませんか。ただの奴隷なんですから。ご主人様の指示通りに忠実に動きますがね」

「難しい問題はね。一気に解決しようとしても無理。いくらかでもよくなるところがあったらそこを動かすの」

 前にも同じようなこと言ってたな、とふと思う。

「一歩ずつですね。ただし、正しい方向をよく見極めて、ですね」

「そうよ、よくできました。奴隷として成長してるわよ。ご主人様の意図を汲んで命令される前から動けるようにね。とにかく、会長としての初仕事は、マラソン大会ね」

「まだ、会長になってませんよ」

「だから、今から考えるのよ。最初のミーティングで議論できるだけの材料をそろえておくの。忙しくなるわよ」

「あ、はい。わかりました」

 やっぱりやるんですね、マラソン大会。

 ちょっと憂鬱だ。何しろ、俺はマラソンというものが大の苦手だ。

 マラソン大会に望む最大のことは、それがなくなってくれることだって思っているのは、決して俺だけでなくて、たくさんいると思うんですけど……


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