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第102章 絶対美少女と食卓を囲む話

オーディションの前日、公園で青柳と話しているところへ、、友部が姿を現した。

 友部は、簡素な水色のワンピースの上に白いカーディガンを羽織っていた。

「二人きりのところ、邪魔しちゃって悪かったかな」

 青柳が立ち上がって、うれしそうに笑う。

「すみません。生徒会長をお借りしてました。私の家、すぐ近くなんですよ」

「借りるなんて、ジラは私のものじゃないわよ。まあ、くれるっていうなら、もらってあげてもいいけど」

「こんなところで会うなんて、びっくりです。どうしたんですか?」

「え? ジラの家に遊びに来たのよ。ジラ、聞いてないの? 公園の脇を通ると近いって言われて……」

「え、俺の家に?」

 どういうことだ。聞いてないぞ。

「透子さまぁ」

 と、ちょうどそのとき声がかかった。妹が駆けてくる。妹の静も中学二年生になって、それなりに背も伸びてきている。

「あ、さーちゃん。こんにちは」

 妹は、二人のそばに駆け寄ってくると、息を切らせながら、友部と青柳の手を、両手に取って、少し引っ張った。

「ちょうど、さーちゃんに会えて、ラッキー! ね、さーちゃん、今夜、私の部屋に遊びに来てよ……透子様が、今夜、うちで夕食を食べるから、そのあと、みんなでお話しましょ」

 青柳は俺と友部を見た。「へえー、そうなんだ、ちょっとびっくり」

「透子様のおうちでは、今夜、誰もいないんだって。だったら、私のところで夕食を食べましょ、ってご招待したの。うちのパパとママったら、透子様の大ファンなの。前から、ぜひ、『夕食にご招待して』ってうるさかったから、ちょうどいい機会かなと思って」

「透子さんのことを、ご両親はご存じなのね」  

「私のバカ兄貴の、無理矢理デートの話、聞いてない? 実は、あのとき、私、偶然、そこにいて、透子様と出会ったんだ。以来、私は透子様の大ファンになって、時々、遊びに行ったり、来ていただいたりしてるんだ」

「あ、賭けデートの話は、噂になってたけど……へえ、そうなんだ。でも、そのあとはデートしてないって聞いていたんだけど、結構、透子さん、遊びに来てたりするのね」

「あくまで、妹のところへ、ですけどね」

「だからさ、そこらへんのことも含めて、いろいろ話しましょ。今日は、さーちゃんとヴィーナス様の対決があったんでしょ。その話も聞きたいな」

「よく知ってるな、おまえ」

「おにいちゃんに聞いたんでしょうが」

「そうだっけ」

「はい、はい、どうも、こんな兄ですいません。これが、騒動のある意味で中心にいるんですから、妹の私としては、みなさまにもうしわけない気持ちでいっぱいです……透子様、さーちゃん、あのね、実は、オーディションのことは、結構、中学校でも噂になってるんですよ、大大地高がちょっとした騒ぎになっているらしいって話……、面白すぎるって」

「そうなの? びっくり。中学校で?」

「だって、美少女オーディションなんて面白すぎるよ。そうでしょ?」

「今日のコンサートも面白かったわよ。佐和が空から舞い降りたんだから」

「えーっ! どういうこと」

「詳しくは、静ちゃんの部屋で話すわ。佐和も遊びに来てよ」

「ありがとう。行くわ。静ちゃんの部屋、久しぶり」


 夕食はいつもの二倍、豪華だった。俺の母親は、なかなか料理がうまいので、たぶん、友部も満足してくれたのではないかと思う。

 父親も、母親も、友部と一緒に食卓を囲んで大はしゃぎだ。友部は食事の姿まで完璧に美しい。優雅な手つきで肉を切って、フォークにさした肉を口に運ぶ姿の美しさに、思わず見とれてしまうほどだ。最近でこそ「没落」しているが、名家の令嬢らしく、食事のマナーが染みついているのだろう。

 母親が箸を止めて、友部に見とれている。

「透子さん、て、ほんとに美人ね。惚れ惚れしちゃう。芸能界には、たくさん美人がいるけど、あなたみたいに高貴な美しさを持っている人って、他にいるかしら。テレビに出たら、きっと大人気ね。透子さんは、歌手とか、女優になる気はないの?」

「歌手は無理ですけど、俳優というのは、実は、少し、興味はあります。最近、高志さんの命令で、ちょっと舞台で高慢な美少女役を演じたりして、結構、楽しくて、こういうのも面白いな、って思ったりしてます」

 那加は、演劇への興味が自分の中にあることをに友部に気づかせるために、このオーディションを仕組んだなかな、などと考えてみる。さすがにそんなことはないか。でも、将来、友部が大女優になったら、そのきっかけを作ったのは那加だということになるんだろうな。

「明日、文化祭の劇のヒロインを決めるオーディションなんだよ」

 と、静がまるで自分の学校のことのように言う。

「そうなんだ」と父親。「じゃあ、文化祭のときには、パパたちも、透子さんのヒロインを見れるのかな」

「オーディションに通れば、ですけどね」

 友部が、肉をナイフで切りながら言う。最高級の国産牛、こんなものが食べられるのは、ひとえに友部のおかげだ。

「まさか。当然、透子さんで決まりでしょう。透子さんに勝てる人がいるなんて、考えもつかないわ」

「ありがとうございます。でも、残念ながら、そうでもないみたいですよ。勝てないと思います。やってみないと、もちろん、わかりませんけど、たぶん、青柳佐和さんが、勝つんじゃないかな……」

「青柳って、あの、ご近所のさーちゃん?」

 父親はびっくりして箸を止めた。

「さーちゃん、立候補してるんだ。そういうタイプに見えないけど」

「確かにねえ。美人という意味では、さーちゃんもすごい美人だとは前から思ってたけど。さーちゃん、おとなしいしね。ぴんとこないわ」

「ずっと、家族同様のつきあいだったからね。なんとなく、見慣れてしまったけど、でも、確かに、高校生になって、見かけるたびに、ますますきれいになってるよな。気どらなくて、ほんとにいい子だよ。でも、俺だったら、透子さんに入れるな」

「まったく、もう、パパったら。この人は、透子さんの大ファンで、次は、いつ、遊びに来るんだって、うるさいんですよ。ほんと、男って、美人に弱いわよね」

「弱いのは認めるけどさ、美人なら誰でもってわけじゃないよ。パパは、美しさを含めて、一人の人間としての友部透子さんのファンなんだ。それに、『いつ会えるんだ』ってうるさいのは、ママの方だと思うけど」

 友部がいるだけで、二人ともテンションが上がりっぱなしだ。とにかく、俺の両親はコミ障ではないなと思う。妹も、ちゃんとその血を受け継いでいる。なんで、俺だけなんだ。まさか、ほんとの子じゃないなんてことは……

 さすがにないか。

 友部も、さすがにこのテンションにはついて行けないらしく、少し、とまどい気味に笑っている。でも、穏やかな笑顔だ。

「透子さまぁ、おうちの人、今夜は帰らないんでしょ。今夜、泊まっていってください。一緒のおふとんで寝ましょう」

「え? それは無理よ。パジャマもないし」

「パジャマなら、お貸ししますよ」

 なんだ? 母親は泊める気満々だ。

「でも、明日、学校なのに、制服、持ってきてないし」

「そうか。そうだよね。残念。じゃ、せめて、お風呂入っていってください。一緒に入りましょう」

「お風呂?」

「だって、おうちで、一人分だけわかすの大変でしょう? 一緒に入りたいの。兄が、透子さまの裸が見たいって、毎日うるさいから、私にかわりに見せてください。秘密は守りますから」

「待てよ、そんなこと言ってないだろ」

「言わなくてもわかります。兄弟ですから」

「いい加減なこと言うなよ」

 まあ、見たいか見たくないかと聞かれれば、答えは決まってますけどね。

「わかった。じゃ、一緒に入ろう」

 あっさり承知したので少しびっくりする。

 この妹のバイタリティ(ずうずうしさともいうが)はすごい。俺にこのバイタリティがあったら、俺の人生も少し違ったものになっていただろうな。


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