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わたし、異世界でも女子高生やってます  作者: 小織 舞(こおり まい)
ノーマルルート
69/280

ルート分岐 1

 わたしたちは、エクレア先生の実家で作業を始めた。でも、絶対に上手くいく気がしない。だってまるで学校の図書室並に本があるんだもん!


「これ、終わるのか……?」


 と、ドーナツさんが絶望的な顔で呟く。どんな敵にでも勇ましく向かっていきそうなドーナツさんが、まさかこんな表情しちゃうなんて……!


「手を、動かしましょう。まず、ジェロニモとオールィドさんは本棚から本をすべて下ろしていただけますか?」

「えっ、これ全部……?」

「どうせ今日中には終わりませんから、出来る限りで結構ですよ。アスナさんとアーシェイ君は、下ろしてもらった本に何か別の物が挟まっていないか、書き込みがないかを確かめてください」

「はい、先生」

「わかりましたわ」

「私は目録と本を比較し、おかしな所がないかを探します。お祖父様のことですから、わかりやすい場所に手記を置いておくとは思えません。しかし、紙類を保管するのには、やはりここが一番ですから、まずはここを制覇するのが近道かと思います」


 木を隠すなら森の中って言うしね、本を隠すならやっぱ本の中だよ。タイトルと中身が違うかもしれないし、目録にない本があったりするかもしれないし。


 よ〜し、やるぞ〜!


「って、思ってた時期がわたしにもありました〜」

「アスナ、口より手を動かしなさいな」

「へ〜〜い」


 わたしは今、別室で本の中身を調べている。その横ではキャンディが同じ作業を、少し離れたところではエクレア先生が自分の作業をしている。


 あの図書室、さすがに全部棚下ろしするとなると埃の量もすごくなるんだよね。だから、窓全開にして力自慢ふたりが大奮戦してるとこなの。


「先生、この確認作業が終わったら、次はどうするんですか?」


 なんて、今の作業が終わる目処すらついてないのに聞いてみる。隣のキャンディが呆れたように首を振っているのは見ないフリ。


「そうですね、とにかく、すべて調べて書き込みや手書きのメモを見つけ出します。お祖父様ならきっと、どこかに手記を残したはずなんです。ただ、政治的に表に出すつもりはなかったと思うので……」

「隠しちゃったってことなんですね」

「ええ。明日から本格的に探しますよ。弟にも、手伝ってもらおうと思います」

「それがいいですよ!」

「ただ、ジェロニモはこういう作業に向かないので、彼は彼で行動してもらおうと思っています」

「それって……」

「ええ。彼の生まれた村への道を、探してきたらどうかと言いました」


 そっか、別行動になっちゃうんだ……。


「適材適所ですよ。アスナさんは、明日の予定はどうなっていますか? もし良ければ、このまま手伝っていただけるとありがたいのですが」

「わたしですか? ん〜、正直、わたしもこういう作業は向かないんですよね。キャンディは?」

(わたくし)、明日は父を手伝うことになっておりますの」

「じゃあ無理かぁ。だったら、わたしは……」


▶エクレア先生を手伝おうかな

▷ゼリーさんと一緒に行こうかな

▷ドーナツさんとお話しようと思ってたんだよね

▷蜂蜜くんに聞いてから考えようかな

▷アイスくんに会いたいな

▷ソーダさんに会わなくっちゃ!


 エクレア先生を手伝おうかな。

 ここが一番、人手が欲しいところだと思うから。


「お役に立てるかどうかは、わからないんですけど……先生のお手伝いをさせてください!」

「え、いいんですか?」

「わたしじゃ、逆に邪魔しちゃうかもしれないんですけどね〜」

「そんなことありません。嬉しいですよ」


 そう言って、エクレア先生は笑ってくれた。

 ひとまず、蜂蜜くんにも声をかけてみようっと。





 作業が一段落したから、日が暮れないうちに帰ることになった。大風呂も夕食も、魔力灯がもったいないから、時間がすごく前倒しなんだよね。


「アスナ、今日はありがとな。明日は俺、ジェロニモと一緒に出かけることになったんだ。アスナも一緒に来ないか?」

「ううん、やめとく。わたしは少しでも作業を進めたいから、先生のお手伝いをすることにしたの」

「そっか。じゃあ、頼む。俺はやっぱ、体を動かすほうが向いてる」


 ドーナツさんは快活に笑った。ゼリーさんを見ると、無言で深く頷いている。


「明日で村が見つかるとも限らないし、風の膜を越えられるかもわからない。だが、行ってくる」

「うん。気をつけてね」

「ああ。アルクレオを、頼む」

「もっちろん! ちゃんとご飯食べたりお茶飲んだり、休憩取らせるようにするね」

「えっ、アスナさん、私のことでそんな心配をしていたんですか? 私だってそれくらいちゃんと……」

「どうかな?」

「無理だな」

「無理じゃないですか?」


 ドーナツさんとゼリーさんとわたし、三人の声が重なった。エクレア先生が、口をパクパクさせている。ああ、皆そういうイメージなんだね。そしてゼリーさんが断言するってことは、イメージ通りのひとなんだなぁ。


「皆さん、ギズヴァイン先生をいじるのもそこまでになさいませ。ほら、もう帰らなくては」

「そうだね。帰ろ帰ろ。先生も、宿舎に帰るでしょ?」

「え……と……」


 あ、そっか。ここが実家なんだし、先生は帰る必要ないのか!


「先生は帰る必要なかったですね。それじゃ、また明日~!」

「寮にお迎えに上がりますよ」

「え、でも……」

「移動手段がないでしょう? 明日、九時でいいですか?」

「はい!」


 その日の夜、寮に帰って蜂蜜くんに話をしたら、ゼリーさんの家族がいる村に興味がわいたみたい。ついては行かないけど、尾けて行こうかなって言ってた。う~~ん、それは大丈夫なのかな?


 夜、窓を開けてソーダさんを呼んでみたけど、返事はなかった。ただ風だけが、わたしの髪の毛を揺らしていた。

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