タイミングの問題?
「おい、起きろ。アスナ。おい!」
「ん……」
いつの間にか眠っちゃってたみたい。
目を開けると、不機嫌そうなクリームくんがわたしを見下ろしていた。
「今からディナーだが?」
「待って、行く!」
このままじゃまた食べそこねちゃう!
「……お前、昼に降りていかなかったらしいな。まだ具合が悪いのか」
「そんなことないと思う。グッスリ寝ちゃってただけだよ〜。ほら、寝る子は育つって言うし」
「知らん。寝過ぎだ」
う〜〜ん。確かに、言われてみれば寝過ぎな気がする。
熱が引いた後、マカロンさんに言われて魔力を測ったら、すごく回復してた。そのときは、お昼から次の日の朝まで寝てたんだよね。今日は午前中にマカロンさんに会って、アイスくんたちと別れて、それからずっと寝てたわけだから……魔力、測っておこうかな。
ドキドキしながらステータスを呼び出す。どうか、あんまり魔力が上がっていませんように……!
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【名前】久坂 明日菜
【性別】女
【年齢】17
【所属】ギースレイヴン
【職業】奴隷
【適性】※※※
【技能】お菓子づくり
【属性】ツッコミ
【魔力】65/100(%)
【備考】シャリアディースによって連れてこられた・クリエムハルトの奴隷
☆ ☆
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「ぶっ!?」
「おい、どうした」
「な、なな、何でもない!」
「何でもないことないだろう」
「ホントに何でもないったら! 早くごはん食べよ? ね? あ~、お腹すいたなぁ!」
クリームくんの背中を押して、食堂に急ぐ。
でも、心の中はパニックだった。だって、魔力が、魔力がぁ! 65パーセントに上がってるんだもん!
MAXになったら、わたし、精霊になっちゃうんでしょお!? やだぁぁぁぁああ!
早く何とかしないと……!
そうだ、まず、首輪だ。首輪を外してもらわなくっちゃ。それから、魔力の使い方を教えてもらって、数値を減らさないと……。あ、向こうに帰れば魔力球があるから、それに吸い取ってもらえる! なら、やっぱり、早くここから脱出しないと……。
「アスナ」
ああ、でも、脱出するのに誰に頼もう? コンちゃんはダメかもしれない。だって、アイスくんのこと怒ってたし、わたしのことを花嫁にしたいらしいから、元の世界に帰るためには協力してくれないかもしれない。
「アスナ?」
なら、ソーダさんに頼むしかないけど、あのひとは気まぐれだもんなぁ~。本当に来てくれるかはわかんない。アイスくんが使ってた光の道は夜にしか使えないし……あ、でも待って、何もないところから現れたり消えたりしたし、そっちの方法で送ってもらえば……
「アスナ!」
「っはい!」
「食事中にボーッとするな。行儀が悪い」
「はい……すみません……」
うう、12歳の子に叱られちゃった……。
しょんぼり。
「ところで、アスナが言っていた工場の煙に関してだが、効果的な対策方法はないか?」
「えっ。そんなこと言われても困るけど……。そうね、やっぱりフィルターが真っ先に思いつくかな。そんなのもう、試してるだろうけど」
「いや、これまでそういうことを考えてきた者はいなかった。どんな意見でもありがたい。しかし、工場の煙が有害なら、列車の煙も有害なんだろうな……」
「列車? 煙を吐くやつがあるの? 電気じゃなくて?」
「電気……!」
「あ。えっと、あとは、見えないけど有害な化学物質が含まれてるはずだから、そういうの研究した方がいいと思う。それくらいしか言えないや。ごめんね」
なんかマズイこと言っちゃったかな?
でも、わたしこういうの詳しくないし、しょうがないよね。話題を変えよう、そうしよう。
「結界のことはもういいの?」
「…………」
「ジルヴェストについて知りたいことない?」
「いや、いい……」
ありゃ。クリームくん、考えこんじゃった。
そんなわけでせっかくの夕飯も、なんだか味気なくなっちゃったんだよね。
ひとりで部屋に帰されて、しょうがなくわたしはお風呂に入ることにした。首輪の部分が洗いづらいけど、ずらしてなんとか洗う。ゆっくり入って出てきたのに、クリームくんはまだ戻ってきてなかった。
「どんだけ仕事熱心なの!」
何かに熱中できるのはいいことだと思うんだけど、でも、この年齢で仕事にしか興味がないのは健全じゃないぞ!
とはいえ、わたしはそのクリームくんを放り出して帰らなきゃならないわけで……ああ、もう!
「どうしよう……」
「何がだ」
「あ、クリームくん!」
わたしがため息をついたタイミングでクリームくんが部屋に入ってきた。分厚い紙の束を抱えた護衛のひとがクリームくんに続いて入ってきて、テーブルにそれを置いて出て行った。クリームくんは着ていた上着をゆるめてソファにドカッと座ると、さっそく紙束を手に取った。
「あ、ちょっと。お風呂に入っておいでよ、クリームくん」
「いや、いい」
「いいから!」
わたしはクリームくんを引っ張ってバスルームに放り込んだ。ついでに服も脱がせちゃお。
「おい、やめろ! わかったから脱がすな!」
「え~、いいじゃないべつに。減るもんじゃなし」
「うるさい! ダメなものはダメだ!」
最終的に首輪の力で「出てけ」って命令されちゃった。




